こころ 問題 読書感想文 教科書 学習の手引き 授業 テスト

『こころ』は、夏目漱石による有名な文学作品です。そのため、高校国語の教科書にも載せられています。

ただ、実際に本文を読むと登場人物の心理などが分かりにくい場面もあります。そこで今回は、『こころ』のあらすじやテスト対策、読書感想文(800字)の書き方などを含め解説しました。

『こころ』のあらすじを簡単に

 

『こころ』は、上・中・下の三つの部で構成されている小説です。作品全体は、私の手記という形をとっています。

まず、「上 先生と私」では、先生と私の出会い及びその後の先生との生活が描かれています。次の「中 両親と私」では、大学を卒業後、いったん故郷に帰った私が、故郷の家族と暮らしながら体験した帰省中の出来事が描かれています。

最後の「下 先生と遺書」では、故郷にいる私宛てに、先生から届けられた手紙(遺書)の内容が紹介されています。この遺書の中で、先生の過去と現在に至る心境が書かれている、というものです。

一般に高校国語の教科書では、「下 先生と遺書」を中心に抜粋されることが多いです。本記事では、それぞれのあらすじを簡単に紹介していきます。

「上 先生と私」のあらすじ

私は高等学校の学生だった頃、夏休みを利用して出かけた鎌倉の海岸で、先生と出会った。東京に戻った私は、先生の家に出入りするようになり、先生と私の交際が始まった。

先生は奥さんと二人でひっそりと暮らしていた。仲のよい夫婦であったが、私には二人の間に何か隠し事があるように感じられた。

先生は頭がよく、大学も卒業しているのに、仕事には就いていなかった。私は先生のことを深く尊敬し、先生の人生や思想をもっと知りたいと思った。だが、なぜか先生は心の奥底にある過去を隠して語ろうとしなかった。

わだかまりを感じていた私に対して、先生は、適当な時が来たら自分の過去をすべて話す、と約束した。

「中 両親と私」のあらすじ

大学を卒業した私は、故郷へ帰った。両親は私が大学を卒業したことを大変喜び、客を呼んで卒業祝いをしようと計画した。しかし、その日がまだ来ない内に、明治天皇の崩御と乃木大将の殉死が、新聞で日本中に報じられた。

その頃から私の父の容体が次第に悪くなり始め、私が東京へ戻ろうとする際に父は腎臓病で倒れ、寝たきりとなった。

その時、私のもとに先生から分厚い手紙が届いた。手紙は先生の遺書であった。私は勢いで東京行きの汽車に飛び乗り、先生の遺書を読み始めた。

「下 先生と遺書」のあらすじ

※ここからの「私」は「先生」を指したものとなる。

私は20歳にならない頃に両親を亡くし、孤児となった、その後、故郷の新潟を離れ、東京の高等学校へ入学した。故郷の家には叔父一家が移り住み、遺産の管理もすべて叔父が引き受けてくれていたのである。

三度目の夏休みに帰省をした時、従妹との結婚を私に強要する叔父が、実は私の財産をごまかしていることを知り、私は人間不信に陥った。私は残された財産を整理し、父母の墓に別れを告げると、二度と戻らないつもりで故郷を後にした。

上京した私は、下宿に移って大学へ通うことになる。その下宿では、軍人の未亡人である奥さんと女学校に通っているお嬢さんがいた。私は奥さんやお嬢さんとしだいに打ち解け、親しくなっていくが、そこに一人の男が同居することになった。それがKである。

Kは幼い頃からの私の友人で、真宗の寺の次男として生まれ、その後、医者の家に養子に行くことになった。しかし、Kは医者になるつもりなどなく、養家から絶縁され、実家からも勘当される。しだいに神経衰弱となり、私はKを援助するために引き取ることになったのである。

こうして、私、K、お嬢さん、奥さんの4人での暮らしが始まることになった。しばらく生活していると、Kとお嬢さんが時折二人きりになることが増え、私は内心、穏やかな気分ではなかった。私はKに嫉妬をしていたのである。私は今まで何とも思っていなかったお嬢さんに恋心を抱くようになり、Kに対抗心を抱くようになった。

ある日、正月に奥さんの提案でカルタとりをした。数日後、奥さんとお嬢さんの留守中に、Kが二人のことをしきりに質問してきた。不思議に思い理由を聞くと、Kは重々しい口調でお嬢さんへの恋を私に告白する。私は恐ろしさと苦しさの塊のように固くなり、先を越されたな、と思った。私は自分もお嬢さんに恋しているということをKに告白する機会を失ってしまった。

