『会話と対話』は、長田弘による評論文です。教科書・現代の国語にも載せられています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所もあります。そこで今回は、『会話と対話』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。
『会話と対話』のあらすじ
本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①会話と似た言葉で、対話がある。会話が豊富になったぶん、対話のありようは、むしろ貧しくなったのではないかと気づかされる。
②いまは言葉を使い捨てにするお喋りを会話と言っていることが多い。対話、談判の考え方こそ、この国が失いつづけてきた大事なものではなかったか。対話、談判というのは、問題の引き受け方というか、心の決め方というふうに言っていいかもしれない。いまは、問題を引き受けたくない、心を決めたくないという、先延ばしにして疑われない時代になっている。言葉が考えを伝える力をもつことがどんどん難しくなってゆくような状況が広まっている。
③対話のないところ、談判のないところは、思慮分別がでてこなくなってしまう。そして、そのことが今のわたしたちのありかたを脆くしている。あらためて考えたいのは、対話のもつちからである。
『会話と対話』の要約&本文解説
筆者は、「会話」とは言葉を使い捨てにするおしゃべりのことであり、「対話」とは物事を始末し取り決めるための論じ合い・交渉のことだと述べています。
そして、現代はコミュニケーションの手段が多様になったことで、会話のかたちは豊富になったものの、対話のありように関しては貧しくなったとも述べています。
例えば、現代では、対話の不在や不足により、望ましくない事件などが生じることがあります。これは私たちの間で、「互いに向き合って問題を話し合う」という「対話」の習慣が欠けるようになったからだと言えます。
筆者は、対話や談判がないところでは、思慮分別がでてこなくなってしまい、わたしたちのあり方を脆くしているのだと問題視しています。
これはつまり、私たち自身が対話をしないことで、物事を深く考えて判断する能力が弱くなっているということです。
そのため、あらためて「対話のもつちからについて考えたい」という主張で本文を締めくくっています。
『会話と対話』の意味調べノート
【ありよう】⇒物事の状態。ようす。
【意気さかん(いきさかん)】⇒活発なさま。
【自由闊達(じゆうかったつ)】⇒物事にこだわらず、自分の思うままに振る舞うさま。
【あたかも】⇒まるで。まさしく。
【直截(ちょくせつ)】⇒まわりくどくなく、ずばりと言うさま。
【談判(だんぱん)】⇒事件やもめごとに決着をつけるために、相手方と話し合うこと。交渉。
【しばしば】⇒たびたび。
【方策(ほうさく)】⇒方法。手段。
【露出(ろしゅつ)】⇒あらわになること。表面に出てくること。
【衝突(しょうとつ)】⇒意見の違う人々がぶつかって争いとなること。
【案じる(あんじる)】⇒心配する。
【傲慢(ごうまん)】⇒おごりたかぶって人を見下すこと。
【赤心を披く(せきしんをひらく)】⇒ありのままの心をさらけ出す。「赤心」とは「嘘いつわりのない、ありのままの心」、「披く」とは「心中を打ち明ける」という意味。
【野暮(やぼ)】⇒人情の機微に通じていないこと。
【敬礼(けいれい)】⇒相手を敬うこと。
【作法(さほう)】⇒社会通念上、よく守られているやり方。
【破片(はへん)】⇒かけら。
【まかりとおる】⇒通用する。
【一人勝手(ひとりかって)】⇒自分勝手。自分が好きなようにしている状態。
【無愛想(ぶあいそう)】⇒愛想のないこと。そっけなくつっけんどんなこと。
【思慮分別(しりょふんべつ)】⇒物事を深く考えて、判断すること。また、その能力。
【脆い(もろい)】⇒壊れやすい。持ちこたえる力が弱い。
『会話と対話』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ホウフな知識。
②物事をシマツする。
③意見がショウトツする。
④ケイレイを失わない。
⑤シリョの深い人物。
⑥モロい壁。
まとめ
以上、今回は『会話と対話』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。