目上の人からありがたい言葉を頂いたときに「身に余るお言葉です」のように言います。メールや手紙、ビジネスシーンなどでよく見かける表現です。
ただ、具体的な使い方が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで本記事では、「身に余るお言葉」の意味や例文、語源、類義語などを詳しく解説しました。
身に余るお言葉の意味・読み方
まず、「身に余るお言葉」は「みにあまるおことば」と読みます。
意味は「与えられた言葉が、自分の身分や業績を超えてよいこと」を表したものです。
主に目上の人から頂いた言葉が、現在の自分の状況や能力を超えていることを相手に伝えるような際に使われます。
例えば、あなたがまだ入社3年目の社員だとしましょう。3年目と言えば、やっと仕事に慣れて来た程度のレベルです。
ところが、ある日会社からとても重要な仕事を任されることとなり、「君は仕事ができるから今回の企画に抜擢することにした」と告げられました。
このような時に、「身に余るお言葉を頂き、感謝致します」などと言うわけです。
つまり、「身に余るお言葉」とは「自分にはもったいなく感じるほどのありがたい言葉」ということです。
念のため、「身に余る」の意味を辞書で引いてみます。
【身に余る(みにあまる)】
①処遇が自分の身分や業績を超えてよすぎる。過分である。身に過ぎる。「―・るお言葉」「―・る光栄」
②与えられた仕事や責任が自分の能力に比べて重すぎる。「―・る大役」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記の②にあるように、「身に余る」には「与えられた仕事や責任が重すぎること」という意味もあります。こちらは①よりも多少ネガティブな意味を含んだものです。
ただ、「身に余るお言葉」という表現に関して言えば、前述したような①の意味で使われることがほとんどです。
身に余るお言葉の語源・由来
「身に余るお言葉」の「身に余る」は、「江戸時代の身分制度の名残りから」だと言われています。
江戸時代では、「士農工商」という制度があったように、自分の身分がはっきりと定められていました。
当時は、身分の高い者が身分の低い者を見下すのは当たり前でした。そのため、下級階層の身分の人が上の人から褒めるられるようなことはほとんどなかったのです。
ところが、まれに何らかの事情があり、身分の高い者が低い者を褒めるようなことがありました。この時に、褒められた側は身分にふさわしくない言葉を頂いたということで、「身分に余る言葉を頂いた」などと言っていました。
この言い方が転じて、「身分に余る言葉」⇒「身に余る言葉」という表現になったと言われています。
現代では昔とは異なり、階級的な要素はそこまでは含まれません。実際に使う際は、自分を謙遜する言い方として使うのが一般的です。
身に余るお言葉の使い方・例文
「身に余るお言葉」の例文を、実際の場面ごとにみていきましょう。
【①上司からありがたい言葉を頂いたとき】
- 身に余るお言葉を頂き、大変感謝しています。何とか今回の企画を成功させられるよう精進していきます。
- 身に余るお言葉を頂き、ありがとうございます。今後は今まで以上に真摯に仕事へ取り組んでいきたいと思います。
- この度は身に余るお言葉を賜り、大変恐縮です。ぜひそのお言葉に恥じない活躍をしたいと考えております。
- 社長から身に余るお言葉を頂き、恐縮至極に存じます。大変もったいない気持ちでいっぱいです。
- 身に余るお言葉を頂き、光栄です。今後とも精進していくつもりですのでよろしくお願い致します。
上司からありがたい言葉を頂いたときは、まず一言目で相手に対して感謝の意を伝えます。
言い方は様々ですが、大抵は「感謝しています」「ありがとうございます」などが多いです。場合によっては、「恐縮です」「光栄です」など自分にはもったないという謙遜の気持ちを前に出すのもよいでしょう。
最後に、自分の今後の目標や覚悟などを相手に伝えるのが賢明です。上司に対して、「自分は今後どうしていくつもりなのか?」ということを端的に伝えます。
【②同僚などからありがたい言葉を頂いたとき】
- 身に余るお言葉を頂き、大変感謝しています。ここまで頑張って来れたのも皆様のおかげだと考えています。
- 身に余るお言葉を頂き、ありがとうございます。ここまで成果を出せたのは、皆さまのご協力があったからこそです。
