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間の感覚 現代文 語句 漢字ノート 要旨 200字要約

 

『間の感覚』は、高校国語で学ぶ評論文です。『水の東西』と並び、現代文の教科書にはよく取り上げられています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『間の感覚』の要旨や語句の意味、テスト対策などを含め解説しました。

『間の感覚』のあらすじ

 

本文は、大きく分けて5つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①一般に日本建築の大きな特徴として、軒先が大きく伸びて、軒下という空間が生じるというものがある。日本の建築では、このような軒下に限らず、濡れ縁、渡り廊下といった中間領域を媒介として、内部は自然に外部へとつながっているのである。

②ところが、内部と外部が連続している空間の中に住みながら、日本人は住まい方において、内と外とを厳しく区別するという行動様式を示す。最も分かりやすいのは、家の中に入る時に靴を脱ぐという習慣である。日本では、空間構造は繋がっているように見えて、行動様式では内と外は明確に区別されているのである。

③このような家の内と外の区別は、物理的というよりは心理的なものである。つまり、意識の問題であり価値観の問題である。

④日本人にとっては、人間社会も空間も時間も、関係性という共通した編み目の中に組み入れられている。同じ一つの部屋が、外から人が来れば客間になり、夜になれば寝室となるのは、住居の空間もまた、人間や時間との関係で意味を変えることを物語っている。

⑤日本人は、そのような関係性の広がりを「間」という言葉で呼んだ。「間」とは、空間の広がり、時間的な広がり、人間関係の広がりである。このような関係、つまり「間合い」を正しく見定めることが、日本人の行動様式の大きな原理である。この「間」の感覚は今もなお日本人の間に生き続けており、住居の構造や住まい方を規定し、日本人の美意識や倫理とも深く結びついている。

『間の感覚』の要約&本文解説

 

200字要約日本建築は空間構造は繋がっているように見えるが、行動様式では内と外は明確に区別されている。それは物理的というよりは、心理的なもの、つまり意識や価値観の問題である。日本人は、空間や時間、人間関係の広がりを「間」と呼び、そのような関係性の「間合い」を正しく見定めることが行動様式の原理となっている。この「間」の感覚は、住居の構造や住まい方を規定し、日本人の美意識や倫理とも深く結びついているものである。(199文字)

日本建築は、空間構造ではつながっているように見えますが、行動様式では内部と外部がはっきりと区別されているという特徴があります。

例えば、日本の建築には「軒下」という内部か外部かよく分からない微妙な空間がありますが、日本人は家の中に入る時は靴を脱ぎ、外に出る時は靴を履くといった行動をとっています。

筆者はこのような違いが生じる理由を、物理的なものではなく心理的なもの(意識や価値観の問題)だと分析しています。

日本人は神社に入る際、物理的には何の境界にもならない鳥居のことを、内と外を分ける境界のように認識しています。これはまさに日本人だけが持っている意識や価値観の問題だと言えます。

日本人は、空間や時間、人間関係の広がりのことを「間」と呼んできました。「空間」「客間」のような空間的な広がり、「昼間」「晴れ間」のような時間的な広がり、「仲間」のような人間関係の広がりといったものは、前後の関係性とのあいだで変化するため、外国人にとってはわかりにくい価値観です。

しかし、こういった関係性、つまり間合いを正しく見定めることが、日本人にとっての行動様式の大きな原理なのだと筆者は述べています。

現在、私たちの生活様式は大きく変化していますが、「間の感覚」は今も日本人の間に生き続けており、日本人の美意識や倫理とも結びついています。そのため、最終的に筆者は、「間の感覚」の本質と構造を理解することが、日本文化を理解する上で大きな鍵になると結論付けています。

『間の感覚』の意味調べノート

 

【伊勢神宮(いせじんぐう)】⇒三重県伊勢市にある神社。

【アテネ】⇒ギリシャの首都。

【アクロポリスの丘】⇒アテネ南西部にある丘。

【パルテノンの神殿】⇒古代ギリシャ時代に建てられた神殿。

【切妻型の屋根(きりつまがたのやね)】⇒建物の両端(切妻)を垂直に切り落とした形の屋根。二つの傾斜面が山形になっている形状の屋根。

【軒先(のきさき)】⇒屋根の下側の張り出た部分(軒)の先っぽのこと。

【軒下(のきした)】⇒屋根の下側の張り出た部分が「軒」で、その下の空間のこと。屋根の下の空間を指す。

〔参考画像〕

間の感覚 軒 軒先 軒下

【現に(げんに)】⇒実際に。

【庭師(にわし)】⇒庭を作ったり、その手入れをしたりする人。

【濡れ縁(ぬれえん)】⇒雨戸の外に設けられた縁側。

【渡り廊下(わたりろうか)】⇒建物と建物とを結ぶ廊下。

【遮蔽物(しゃへいぶつ)】⇒他から見えないようにするために、覆い隠すもの。

【これらの中間領域】⇒ここでは、軒下、濡れ縁、渡り廊下などのこと。

【媒介(ばいかい)】⇒両方の間に立って、仲立ちをすること。ここでは、仲立ち、橋渡しなどの意。

【はなはだ】⇒たいへん。非常に。

【風習(ふうしゅう)】⇒その土地や国で伝えられてきたしきたり。ならわし。

【当惑(とうわく)】⇒どうしてよいか分からず、困ること。

【荘厳(そうごん)】⇒重々しく、立派で尊いこと。また、そのさま。

【俗世間(ぞくせけん)】⇒一般の人々が日常の暮らしをしているこの世。俗世。「俗」は「聖」の対義語。

【前提(ぜんてい)】⇒ある物事が成り立つための、前置きとなる条件。

【編み目(あみめ)】⇒糸と糸とを編み合わせた部分。ここでは、「さまざまな関係が交差する意識構造」をたとえた言葉。

【間合い(まあい)】⇒ここでは、時と場合によって変化する、空間的な関係、時間的な関係、人間関係などを指している。

【見定める(みさだめる)】⇒よく見て判断する。見てそれと決める。

【倫理(りんり)】⇒人として守り行うべき道。善悪の判断規準となるもの。モラル。

『間の感覚』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①パルテノンのシンデン

ノキサキに洗濯物をつるす。

ニワシに仕事の依頼をする。

④突然の話にトウワクする。

ゲタをはく。

ソウゴンな神社を建てる。

リンリにもとる行為。

解答①神殿 ②軒先 ③庭師 ④当惑 ⑤下駄 ⑥荘厳 ⑦倫理
問題2筆者は、日本の家における内と外の区別はどのようなものだと考えているか?四十字以内で答えなさい。
解答例物理的というよりもむしろ心理的なものであり、我々の意識や価値観の問題である。
問題3

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)パルテノン神殿の屋根は建物の平面を覆うところで終わっているが、伊勢神宮に関しては、軒先がさらに大きく伸びているという違いがある。

(イ)西欧建築では、内部と外部を曖昧にするような中間領域がないため、家に帰れば内履きに履き替えるということはない。

(ウ)西欧の教会は壁によって内外の区別がはっきりしており、壁の内側は聖なる空間であり、逆に壁の外側は俗世間という認識がされている。

(エ)「身内」はある関係性の中で成立するものなので、その点で外国人にとっては日本人の行動様式はわかりにくいものになっている。

解答(イ)本文中には、「もちろん、西欧社会でも家に帰れば内履きに履き替えるということはよくあるが、それは私的な環境でくつろぐため。」とある。

まとめ

 

以上、今回は『間の感覚』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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