『市民のイメージ』は、高校国語の教科書で学ぶ評論文です。ただ、実際に本文を読むと筆者の主張などが分かりにくいと感じる人も多いと思われます。
そこで今回は、『市民のイメージ』の要約やあらすじ、テスト対策などを分かりやすく解説しました。
『市民のイメージ』のあらすじ
本文は大きく分けて、4つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①複数の人々を総称する言い方には、時代によって「国民」や「臣民」、「人民」「民衆」など様々なものがあった。「市民」「市民グループ」「市民の会」といった言い方がごく普通に使われ出したのは、1980年代頃からのようである。「市民」という言い方はきわめて理念的な言葉であり、政府権力や大企業の管理・宣伝のままに付和雷同するのではなく、自分の意見をもって自分たちの生活を作り守る、狭い血縁地縁の利害と興味を超えて広い社会に関心を持つというイメージを孕んでいるだろう。
②筆者は、自分が「市民」であるという思いが頼りないものであることに最近気づいた。それは、陪審員審理の現場を扱ったアメリカのドキュメント番組を、偶然見たときのことである。陪審員候補者40数人の中から絞られた12人ほどの人々が会議室で話し合い、討論して最後に評決するのだが、話し合いはあくまで証拠に基づき論理的に進められ、決して安易に和合しない。審議は数時間どころか三日間続き、再審議になることもある。それでも過度に感情的になる人もなく、全員が普通の市民として審議を進めていた。
③普通のアメリカ人は、なんて立派なんだと思っていたが、しだいに筆者は、彼らは自分たちの審議と評決によって”市民になる”のだと思うようになった。この審議と評決の場は、人間どうしが公正な「社会」を作り出し支え続けていけるのかどうか、自分たちひとりひとりが動物ではなく「人間」であり、「市民」でありうるかどうかが試される場である。ひとりの被告の運命が自分の意見表明にかかっている極限の場では、普通の人間が「市民」に変貌するのである。アメリカの陪審制度には、社会の全員に「市民」であるとはどういうことかを体験させ、教育する大胆なシステムという一面があることがわかった。
④我々の日常生活では、自分を殺すか、自分の感情を低い程度で露出することが多い。だが、具体的な証拠と冷静な論理によって、”筋が通ること”で成り立ち支えられている「市民社会」という、より上位のレベルの現実がある。それはより普遍的に開かれた現実であり、人類にとって新しい経験である。我々は「市民」に生まれるのではなく「市民」になるのである。
『市民のイメージ』の要約&本文解説
「市民」という言葉は、自分の意見を持って自分たちの生活を作り守る、狭い血縁地縁の利害と興味を超えて広い社会に関心を持つというイメージを孕んでいる。アメリカの陪審制度には、社会の全員に「市民」であるとはどういうことかを体験させ教育する大胆なシステムという一面があることが分かった。我々は「市民」に生まれるのではなく、「市民社会」という普遍的に開かれた上位のレベルの現実において「市民」になるのである。(199文字)
筆者はまず、第一段落で「市民」という言葉のイメージについて述べています。そして次の第二段落で、人間がどのように「市民」になるかを説明しています。その具体例として、アメリカの陪審員制度を挙げています。
アメリカの陪審員制度では、一人一人が納得するまで話をし、論理的に議論が進められます。これはなぜかと言いますと、自分たちの判断により、被告を釈放するか刑務所行きにするかが決まるからです。
筆者はこのような特別の場、極限の場において、人間は「市民」になるのだと述べています。ひとりの被告の運命が自分の意思によって左右されるため、人間が市民に変貌するということです。
最後の第四段落では、我々は「市民」に生まれるのではなく、「市民」になるのだと結論付けています。
これは、元々「市民」という存在として生まれるのではなく、具体的な証拠と冷静な論理によって成り立ち支えられる「市民社会」という新しい経験によって、私たちは初めて「市民」になるのだという意味です。
全体を通して筆者が主張したいことは、最後の第四段落に集約されていると言えます。
『市民のイメージ』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ショミンと同じ生活をする。
②多数派にフワライドウする。
③バクゼンと将来を考える。
④該当者をチュウシュツする。
⑤彼にとってノウミツな体験だった。
(ア)「市民」という言葉は、政府権力や大企業の管理・宣伝のままに付和雷同し、自分たちの生活を作り守るというイメージを孕んでいる。
(イ)アメリカのドキュメント番組では、論理的な議論が進められる一方で、時には過度に感情的になるほど熱心に議論を進める陪審員制度の様子が描かれていた。
(ウ)アメリカの陪審制度には、社会の全員に「市民」であるとはどういうことかを体験させ教育する大胆なシステムという一面があることが分かった。
(エ)「市民社会」においては、具体的な証拠と冷静な論理で議論を進めるだけではなく、低い程度でもいいので感情的に自分を露出することが求められる。
まとめ
以上、今回は『市民のイメージ』の要約やあらすじなどを解説しました。ぜひ定期テストなどの対策としてもらえればと思います。なお、本文中に出てくる重要語句については以下の記事でまとめています。