- 身に余るお言葉を頂きましたが、私はまだまだ未熟ですので、今後はさらに精進していくつもりです。
- 身に余るお言葉に感謝しています。皆様のお力を無駄にしないよう今回の企画を成功させたいと考えています。
- 身に余るお言葉に身が引き締まる思いです。今の立場に慢心せず、今後はさらなる目標に向かって邁進していきます。
上司以外にも、職場の同僚や部下からありがたい言葉をもらう時はよくあります。
この場合も同じく、まず感謝の意を伝えます。そしてその後に、自分の力だけで成果を出せたのではなく、周りの協力やサポートがあったからこそ行えたということを伝えます。
たとえ自分の実力だけで成果を出したとしても、ビジネスでは謙虚な言葉選びをすることが非常に重要です。
【③顧客に対して文書で感謝の意を述べるような時】
- 身に余るお言葉に感謝いたします。今後ともお客様に満足して頂けるよう努力してまいります。
- 身に余るお言葉を頂き、弊社としてもありがたい限りです。今後とも末長いお付き合いをよろしくお願い致します。
- 弊社のサービスを評価して頂き、誠にありがとうございます。身に余るお言葉にスタッフ一同大変感激致しています。
- 大変身に余るお言葉を賜り、感謝いたします。今後とも皆様にご満足して頂けるようより一層努力して参ります。
- 弊社の商品に対して、大変身に余るお言葉を頂き感謝しています。今後ともぜひ弊社のことをよろしくお願い致します。
「身に余るお言葉」という語句は、メールや手紙などの文書で伝えるような時にも使うことができます。
会社のメールで使う際は、主に顧客が相手となります。この場合も同じく、顧客に対してまず感謝の気持ちを伝えます。
そして、今後もお付き合いを続けていきたいという意を伝えるのがよいでしょう。口頭ではなく文面だと、また意味がずれて伝わることもあるので、より相手を思いやって丁寧に書く必要があると言えます。
身に余るお言葉の類義語
「身に余るお言葉」は、他の語で言い換えることも可能です。
- ありがたいお言葉
- もったいないお言葉
- お褒めの言葉
上記3つは、「身に余るお言葉」とほぼ同じ意味なので、「同義語」と言っても構いません。
また、その他の言い方だと謙遜するような表現を使うこともできます。
- 光栄です。
- 光栄に存じます。
- 励みになります。
- 恐れ多いです。
- 恐れ多いことでございます。
- 身に余る光栄に存じます
- 過分なお褒めをいただきまして。
- 恐縮至極(きょうしゅくしごく)に存じます。
「身に余るお言葉」を使うのは、あくまで相手に対して感謝の意を述べたり謙遜の意を伝えたりすることが目的です。したがって、必ずしもこの表現を使わなければいけないというわけではありません。
身に余るお言葉の英語訳
「身に余るお言葉」は、英語だと次のように言います。
①「The honor is more than I deserve.」(その名誉は私の値以上のものだ。)
②「I don’t deserve such a great honor.」(私はそのような素晴らしい名誉には値しない。)
「honor」は「名誉」や「栄光」を表す名詞、「deserve」は「~に値する」という意味の動詞です。
①は比較級によって名誉と私の価値が釣り合っていないことを伝えた文です。また、②は否定文によって私がその名誉に値しないことを伝えた文です。
その他、次のような言い方も可能です。
「This great honor is far more than I deserve.」(その素晴らしい栄光は私に値する以上のものだ。)
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「身に余るお言葉」=与えられた仕事や責任が重すぎること。
「語源・由来」=江戸時代の身分制度の名残りから。
「例文」=「身に余るお言葉を頂き、感謝いたします」など。
「類義語」=「ありがたいお言葉・もったいないお言葉・お褒めの言葉」
「英語訳」=「The honor is more than I deserve.」「I don’t deserve such a great honor.」
ビジネスにおいて、自分の身分を超えたお褒めの言葉や感謝の言葉を頂くことはよくあります。そんな時はぜひ「身に余るお言葉」という表現を使ってみてはいかがでしょうか?