『近代の成立ー遠近法』 要約 語句調べ テスト問題 解説

『近代の成立ー遠近法』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストにも出題されています。

ただ、本文を読むと内容が分かりにくいと感じる人も多いです。そこで今回は、本作のあらすじや要約、テスト問題などをわかりやすく解説しました。

『近代の成立ー遠近法』のあらすじ

 

本文は、五つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①絵画には、遠近法が欠かせない。それは、絵画には二次元の平面に三次元の空間をうつしとるという本質があるからだ。

②これまでの伝統的な絵画では、遠近法は発達してこなかった。厳密な遠近法を実現するのは、幾何学的な準備や道具が必要なこと、また、遠近法にこだわる動機がなかったことが大きな理由である。

③厳密な遠近法では、描く自分の置かれている時間と場所を、はっきりと意識しなければならない。だが、そうすることで、世界は「見える通りに」描くことができる。そして、描いた世界をそのように視ることができる視点は、この世界にたったひとつしかないことになる。そこに、この世界を視ることを自覚した人間の「視る主体」が誕生する。

④遠近法は合理的な絵の描き方である。誰もが正確で客観的な像を手に入れることができる点で一般的であり、二度と同じ絵が描かれない点で個別的である。遠近法から逸脱すれば、より個性や主観性をはかることもできる。

⑤遠近法により、人はそれぞれ別の視点を持つ。それは、世界を、主体/客体の関係によってつかむことであり、つかんだ内容を、主語/目的語の関係によって整理することでもある。遠近法の登場は、人びとのものの見方が、近代に向かって一歩大きく踏み出したことの現れなのだ。

『近代の成立ー遠近法』の要約&本文解説

 

200字要約遠近法は、世界を一つの視点から合理的かつ客観的に捉える技術であり、描き手の「視る主体」を強く意識させるものである。遠近法により、個別的な視点が尊重されると同時に、人は一人ひとり異なる視点を持ち、世界の様々な物体に視線を向けることで主体と客体の関係を築けるようになった。遠近法の登場は、近代的な思考を育む契機となり、人びとのものの見方が、近代に向かって一歩大きく踏み出したことの表れだと言っていい。(198文字)

『近代の成立―遠近法』では、「遠近法」という視覚的技術が単なる絵画技法にとどまらず、近代の人間観や世界観の形成に深く関わっているという主張が軸になっています。

この文章が難しく感じられるのは、「遠近法」という技術そのものと、「近代」という時代概念の両方を理解している前提で話が進むからです。

また、「美術」「哲学」「歴史」「科学」など複数の分野にまたがる内容が抽象的に説明されているため、高校生にとってはピンとこない部分が多いでしょう。

ですので、ある程度の背景知識がないと難しく感じるのは当然だと言えます。「近代」の意味が分からない人は、まず以下の記事を読むと話が理解しやすくなるでしょう。

二点ポイントを押さえるなら、「遠近法」は近代的な「人間中心の考え方」を象徴しているということ、そして、「遠近法」という技術が私たちの「世界の見方」そのものを変えたということです。

遠近法では、見る人(観察者)がはっきりと決まっています。その人を基準に世界が描かれるので、「私が見る世界」という構図が生まれます。これが、近代の「個人が中心」という考え方と結びついています。

それまでの中世(近代の前の時代)では、神や宗教が中心で、人間がどう見ているかはあまり重視されませんでした。

しかし、遠近法はそれまでの中世的な価値感を変えさせ、近代の「世界を合理的に見る視点」を作り出しました。

このように、「遠近法」は単なる絵の技術ではなく、「世界をどう見るか」という考え方そのものを変えたいうことを筆者は主張しているのです。

『近代の成立ー遠近法』の意味調べノート

 

【混同(こんどう)】⇒本来は区別しなければならないものを、同じものとして扱うこと。

【不可欠(ふかけつ)】⇒なくてはならないこと。

【素朴(そぼく)】⇒自然のままに近く、あまり手の加えられていないこと。

【次元(じげん)】⇒物体や空間の広がりを示す概念。線は一次元、平面は二次元、立体は三次元と呼ばれる。

【解釈(かいしゃく) 】⇒言葉や物事の意味を判断し、理解すること。

【なぞる】⇒すでにかかれた文字や絵などの上をたどって、そのとおりにかく。

【網膜(もうまく)】⇒目の奥にある薄い膜で、カメラのフィルムやセンサーのような役割をしている部分。

【忠実(ちゅうじつ)】⇒内容をごまかしたり省略したりせずそのままに示すこと。また、そのさま。

【厳密(げんみつ)】⇒誤りがないように、細かいところまで厳しく目を行き届かせるさま。

【洗練(せんれん)】⇒磨き上げて、あか抜けしたものにすること。

【写実的(しゃじつてき)】⇒現実の物事や風景を、できるだけありのままに表現しようとするさま。

【幾何学(きかがく)】⇒図形や空間の性質を研究する学問。

【容易(ようい)】⇒たやすいこと。

【動機(どうき)】⇒行動を起こす直接の原因や理由。

【徹底(てってい)】⇒中途半端でなく一貫していること。

【次頁(じぺージ)】⇒次のページ。

【霊魂(れいこん)】⇒人間や動物の肉体とは別に存在し、死後も存在すると考えられている精神的な存在。

【特権的(とっけんてき)】⇒通常の権利よりも優遇されているさま。

【臣下(しんか)】⇒主君に仕える者。

【人文主義(じんぶんしゅぎ)】⇒人間の理性や自由を重視し、個人の尊厳や幸福を追求する思想や考え方。特に、ルネサンス時代にヨーロッパで発展した思想で、神や宗教よりも人間そのものを中心に考え、古代ギリシャ・ローマの文化を復興しようとする動きがあった。

【能動的(のうどうてき)】⇒自ら他に働きかけるさま。

【合理的(ごうりてき)】⇒道理や論理にかなっているさま。

【客観的(きゃっかんてき)】⇒特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま。

【逸脱(いつだつ)】⇒物事の本筋や決められた枠から外れること。

【一脈通じる(いちみゃくつうじる)】⇒何らかの共通点があること。

【めいめい】⇒各自。それぞれ。※個々の人や物を一つ一つ指し示す言葉。

『近代の成立ー遠近法』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

チュウジツに再現する。

ゲンミツな検査を受ける。

③任務をイツダツする行為。

レイコンが宿る。

ケンビ鏡で観察する。

解答①忠実 ②厳密 ③逸脱 ④霊魂 ⑤顕微
問題2『こういうのを、「素朴遠近法」という。』とあるが、「こういうの」とは何か?
解答例遠くにあるものを小さく、近くにあるものは大きく描くという手法。
問題3『このようにすると、この世界の物体なら何でも「見える通りに」描くことができる。』とあるが、「見える通りに」とはどういうことか?
解答例三次元の世界にある実物を二次元の平面に写しとったうえに、特定の時間と場所に限定するという条件をつけた上で描くこと。
問題4『そうである以上、めいめいが、世界の中で、このように活動しなければうそだ。』とあるが、「このように」とはどのようなことか?
解答例人間が、視る主体として自分をこの世に存在させた、隠された神の計画を知るために、積極的になること。

まとめ

 

今回は、『近代の成立ー遠近法』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。