ことばがつくる女と男 テスト対策 意味調べノート あらすじ 解説

『ことばがつくる女と男』は、教科書・現代の国語に収録されている文章です。そのため、定期テストなどにも出題されています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、本作のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。

『ことばがつくる女と男』のあらすじ

 

本文は、行空きにより3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①ことばとアイデンティティの関係は、あらかじめ話し手が持つ自分のイメージにもとづいて、特定の話し方を選択するものだと理解されてきた。だが、このような考え方では説明のつかないことがたくさん出てきた。同じ<男>という属性を持っていたとしても女ことばを使ったり、逆に女性であっても「男ことば」を使ったりすることからもそれは分かる。

②私たちは、あらかじめ備わっている属性に基づき言語行為を行うのではなく、言語行為によってアイデンティティをつくりあげているのだ。このような、アイデンティティを言語行為を通して私たちがつくりつづけるものだとみなす考え方を「構築主義」と呼ぶ。

③構築主義では、言語行為は、あらかじめ人が持っているアイデンティティを表現しているのではなく、人がさまざまなアイデンティティをつくりあげる過程と考える。構築主義の立場から考えることで、女も「男ことば」を使うことが説明できるようになる。悲しいことに、人間は「アイデンティティ」のような抽象的なイメージを、五感で認識できるものを通して表現しなければならない。その中でも「ことば」は誰もが利用できる体系化された資源であり、まさに人間が「言語」を発達させてきたゆえんである。

『ことばがつくる女と男』の要約&本文解説

 

200字要約私たちは、あらかじめ備わっている属性にもとづいて言語行為を行うのではなく、言語行為によって自分のアイデンティティをつくりあげている。構築主義では、言語行為はあらかじめ人が持っているアイデンティティを表現しているのではなく、人がさまざまなアイデンティティをつくりあげる過程と考える。人間が「言語」を発達させてきたのは、「ことば」がもっとも体系化され、誰でも利用することのできる資源だからである。(196文字)

本文を理解する上で、まず「本質主義」と「構築主義」の意味を把握することが重要となります。

「本質主義」とは、人はあらかじめ備わっている属性にもとづいて言語行為を行うという考え方です。一方で、「構築主義」とは、人は言語行為を通して自分のアイデンティティを作り続けていくという考え方です。

例えば、謙虚な性格の人は生まれつき謙虚な性格なのでていねいな言葉使いをし、傲慢な性格の人は生まれつき傲慢な性格なのでおうへいな言葉使いをする、といった考え方は「本質主義」です。

それに対して、「私は日本人だ」「男として恥ずかしい」「もう中年だなあ」などのような、人が普段から使う言語行為によって、私たちのアイデンティティは作り出されている、といった考え方が「構築主義」です。

筆者は、現代のような人間関係が流動する社会では、「本質主義」では説明のつかないことが多く出るようになったたため、私たちのアイデンティティは「構築主義」によって作り続けていくのだと主張しています。

つまり、アイデンティティによって言語行為が行われるのではなく、言語行為によってアイデンティティが作り出される、ということです。そして、構築主義の立場から考えることで、男が「女ことば」を使ったり、逆に、女が「男ことば」を使ったりすることが説明できるようになるのだと述べています。

最終的に筆者は、「ことば」は誰もが利用できる体系化された資源であるため、私たちは「言語」を発達させてきたのだと結論付けています。

『ことばがつくる女と男』の意味調べノート

 

【言及(げんきゅう)】⇒言い及ぶこと。話がある事柄まで触れること。

【アイデンティティ】⇒自己同一性。自分自身がどのような存在であるかという認識。

【ゆえん】⇒理由。

【謙虚(けんきょ)】⇒控え目で、つつましいこと。

【傲慢(ごうまん)】⇒おごりたかぶって人を見下すこと。

【属性(ぞくせい)】⇒そのものに備わっている性質。

【ジェンダー】⇒社会的・文化的に形成される性別。作られた男らしさ・女らしさ。

【幻想(げんそう)】⇒現実にはないことをあるかのように心に思い描くこと。

【様式(ようしき)】⇒一定の形式。一定のかた。

【厳密(げんみつ)】⇒細かい点まで手落ちなく厳しく行うさま。

【凝固(ぎょうこ)】⇒こりかたまること。

【実態(じったい)】⇒実際の状態。本当のありさま。

【見せかけ】⇒表面だけでそれらしく見せること。

【指標(しひょう)】⇒物事の見当をつけるための目じるし。

【類似(るいじ)】⇒似ていること。

【過程(かてい)】⇒プロセス。

【賢明(けんめい)】⇒かしこくて、物事の判断が適切であること。

【悲しいかな】⇒残念なことに。悲しいことだが。

【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒現実から離れて具体性を欠いているさま。

【体系化(たいけいか)】⇒一つにまとめてわかりやすくすること。

『ことばがつくる女と男』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ケンキョな性格。

フクソウを整える。

ゲンソウを抱く。

シヒョウを見る。

ケンメイな処置。

解答①謙虚 ②服装 ③幻想 ④指標 ⑤賢明
問題2「私たちがコミュニケーションを行う時には、同じ内容を伝えていても、言葉づかいを使い分ける。」とあるが、「言葉づかいを使い分ける」とは、どういうことか?
解答例相手や状況によって、伝えるときに使うことばの表現を変えること。
問題3『つまり、「ジェンダーする」行為の結果だとみなすのである。』とあるが、「ジェンダーする行為」とはどのようなことか?
解答例その人がことばを発することが、結果として社会的・文化的な意味での性をつくり出す行為になるということ。
問題4「服装やことばがアイデンティティと結びつく」とあるが、なぜそう言えるのか?
解答例アイデンティティは五感で認識できる具体的なものを通して表現されるため、すでに意味と結びついている服装やことばは、アイデンティティーを表現するときに利用できる資源となるから。
問題5

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)私たちがコミュニケーションを行う時に言葉づかいを使い分けるのは、話している内容以外のさまざまな情報を「ことば」を使い分けることによって伝えているからである。

(イ)本質主義にもどつくと、人は<女/男>というジェンダーを「持っている」あるいは<女/男>というジェンダーに「属している」と理解される。

(ウ)構築主義では、私たちの言語行為を結果ではなく原因ととらえることで、自らのアイデンティティをつくりあげると考える。

(エ)女子高生でなくてもセーラー服を着て<女子高生>を演じることができるように、「女ことば」を使う人も必ずしも女とは限らない。

解答(ウ)構築主義では、アイデンティティを、言語行為を通して私たちが作り続けるものだとみなす。つまり、アイデンティティを言語行為の原因ではなく結果ととらえるということ。

まとめ

 

以上、今回は『ことばがつくる女と男』について解説しました。ぜひ読解の参考にして頂ければと思います。