「気質」という言葉は、普段からよく使われています。主に「おだやかな気質」「職人気質」などが挙げられます。
ところが、この言葉は「性質」や「性格」、「気性」など似たような語があるため違いが分かりにくいです。そこで今回は、「気質」の意味や読み方・例文・類義語などを含め詳しく解説しました。
気質の意味
まずは、基本的な意味からです。
【気質(きしつ)】
①言動に表れる、その人の身に備わった性質。気だて。かたぎ。
②中国で、万物を構成する物質である気の集散運動によって形成される個体をいう語。特に、宋学では、人間の肉体および肉体に固有の心理的・生理的素質のこと。
③人の性格の基礎をなす感情的反応の特徴。遺伝的・生理的規定が強いとされる。多血質・憂鬱質・胆汁質・粘液質の四分類のほか、心理学・生理学などに基づく種々の分類がある。
出典:三省堂 大辞林
「気質」は辞書だと3つの意味が書かれていますが、多くは①の意味として使われます。
すなわち、「その人が本来持っている性質」のことです。
例えば、「気質がおだやかな人」であれば、「生まれた時からおだやかな人」という意味になります。逆に、「気質が激しい人」であれば「生まれた時から怒りっぽい人」という意味になります。
つまり、「気質」とは「人が生まれつき持っている特徴」を指すということです。
私たちは、生まれた環境や出会った人によって様々な影響を受けます。一方で、生まれた瞬間から全く変わらない特徴もあります。
「気質」とはそのような個人が生まれつき備えている先天的な特徴を表すのです。
気質の読み方
「気質」は、原則として「きしつ」と読む言葉です。ただし、場合によっては「かたぎ」と読むこともあります。
「かたぎ」と読む場合は単独では使わず、「複合語」として用いるのが特徴です。
【例】
- 「職人気質(しょくにんかたぎ)」
- 「書生気質(しょせいかたぎ)」
- 「武士気質(ぶしかたぎ)」
実は「かたぎ」は「慣用読み」と言い、本来の読み方ではありません。
「慣用読み」とは、元々は間違った読み方が、皆が使う内になぜか定着した読み方のことです。
「慣用読み」の例としては以下のような言葉が挙げられます。
- 「捏造(ねつぞう) 」⇒「でつぞう」の慣用読み。
- 「消耗(しょうもう)」 ⇒「しょうこう」の慣用読み。
- 「早急(さっきゅう)」⇒「そうきゅう」の慣用読み。
これらの読み方と同様に、「気質(かたぎ)」も「きしつ」の慣用読みが定着したものです。よって、正式な読み方としては「きしつ」が正しいということになります。
現在、「かたぎ」と読む時は「職業や身分・地域などを共有する人々に見られる共通の性格」という意味で使われます。
もしも「かたぎ」と読む場合は、個人の性質を表す「きしつ」とは異なる言葉だと認識して構いません。
気質と性格の違い
似たような言葉で、「性格」があります。
【性格(せいかく)】
①行動のしかたに現れる、その人に固有の感情・意志の傾向。
②特定の事物にきわだってみられる傾向。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「性格」とは「その人が持っている固有の感情・意思のこと」を意味します。「性格」は、「先天的にも後天的にも形成される」という点が重要です。
「気質」は、個人が持つ先天的な性質でした。一方で、「性格」の方は、必ずしも先天的とは限りません。
「性格」は場合によっては、後天的に形成されることもあるのです。
例えば、生まれつきものすごくネガティブなAさんがいたとしましょう。
ところが、Aさんはポジティブな両親の元に生まれ、「常に前向きに生きることの大切さ」を教えられました。
結果的に、Aさんは成人する頃には物事を前向きに考えるようになったのです。これが「性格」です。
つまり、「性格」は環境や周りの人によって変わる場合があるということです。
私たちは普段から「性格」=「先天的なもの」だと考えがちです。しかし、人間の性格は生まれ持ったものがすべてとは限りません。
生まれた後の環境や親、兄弟、友人、教師など周囲の人間によっても性格は形成されていくのです。
なお、「性格」の場合は「物質」「動物」「物事」など幅広い対象にも使うことができます。辞書の説明だと、②になります。
対して、「気質」は人に対してしか使うことができません。この点も、「性格」と「気質」の違いだと言えます。
気質の類義語
続いて、「気質」の類義語を紹介します。
以上が、主な類義語となります。補足すると、「性質」も「性格」と同様に人以外のものに使うことができます。
また、「人格」は「性格」と似ていますが、もっと深い意味での人間の本質を表すような際に使います。例えば、「人生の生き方」「仕事への向き合い方」といったことです。
「人格者」という言葉はありますが、「性格者」という言葉はありません。これは「人格」の方が個人の限定された特徴ではなく、人間自体の本質を表した言葉だからだと言えます。
また、「気性」は激しかったり強かったりする性質には使いますが、「温厚」「慎重」など落ち着いた性質に対しては使いません。対して、「気質」は人であればどんな性質にも使うことができます。
その他、表向きの性質を表す時は「人柄」を使い、逆に裏側の性質を表すような時は「本性」を使います。
気質の使い方・例文
最後に「気質」の使い方を例文で確認しておきましょう。今回は「性格」の例文も合わせて紹介しました。
【気質の使い方】
- 彼の頑固な気質は生まれつきなので、変えようがない。
- 父方から流れるアスリートの気質を受け継ぐ。
- 彼女は、お嬢様気質として知られている人物である。
- 職人気質の彼は、納得いくまで仕事を続けるようです。
- 私の家系は、先祖代々、武士気質と聞きました。
【性格の使い方】
- 社交的な性格なので、みんなから好かれている。
- 彼女と離婚したのは、性格の不一致が原因です。
- 彼は積極的な性格だが、昔はそうでもなかった。
- AとBの問題は、性格が異なるので比較できない。
- カバはおとなしい性格に見えるが、かなり凶暴だ。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「気質」=個人が本来持っている性質。先天的な特徴。
「読み方」=「きしつ」と読む。「かたぎ」は「慣用読み」で本来の読み方ではない。
「性格」=個人が持っている固有の感情・意思。先天的・後天的な特徴。
「類義語」=「性質・人格・個性・気性・人柄・本性・天性」
「気質」は生まれつき変わらないものですが、「性格」は環境や人によって変わります。この記事によってぜひ正しい使い方を覚えて頂ければと思います。