言葉は世界を切り分ける  解説 意味調べノート 語句 現代の国語

『言葉は世界を切り分ける』は、教科書・現代文で学ぶ評論文です。ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。

そこで今回は、『言葉は世界を切り分ける』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。

『言葉は世界を切り分ける』のあらすじ

 

本文は、内容により5つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①日本人には、外国の難しい文献は読めても、話したり書いたりするのは苦手という人が多い。それは、辞書に書いてある語の意味を覚えていても、語の使い方が理解できていないからだ。実際に言葉を使うためには、「点」としての意味を知るだけでなく、「面」としての意味を知らなければならない。

②色を例にすると、私たちは何万もの「物理的に違う色」を識別できるが、それらの色を少数のカテゴリーに分類して、名前を付けて分けている。トマト、消防車、イチゴはそれぞれ物理的には異なる色だが、私たちは皆「赤」と呼ぶ。つまり、「赤」という言葉は特定の物の色を指すわけではなく、特定の範囲を指すのだ。

③一つ一つの単語の意味を学ぶということは、その単語の位置付けを学び、隣接する他の単語との違いを理解し、他の単語との意味範囲の境界を理解することである。これは母語でも外国語でも同様である。外国語を学ぶ際は、単に母語の単語を外国語の単語に置き換えればよいというわけではないのだ。

④言語は連続的で切れ目のない世界に線を引き、世界を切り分けるものである。だが、言語によってその線引きの仕方は異なるため、母語と外国語の意味がどこかの「点」で重なると、「面」としても意味が重なると思いがちである。「言葉を知る」ということは、単語一つの意味を「点」として知るだけでなく、どのように「面」として存在するかを知ることである。

『言葉は世界を切り分ける』の要約&本文解説

 

200字要約言語は連続的で切れ目のない世界に対して線を引き、世界を切り分けるものだが、言語によってその線引きの仕方は多様である。したがって、言葉を実際に使うためには「点」としての意味を知るだけでなく、「面」としての意味を知らなければならない。「言葉を知る」ということは、その言葉を取り囲む他の単語との関係を理解し、それらの単語群が意味の地図の中でどのように面として塗り分けられているかを知るということである。(198文字)

筆者の主張を一言で言うなら、「言葉を知ること=点ではなく面で知ること」ということになります。

筆者はまず、「言葉の意味を知っているとはどういうことなのだろうか?」と読者に問題提起をしています。そして、この事を知るには、母語よりも外国語を考えた方が分かりやすいと述べています。

私たち日本人は、外国語の難しい文書を読むことはできても、話したり書いたりすることは苦手な人が多いです。その理由は、私たちは辞書に書いてある言葉の意味だけを覚えるような、「点」での理解(その言葉のみを覚えること)しかしていないためです。

本来は、言葉を学ぶということは、その単語のみを理解するだけではなく、他の単語とどう違うのかという単語自体の意味範囲の境界を理解すること(「面」での理解)だと筆者は述べています。

この事を分かりやすくするために、筆者はいくつか例を挙げています。例えば、トマトの色、消防車の色、イチゴの色はそれぞれ微妙に異なる色ですが、私たちは皆「赤」と呼びます。これは、私たちが「赤」という特定の範囲を指す言葉の意味を「面」で理解しているからです。

また、そもそも言語によって意味の範囲は異なるため、日本語と英語がそれぞれぴったり一致するようなことはないのだと筆者は述べています。

例えば、「blue」は英語だと「青色」だけでなく「青みがかった灰色」という意味も含まれています。そのため、日本語だとどう見ても「灰色」にしか見えないネコを海外だと「ロシアンブルー」と呼んでいたりします。

このように、言語によって世界の線引きの仕方は異なるため、ある言葉の意味が「点」と「点」で一致すると、私たちは「面」と「面」でも意味が重なると考えてしまいがちです。

そうではなく、言葉自体を取り囲む他の単語との関係を理解し、それらの単語がどのように面として塗り分けられているかを知ることが、言葉を知る上で重要なのだと筆者は結論付けているのです。

『言葉は世界を切り分ける』の意味調べノート

 

【母語(ぼご)】⇒幼児期に母親などから自然な状態で習い覚えた言語。

【膨大(ぼうだい)】⇒非常に大きいこと。

【自在(じざい)】⇒思いのままであること。

【習熟度(しゅうじゅくど)】⇒習熟の程度。習熟の度合い。

【語義(ごぎ)】⇒ことばの意義。

【文献(ぶんけん)】⇒文書。書物。

【定義(ていぎ)】⇒物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること。

【スペクトル】⇒波長の分布。その形により、連続スペクトル・線スペクトル・帯スペクトルに分けられる。

【色彩(しきさい)】⇒いろどり。色合い。

【彩度(さいど)】⇒色の鮮やかさの度合い。

【明度(めいど)】⇒色の明るさの度合い。

【識別(しきべつ)】⇒物事の種類や性質などを見分けること。

【カテゴリー】⇒同じような性質のものが含まれる範囲。範疇。

【分節(ぶんせつ)】⇒全体をいくつかの区切りに分けること。

【概念(がいねん)】⇒個々の事物から共通する性質を抜き出して構成される意味内容。

【隣接(りんせつ)】⇒となり合っていること。

【境界(きょうかい)】⇒物事のさかい。

【すげ替える(すげかえる)】⇒つけかえる。取り替えてすげる。「すげる」とは「はめ込む・差し込む」などの意。

【多様(たよう)】⇒いろいろ異なるさま。さまざま。

【漠然(ばくぜん)】⇒ぼんやりして、はっきりとしないさま。

【システム】⇒相互に働き合う諸要素の関係、またその全体。

『言葉は世界を切り分ける』のテスト問題対策

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

シュウジュク度を測る。

シキサイが美しい。

③色をシキベツする。

リンセツする土地。

バクゼンと理解する。

解答①習熟 ②色彩 ③識別 ④隣接 ⑤漠然
問題2「外国語では言葉を自在に使ってコミュニケーションを取ることは難しい」とあるが、なぜか?本文中の語句を使い答えなさい。
解答日本人は外国語を学ぶ際に、辞書に書いてある語の意味は覚えていても、語の使い方までは理解できていないため。
問題3

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)私たちが外国語を話したり書いたりすることが苦手なのは、辞書にある語の意味は覚えていても、語の使い方を理解できていないからだ。

(イ)単語の意味は、単語一つだけで決まるわけではなく、個々の意味領域の中に属する一群の関連する言葉どうしの関係によって決まる。

(ウ)言語は世界を特定の仕方で分節するため、外国語を学習する際は、母語の単語をそれに対応する外国語の単語に置き換えればいいわけではない。

(エ)コミュニケーションを取るために言葉を「知る」ということは、意味の地図を持ち、それぞれの言葉が面として分かるということである。

解答(ウ)「言語は世界を特定の仕方で分節する」が誤り。筆者は「異なる言語は世界を異なる仕方で分節するため、単に母語の単語をそれに対応する外国語に置き換えればいいわけではない。」と述べている。

まとめ

 

以上、今回は『言葉は世界を切り分ける』について解説しました。ぜひ定期テスト用に見直して頂ければと思います。