「委曲を尽くす」という慣用句をご存知でしょうか?
普段のニュースや新聞などでよく使われる表現です。
また、場合によっては
ビジネスなどで用いられることもあります。
ただ、なかなか聞き慣れない言葉なので、
イメージがしにくいという人も多いかと思われます。
そこで今回は、
「委曲を尽くす」の意味や読み方・語源・類語
などを含め詳しく解説しました。
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委曲を尽くすの意味・読み方
まずは、基本的な意味と読み方からです。
【委曲を尽くす(いきょくをつくす)】
⇒説明などを詳しくして、細かいところまで行き届かせる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「委曲を尽くす」は、「いきょくをつくす」と読みます。
意味は「説明などを詳しく行い、細かい所まで行き届かせること」です。
例えば、普段のニュースなどで
交通事故の速報が流れることがあります。
通常であれば、目撃者がいない交通事故だと
詳細が分かるということはありません。
しかし、目の前で事故を見た人がいれば、
詳細が分かるというケースもあります。
【事故が起きた時間、場所、車の車種、色、ドライバーの性別、年齢層】
実際にこれらの細かい情報を目撃者の人が覚えていて、
マスコミに対して詳しく説明したとしましょう。
このような時に、
「事故の目撃者は、委曲を尽くした説明をした。」などのように言うわけです。
つまり、「委曲を尽くした」という表現は、
「物事の細部まで詳しく明らかにすること」を意味するということですね。
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委曲を尽くすの語源・由来
「委曲を尽くす」の「委曲」とは
「詳しく細かいこと」という意味です。
まず「委曲」の「委」ですが、
「委」は訓読みで「委(くわ)しい」とも読める漢字です。
現在は「くわしい」=「詳しい」と書くのが一般的ですが、
昔は「委しい・精しい」などと書いていたという経緯があります。
元々、「委」という字は
「穂先の垂れた稲」と「低い姿勢でひざまずく女性」の象形からできたものですが、そこから派生したのが「委しい」という言葉なのです。
そして、「曲」ですがこれは、
「竹やつるなどを細かく編んで作った籠(かご)の形」から成る象形文字です。
「曲」と聞くと音楽などをイメージする人もいますが、
この漢字は何かの曲などを指していたわけではありません。
細かく編んで作る様子から、
「曲がる、曲げる、細かい、くわしい」などの意味で使われるようになった字です。
以上の事から考えますと、「委」も「曲」のどちらの漢字にも
「くわしい」という意味が含まれているということが分かるかと思います。
そこに、「尽くす」という動詞を付けることで、
「細かい所まで行き届かせる」という意味になっているということです。
ここでの「尽くす」は、
「全力を尽くす」などの言い方があるように、
「出し切る・使い切る」という意味で使われています。
すなわち、
「細かいこと(説明)を出し切る」ということです。
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委曲を尽くすの類義語
続いて、「委曲を尽くす」の「類語」を紹介します。
【余(あま)すところなく】⇒残らず。すべて。
【具に(つぶさに)】⇒事細かく詳しい様子。詳細に。
【子細に(しさいに)】⇒事細かく。事細かい様子。
【克明に(こくめいに)】⇒細かい所まで念を入れる様子。
【一から十まで】⇒何から何まで。 最初から終わりまですべて。
【委細漏らさずに(いさいもらさずに)】⇒細かいことまで漏らさずに。
【微に入り細を穿つ(びにいりさいをうがつ)】⇒非常に細かいところまで行き届くこと。
【一部始終(いちびしじゅう)】⇒物事の最初から最後まで詳しい事情すべて。
「類語」の基本的なイメージとしては、
「事細かくする様子・詳しくする様子」を示すものとなります。
簡単な言葉で言えば、
「詳細に・細部に」などが分かりやすいでしょう。
ことわざだと「微に入り細を穿つ」、
四字熟語だと「一部始終」が近い意味の言葉だと言えます。
逆に、「対義語」としては、
「粗雑」「おざなり」などが挙げられます。
「粗雑」とは「大ざっぱでいい加減なこと」
「おざなり」とは「物事を適当に済ませること」です。
委曲を尽くすの英語訳
続いて、英語訳です。
「委曲を尽くす」は英語だと次のように言います。
「exhaustive(余すところのない・徹底的な)」
「give all the details of(~について詳述する)」
「exhaustive」は「徹底的な」という意味の形容詞です。
主に調査や探索、研究などに対して使いますが、
「説明」や「解説」などにも使うことができます。
また、「give all the details of」は直訳すると
「すべての詳細を与える」という意味です。
「相手にすべての詳細を与えること」なので、
「~について詳しく説明する」と訳すことができます。
「details」を「account」に変えて
「give a full account」などと言う場合もあります。
「account」には「説明・報告・記述」などの意味があるため、同じような意味となります。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
His explanation was exhaustive.(彼の説明は委曲を尽くすものであった。)
She gave all the details of the incident.(彼女はその事件について詳しく説明した。)
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委曲を尽くすの使い方・例文
では、最後に「委曲を尽くす」の使い方を
実際の例文で確認しておきましょう。
- 予算額について、その国会議員は委曲を尽くして説明した。
- 委曲を尽くした解説をして頂き、誠にありがとうございました。
- 部長の委曲を尽くした説明に、部下たちは声をそろえて納得した。
- 企業に問い合わせた所、後日担当者から委曲を尽くした説明があった。
- 今回の責任者の会見は、委曲を尽くしたものとは言えないだろう。
- 保険の商品説明は、委曲を尽くしたものでないと契約してもらえない。
「委曲を尽くした」という慣用句は、
後ろに「説明」や「解説」といった単語が来ることが多いです。
また、良い意味・悪い意味の両方で使われるのも特徴です。
良い意味の場合は、
「詳しくて丁寧な説明」「細かく行き届いた解説」といった内容で用いられます。
対して、悪い意味の場合は
「大ざっぱで分かりにくい説明」「いい加減な解説」などといった内容で用いられます。
後者の場合は、
「委曲を尽くしていない」のように否定文として使うと考えて下さい。
まとめ
以上、内容をまとめると下記のようになります。
「委曲を尽くす」=説明などを詳しく行い、細かい所まで行き届かせること。
「語源・由来」=「委曲(詳しいこと)を尽くす」という原義から。
「類義語」=「余すところなく・具に・子細に・微に入り細を穿つ・一部始終」など。
「英語訳」=「exhaustive」「give all the details of」
「委曲を尽くす」という表現は、一見すると使いにくそうですが実はそうではありません。
これを機会に様々な場面で使ってみてはいかがでしょうか?
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国語力アップ.com管理人
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