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身体、この遠きもの テスト問題 本文 解説 あらすじ 200字要約

 

『身体、この遠きもの』は、教科書・現代の国語に収録されている評論文です。過去には、東大の入試問題にも採用されたことがあります。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『身体、この遠きもの』のあらすじや要約、テスト問題などを含め簡単に解説しました。

『身体、この遠きもの』のあらすじ

 

本文は、行空きにより3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①身体は物質体だが、他の物質体とは異質な現れ方をする。たとえば、身体は正常に機能している場合は現れないが、何か問題が生じると、わたしと世界の間に壁のように異物として立ちはだかる。わたしは身体を自由にすることができない。身体はいつもだれかの身体であり、わたしと身体との関係は「わたしは身体をもつ」という局面もあるし、「わたしは身体である」という局面もある。

②身体は皮膚に包まれている肉の塊だというのもあやしい。たとえば、杖をつけば杖の先を感知するし、靴をはけば靴の裏で地面を感知する。身体空間は、物体としての身体の占める空間と同じではないのだ。身体はまた、時間的な現象でもあり、たえず変化し、記憶する。身体の存在を「いま・ここ」という経験の中心に限定すること、あるいは皮膚に包まれた物質的な身体の占める空間に限定することは、身体についての抽象的な考え方でもある。

③物質体としての具体的な身体を、わたしは不完全にしか知覚できない。たとえば、じぶんの顔はじかに見ることはできないので鏡を見たり、身体を触覚的に補強しようときつめの服を着て、身体を確認しようとしたりする。身体は知覚される物質体であるよりもむしろ、想像されるひとつの<像>である。じぶんがそれであるところの身体が、じぶんから遠く隔てられているのだ。

『身体、この遠きもの』の要約&本文解説

 
200字要約身体は物質体だが、他の物質体とは異質な現れ方をする。身体一般というものは個人には存在せず、いつもだれかの身体である。身体の存在を「いま・ここ」という経験の中心に限定したり、物質的な身体の占める空間に限定するのは、身体についての抽象的な考え方である。身体はわたしにとって知覚される物質体であるよりも、想像されるひとつの<像>であり、じぶんがそれであるところの身体はじぶんから遠く隔てられている。(196文字)

私たちの「身体」は、ひとつの物質体であることはまちがいありません。しかし、人の「身体」というのは、他の物質体とは異なる現れ方をすると筆者は主張します。

例えば、「身体」は問題なく正常に機能しているときは特に意識されませんが、不調や病気のときは急に違和感を持ったものとして現れてきます。

そして、身体は何か問題が生じると、わたしと世界の間に壁のように異物として立ちはだかるようになります。このように、わたしたちはじぶんの身体を自由にすることはできないのです。

また、筆者は、身体というのはただの肉の塊ではないのだと主張します。

例えば、人間は杖をつけば杖の先の地面を感じ取りますし、靴をはけば靴の裏で地面を感じ取ったりします。さらに、身体は時間が経つと変化しますし、昔のことを身体によって記憶していたりします。

つまり、身体の存在は皮膚に包まれた部分に限定されないものであり、経験を記憶し続けていく存在だと筆者は考えているわけです。

他にも、人はじぶんの顔を直接見ることはできないという特徴もあります。必ず鏡であったり、写真であったり映像で見たりしてじぶんの顔を確認しています。

このように考えると、「身体」は、形のある物質体というよりもひとつの<像>であり、じぶんにとっての身体はじぶんから遠く隔てられているものだと筆者は述べています。

つまり、私にとっての「身体」とは「イメージ」であり、実はつかみどころのない遠い存在であったと筆者は考えているわけです。

『身体、この遠きもの』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①明と暗がタイショウをなす。

トウメイな容器。

シンピ的な風景。

バイタイを通す。

ヒフで包まれる。

⑥機械をセイギョする。

⑦選手をホキョウする。

解答①対照 ②透明 ③神秘 ④媒体 ⑤皮膚 ⑥制御 ⑦補強
問題2『わたしたちにとって身体は、ふつうは素通りされる透明なものであって、その存在はいわば消えている。』とあるが、「透明なもの」とは、ここではどのようなことを表しているか?
解答例自分の体ではあるものの、その存在を普段はまったく意識しないこと。
問題3『つまり身体は、わたしが随意に使用しうる「器官」である。』とあるが、「随意に使用」とはどういうことか?
解答例身体を自分の思うままに使うということ。
問題4『こういう「神秘」は、身体一般のなかには見いだされない。』とあるが、ここでの「神秘」とは何を表すか?
解答例身体は、わたしが随意に使用しうる「器官」であるが、その身体をわたしは自由にすることができないというあり方。
問題5「わたしは身体をもつ。」と「わたしは身体である。」の違いを説明しなさい。
解答例前者は、わたしは身体を所有する対象とし、身体は随意に使用できる器官だとするのに対し、後者は、わたしの存在と身体の経験とが区別できず、身体がわたしそのものになっているととらえることを表す。
問題6『身体空間は物体としての身体が占めるのと同じ空間を構成するわけではないのだ。』とあるが、ここでの「身体空間」とはどのようなものを表すか?
解答例物体としての身体の表面ではなく、その皮膚を超えて伸びたり縮んだりするもの。
問題7『身体の存在を、いま・ここという経験の中心に限定すること』とは、どのようなことか?
解答例身体が時間的な存在だということを考えず、今このときに意識している身体のありようこそが、じぶんの身体のすがたそのものだと考えること。
問題8『じぶんでイメージしているじぶんの顔との誤差が、気になってしようがないからだろう。』とあるが、ここでの「誤差」とは何を指すか?
解答例じぶんでイメージしているじぶんの顔と、鏡やスナップ写真にうつっている他人が見ているじぶんの顔との間の誤差。
問題9『じぶんがそれであるところの身体がじぶんから遠く隔てられている』とあるが、これはどういうことか?
解答例じぶんの身体は、じぶん自身でも不完全にしか知覚することができず、定まらない<像>として感じとるしかないということ。

まとめ

 

以上、今回は『身体、この遠きもの』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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