なしのつぶて 意味 語源 使い方 例文 英語

「なしのつぶて」ということわざをご存知でしょうか?漢字だと、「梨の礫」とも書きます。

「なし」と聞くと、多くの人は果物の梨をイメージするでしょう。ただ、このことわざの由来まで知っているという人は少ないかと思われます。

そこで本記事では、「なしのつぶて」の意味や由来、使い方、英語訳などを含め詳しく解説しました。

なしのつぶての意味

 

最初に、この言葉を辞書で引いてみます。

【なしのつぶて】

返事がない、応答がない、無視されている、などの意味で用いられる言い回し。主に、連絡を試みたが相手からの反応がないさまを表現する言い方として用いられる。

出典:実用日本語表現辞典

なしのつぶて」とは「返事がないこと・応答がないこと」などを表したことわざです。主に連絡を試みた相手からの反応がない様子を表す際に用いられます。

例えば、友人に手紙を出したものの、全く返事が来なかったとします。何通手紙を出しても、向こうからは何も返事が来ないような状態です。このような場面では、「手紙を出したが、なしのつぶてだった」などのように言う事ができます

あるいは、手紙でなくても構いません。現代では手紙以外にも電話やメールなど様々な連絡手段があります。最近ではLINEを使う人がほとんどでしょう。

どんな連絡手段であれ、相手から全く反応がなかったときは辛いです。そんな時に、「相手からの反応がない・応答がない」という意味で「なしのつぶて」を使うわけです。

なしのつぶての語源・由来

 

「なしのつぶて」は、漢字では「梨の礫」と書きます。まず「梨」ですが、これは冒頭でも説明した通り、果物の梨と同じ漢字です。

ところが、実際には「梨」は「無し」の当て字と言われています。「当て字」とは漢字本来の意味を無視してつくられた字が一般に広まったものです。

つまり、本来は「無し」が正しかったのですが、分かりやすくするためにあえて「梨」にしているということです。元々の由来としては、「無し」が正しいのです。したがって、「なし」は果物の梨とは一切関係ないことになります。

では、「無しのつぶて」とはどういう意味かと言いますと「投げた小石が返ってこない様子」を表したものです。「つぶて(礫)」は、瓦礫(がれき)の「礫」と同じ漢字なので、「投げる石のこと」を意味します。

あなたも小さい頃に小石を投げた経験はないでしょうか?友だちと一緒に、川や公園で石を投げるようなことです。でも当たり前のことですが、その小石はあなたの元には戻ってこなかったでしょう。

そのため、「無しのつぶて」は「投げられた小石が戻ってこない様子」を表すようになりました。転じて、「反応がない」「音沙汰がない」などの意味を成すようになったわけです。

なお、「無しのつぶて」を直訳すると「何も無い、投げる小石」というよく分からない意味になってしまいます。これだとそもそも石を投げられないので相手に連絡すら取っていません。

したがって、「梨」という当て字にしたのは、梨にすることで具体的な形がイメージできるからとも言われています。「梨」と「小石」なら、何となく形をイメージすることができるためです。ただし、先ほども説明した通り、果物の梨とは全く関係ないと思っていただいて構いません。

なしのつぶての類義語

なしのつぶて 類義語 言い換え 別の言い方

続いて、「なしのつぶて」の類義語を紹介します。

鉄砲玉(てっぽうだま)】⇒返事のないこと。また、行ったきり帰ってこない人のこと。「鉄砲玉」=「弾丸」を指し、ひとたび鉄砲から発射されたら二度と戻らないことから。
音無の構え(おとなしのかまえ)】⇒働きかけに対して、全く反応を示さないこと。「音無」とは「音がしない静かな様子」を意味する。
音信不通(おんしんふつう)】⇒電話や手紙などによる連絡が何もないこと。「音信」は「連絡」、「不通」とは「便りがないこと」を表す。
消息不明(しょうそくふめい)】⇒連絡がとれず、様子が分からない状態。「消息」は「状況や事情」、「不明」は「分からなくなること」を表す。

基本的には、相手から連絡がない様子であれば類義語となります。また、そこから派生して、無視されたり無反応であったりする言葉なども類義語に含まれます。

実際に、「無視されている」という意味で「なしのつぶて」が使われることもあります。ただ、全く同じ意味のことわざ、すなわち同義語というのはありません。

なしのつぶての英語訳

 

「なしのつぶて」は、英語だと次の二つの言い方があります。

①「not getting a reply」(返事がない・応答がない)

②「have not heard from」(~からずっと便りがない・しばらく連絡がない)

①の「not getting」は「~のない状態」と訳します。「reply」は、「返事・応答」という意味です。名詞として使うため、単数扱いで「a」が必要となります。

また、②の「hear from~」は、「~から連絡がある・便りがある」という意味です。「have」は現在完了形として使われています。

例文だと、それぞれ以下のような言い方となります。

①I am not getting a reply from her.(彼女からの返事はない。)

②I have not heard  from him so far(今のところ、彼からの連絡はない。)

なしのつぶての使い方・例文

 

最後に、「なしのつぶて」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 息子にずっと手紙を出し続けているが、なしのつぶてである。
  2. 娘にメールを送ってもなしのつぶてなので、安否が心配です。
  3. LINEを送っているが、なしのつぶてで何の反応もありません。
  4. 今年に入って全く電話をしてこないなんて、なしのつぶてだよ。
  5. なしのつぶてのごとく、彼女は別れてから一切連絡をよこさない。
  6. 彼はまめな性格なので、「なしのつぶて」という言葉とは無縁である。
  7. お盆休みなので、メーカーにいくら問い合わせてもなしのつぶてだある。

 

「なしのつぶて」は、基本的に否定的な使い方をすることわざです。なぜなら、相手から連絡が来たときはしっかりと返すのが常識だからです。

プライベートなどの友人でも、全く連絡をよこさない人は相手に良くない印象を与えるでしょう。そのため、もしもこの言葉を使う時は「つれない人」「そっけない人」「よそよそしい人」などを対象とし、否定的に用いるようにします。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

なしのつぶて」=返事がないこと・応答がないこと。

語源・由来」=投げられた小石が戻ってこない様子から。

類義語」=「鉄砲玉・音無の構え・音信不通・消息不明」

英語訳」=「not getting a reply」「have heard nothing from~」

「なしのつぶて」は聞き慣れないですが、よく使われる慣用句です。「梨」は当て字で「無し」が本来の語源ということでした。語源を理解したからには、正しい使い方をして頂ければと思います。