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ビジネスシーンなどでお金やお菓子などをもらうことを「いただく」と言います。ただ、この場合に「頂く」と「戴く」のどちらの漢字を使えばよいのか?という問題があります。

また、場合によっては漢字ではなくひらがなで「いただく」とそのまま書くこともあります。今回は、「頂く」と「戴く」の違い、さらに「いただく」について解説しました。

頂くの意味

 

まずは、「頂く」の意味からです。

【頂く(いただく)】

「大切にする・敬い扱う」

「食べる・飲む」「もらう」の謙譲語。

 

頂く」は、主に二つの意味があります。ただ、一般的には②の「食べる・飲む」「もらう」という意味で使われることが多いです。

【例】

  • お菓子を頂く。
  • ごちそうを頂く。
  • 時間を頂く。

「頂く」を覚える上で大事なのは、「何かの行為に対して謙譲語が使われる」という点にあります。

「謙譲語」とは、自分の行為をへりくだって下げる敬語のことです。つまり、自分の地位を下げることによって、相手のことを敬うということです。

「頂く」という字は、「頂上」「山頂」などの熟語があるように「頭のてっぺん」という意味があります。

すなわち、「相手を自分の頭のてっぺんに持っていくほど高くして敬意を表する」ということです。

そこから、①の「大切にする・敬い扱う」という意味としても使うようになったのです。

戴くの意味

 

次に、「戴く」の意味です。

戴く(いただく)

「ありがたく受ける」

「もらう」の謙譲語。

 

戴く」も同様に二つの意味がありますが、②の「何かをもらう」という意味で使われることが多いです。

【例】

  • お中元を戴く。
  • お菓子を戴く。
  • 優勝旗を戴く。

「戴く」の語源も確認しておくと、「戴」という字は「戴冠(たいかん)」という言葉からきています。

「戴冠」とは「王様の冠を頭の上にのせること」で、古くからおごそかで神聖な儀式をする際に行われてきました。

よって、「戴く」の方は相手に対して大変敬意をもった言葉である事が分かるかと思います。

なお、「戴く」という漢字は常用漢字ではありません。

「常用漢字」とは「一般の社会生活においてこの程度は使う」という目安を国が示したものです。したがって、「戴く」は一般的にはあまり使われない表記となります。

頂くと戴くの違い

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「頂く」と「戴く」の違いは、2つの点から比較すると分かりやすいです。

1つめは、「いただく」対象が「目にみえるかどうか」です。

頂く」は、目に見えるもの・見えないもの両方に対して使います。例えば、「ワインを頂く」「休みを頂く」などのような用例です。

一方で、「戴く」は「冠(かんむり)」の例からも分かる通り、目に見えるものに対して使います。したがって、「時間」のような目に見えないものをもらう場合は「戴く」は基本使いません。

2つ目は、「敬意の大きさ」です。

先ほど、「戴く」は王様の頭に冠をのせる儀式からきていると説明しました。つまり、「戴く」は「頂く」よりも、より丁寧で相手を敬うときに使われるのです。

例えば、普通のお菓子ではなく、非常に高級なお菓子を「いただく」ような場合に「戴く」を使うことになります。「頂く」も相手への敬意を表した漢字ですが、「戴く」の方はさらに敬意を表した漢字ということです。

なお、すでに説明したように「頂く」は常用漢字ですが、「戴く」は常用漢字ではない、という違いもあります。

一般に常用漢字というのは、学校の教科書や国の公文書などを書く際の目安となっています。また、ビジネス文書などもこれに倣い常用漢字を原則として使う傾向にあります。

そのため、例えばビジネスメールなどに関しても基本は「頂く」を使う方が望ましいです。「戴く」も使えないというわけではありませんが、こちらは個人的なメールやお礼状などの文言に限定しておく方が無難だと言えます。

いただくの使い方

 

「頂く」もしくは「戴く」ではなく、ひらがなで「いただく」と表記する場合もあります。

ひらがなで「いただく」と書くのは、「補助動詞」として使う場合です。「補助動詞」とは「動詞の後ろに補助的につける動詞」のことです。

例えば、「参考にしていただく」という文があった場合、参考に「する」という動詞に対して「いただく」が補助動詞となります。

この場合の意味としては、「もらう」と同じ意味です。ただ、補助動詞として使う場合は、漢字では表記することができません。

そのため、「参考にして頂く」ではなく「参考にしていただく」が正しい表記となります。

逆に、補助動詞ではなく普通の敬語として使う場合は、ひらがなではなく漢字を使うようにします。

このように、日本語の文法は「動詞は漢字で書き、補助動詞はひらがなで書く」というルールがあるので注意が必要です。

使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を実際の例文で紹介しておきます。

【頂くの使い方】

  1. 帰り際に飲み物を頂くのは、いつものことだ。
  2. 面白そうな本を頂いたので、さっそく読もう。
  3. 30分という貴重な時間を頂くのは、申し訳ない。
  4. お客さんから要望を頂いたので、参考にしたい。
  5. 専門家からアドバイスを頂くことにしました。
  6. 一週間も休みを頂くことになり、感謝しています。

【戴くの使い方】

  1. 国のトップである総理大臣から、直筆の手紙を戴く
  2. 会社の上司から、とても高価なお菓子を戴いた
  3. 高校野球で全国制覇したため、優勝旗を戴いた
  4. 無事に大学の卒業証書を戴くことができました。
  5. 社長から今年1年の表彰状を戴くことになりました。
  6. こんなに豪華なプレゼントを戴くのは初めてです。

【いただくの使い方】

  1. 午後からの会議では、会長にスピーチをしていただく予定です。
  2. わざわざ貴重なお話の機会を作っていただくなんて、恐縮です。
  3. 今回の件は、すべてをお話ししたいただく必要はございません。
  4. お世話になった先生から手紙を書いていただくことになりました。
  5. まさかここまで感謝していただくなんて、思いもしませんでした。
 

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

頂く」=①「大切にする・敬い扱う」②「食べる・飲む」「もらう」の謙譲語。

戴く」=①「ありがたく受ける」②「もらう」の謙譲語。

いただく」=動詞の後ろに補助的につける「補助動詞」としての役割。

使い分け」=「頂く」は目に見えるもの・見えないもの両方に対して使い、「戴く」は目に見えるものに対して使う。また、「戴く」の方がより丁寧で相手を敬うときに使う。「いただく」は補助動詞として用いる場合のみ使う。

どちらもビジネスや冠婚葬祭などでよく使われる言葉です。これを機にぜひ正しい使い方を理解して頂ければと思います。