その後、私とKはこの件に関して話をしようとしなかった。しかし、学校の図書館で偶然出会い、ともに上野公園に行くことになった。私は無防備なKにアドバイスを与えるのではなく、打ち倒そうとした。そして私は「精神的に向上心のないものはばかだ。」とKに言った。このセリフは、Kが以前発したものと同じである。私は、その道のためにはすべてを犠牲にすべきであるというKの考えを利用し、お嬢さんへの恋をあきらめさせようとしたのだ。

上野から帰り、私はKを出し抜くために仮病を使って学校を休み、奥さんにお嬢さんと結婚したいと申し込んだ。すると、あっけなく承諾された。私はKにこの事を話さなければと思ったが、奥さんからKに話をしたということが知らされた。その時のKの様子を聞いて、私は胸がつまるような苦しさを感じた。

私はKの態度の立派さに、自分は策略で勝っても人間としては負けたと感じ、敗北感を味わうことになる。私がどうするか迷っているうちに、Kは簡単な遺書を残してこの世を去ってしまった。私はKに暗示された運命の恐ろしさを深く感じ、ただなすすべもなくうろたえるばかりであった。

『こころ』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①実家にキセイする。

ヘイゼイの行い。

クッタクのない顔。

ショウダクを受ける。

⑤勝ち負けにコウデイする。

⑥学生時代をカイコする。

⑦何気ないショサに性格が表れる。

⑧素っ気ないアイサツをする。

ユウジュウ不断な考え方。

⑩友人をナグサめる。

解答①帰省 ②平生 ③屈託 ④承諾 ⑤拘泥 ⑥回顧 ⑦所作 ⑧挨拶 ⑨優柔 ⑩慰
問題2「私の頭は悔恨に揺られてぐらぐらしました。」とあるが、この時の私の心理はどのようなものだったと考えられるか?
解答例自分もKと同様にお嬢さんに恋心を抱いていたので、驚きと恐ろしさのあまりKに自分の気持ちを話すことができず、機会を逃した後に強い後悔にさいなまれている状態。
問題3私はなぜ「精神的に向上心のないものはばかだ。」という言葉をKに発したと考えられるか?
解答例Kが以前から信念をもって主張していた言葉を、理想と現実の間で葛藤するKにぶつけることで、Kを打ち負かしてお嬢さんに対する恋をあきらめさせようとするため。
問題4「私は、永久に暗い夜が続くのではなかろうかという思いに悩まされました。」とあるが、この時の私の心理はどのようなものだったと考えられるか?
解答例自分がKを追い込んだのだと考えると、あまりの罪の重さに恐れおののき、自分はずっとこの罪を背負って、苦しみ続けるのではないかと予感している状態。

『こころ』の読書感想文の書き方

 

『こころ』の読書感想文を、800文字で以下に記しました。この感想文はあくまで一例ですので、実際に書く際は、自分なりにアレンジして書くようにして下さい。

感想文の例(800文字)『こころ』を読み、私は人間の心の複雑さというものを強く感じた。物語の中心には、登場人物の私と先生の過去、そこに隠された罪の意識や孤独が様々な場面を元に書かれている。読んでいると、人の弱さや後悔が痛いほど伝わってきて、重たいけれども深く考えさせられる内容だった。特に印象に残ったのは、先生が友人であるKを裏切ってしまうシーンだ。Kは真面目で信仰心が強い人物なのにもかかわらず、先生は自分の恋心を優先させてKを追い込んでしまった。その結果、先生はその罪の意識を一生抱え続けることになる。読んでいて、先生の心の中の重さがひしひしと伝わってくるようだった。また、この物語では「孤独」というテーマが一貫して描かれているように感じた。先生は結婚して愛する人を手に入れたはずなのに、Kを裏切った罪悪感が心に深く刻まれていて、それが原因で誰とも本当の意味で繋がれなくなる。この孤独は過去への後悔や、自分の弱さと向き合えないことから生まれているように感じた。漱石がこの作品で問いかけているのは、誰もが抱える孤独や罪とどう向き合うべきなのかということだと感じた。人間関係の中での責任や選択の重さも、この作品を読んで改めて考えさせられた。先生の行動は許されるものではないが、その背景にある彼の弱さや葛藤は誰しも共感できる部分があるのではないかと思う。普段の生活でも、つい自分を優先して他人を傷つけたり、後になって後悔したりするようなことはある。そういうときにこの作品を思い出して、自分の行動を振り返ることができればとよいと思った。漱石が描いた人間の心の揺れ動きや葛藤は、今も全く色褪せていない。『こころ』は、単なる恋愛小説ではなく、自分自身と向き合うことの大切さ、そして人との関係における責任について深く考えさせられる作品である。この作品を読んだことで、少しでも自分の行動に責任を持てるような人間になりたいと思った。(797文字)

まとめ

 

今回は、『こころ』のあらすじや感想文、テスト対策などについて解説しました。ぜひ参考にして頂ければと思います。なお、本文中に出てくる重要語句については下記の記事でまとめています。