「イデオロギー」という言葉をご存知でしょうか?大学入試の現代文や政治経済、世界史など様々な分野で登場する言葉です。
ただ、普段からよく使われているにも関わらず、その意味を難しいと感じる人はとても多いようです。
そこで今回は、「イデオロギー」の意味や例文、英語などを含めなるべく簡単に分かりやすく解説しました。
イデオロギーの意味
まず、「イデオロギー」を辞書で引くと次のように書かれています。
【イデオロギー】
①政治・道徳・宗教・哲学・芸術などにおける、歴史的、社会的立場に制約された考え方。観念形態。
②一般に、思想傾向。特に、政治・社会思想。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「イデオロギー」とは簡単に言うと「政治や社会に対する考え方・思想」のことです。
例えば、以下のような考え方は「イデオロギー」の一部だと言えます。
- 「資本主義(しほんしゅぎ)」=自由に商売ができる世の中にしよう。
- 「社会主義(しゃかいしゅぎ)」=みんなを平等にする世の中にしよう。
- 「民主主義(みんしゅしゅぎ)」=国民全員が主役となり、国を作っていこう。
このように、政治や社会についてのある一定の考え方を「イデオロギー」と言うわけです。
一般的にイデオロギーは語尾に「主義」が付くものを指すことが多いです。
したがって、「資本主義」や「社会主義」などの考え方が分かれば、「イデオロギー」の意味も理解しやすくなると言えます。
ここで大事なポイントは、イデオロギーは全体的な考え方を指すということです。
分かりやすい例を挙げますと、次の3つは全体的な考え方を指しています。
- 「男女は平等に働くべきだ。」
- 「女性はもっと社会進出すべきだ。」
- 「子供の教育費を無料にすべきだ。」
どれも女性の労働問題や子供の教育問題など大きな枠組みを指しています。
一言で「考え」と言っても様々な種類のものがありますが、「イデオロギー」の場合はあくまで個々の問題ではなく物事を大きくとらえる考え方を指すのです。
なお、「イデオロギー」は場合によっては「道徳・宗教・哲学・芸術」などへの考えも含まれるケースがあります。例えば、以下のような考えです。
- 「道徳」⇒人は集団社会でどう生きればよいか?
- 「宗教」⇒私は神様や仏様はいると思っている。
- 「哲学」=人は何のために生きているのか考えるべきだ。
- 「芸術」=人は美についてもっと研究すべきだ。
このような考えも広い意味で「イデオロギー」に含まれます。ただし、基本的には「政治や社会に対する考え方」を指すと考えて問題ありません。
イデオロギーの語源・由来
「イデオロギー」は、フランス語の「イデオロジー(ideologie)」に由来する言葉です。
元々は、「イデア」+「ロゴス」が「イデオロジー」という形になったと言われています。「イデア(idea)」とは「観念」を意味し、「ロゴス(logos)」とは「思想」を意味します。
「観念(かんねん)」とは「頭の中で思い描いている自分だけの考え」、そして「思想」とは「政治的・社会的な考え方」のことです。
この「観念」+「思想」が合わさって「イデオロギー」という言葉になったのです。
その後、「イデオロギー」という言葉はドイツから日本に入ってきました。ドイツから入ってきたので、日本では「イデオロギー」と呼ばれています。
しかし、英語では「アイデオロジー(ideology)」、フランス語では「イデオロジー(idéologie)」とも呼ばれています。
このように、海外でも色々な言語で訳されており、翻訳に苦労している言葉です。
したがって、日本語の場合はシンプルに「イデオロギー」=「考え・思想」などと訳して問題ありません。
イデオロギーの使い方
「イデオロギー」は、主に次のような使い方をします。
イデオロギー的
「イデオロギー的」とは「思想的に・政治的に」という意味です。
例えば、政府が新たな政策を発表したとしましょう。
その政策を単なる経済的な理由などではなく、「政治的な考え」という観点からみたとします。
この場合は、「今回の政策をイデオロギー的に考えると~」などのように用いることができます。
名詞の後ろに「的」が付くと、形容詞としての意味になるのが一般的です。
イデオロギー闘争
「イデオロギー闘争」とは「お互いの思想の違いによる闘争」のことを意味します。
例えば、「資本主義」と「社会主義」はお互いが正反対同士の思想です。
そのため、歴史的にみても「どちらが正しいか」という主張争いが常に行われてきました。この思想の争いから戦争にも発展したほどです。
「闘(たたかう)う」という字が入っている通り、両者が激しく闘い合うような時に使います。
イデオロギー対立
「イデオロギー対立」とは「お互いの思想の違いによる対立」のことです。
「イデオロギー対立」では、それぞれの立場で自らの正しさを主張し、論争が繰り広げられます。
身近な例だと、自民党などの保守政党と共産党などの革新政党では、お互いの思想が全く異なります。
思想が異なる者同士の対立なので、お互いが混じり合うことは決してありません。この点が「イデオロギー対立」の特徴だと言えます。
イデオロギーの例文
「イデオロギー」という言葉は、実際の文章でどう使えばいいのでしょうか?例文で確認しておきましょう。
- A新聞の社説を読むと、特定のイデオロギー色が強いのが分かる。
- 資本主義は「個人の自由」というイデオロギーを元にした考え方である。
- 民主主義は独立した概念であり、偏ったイデオロギーの軸があるわけではない。
- 天皇制の意義や必要性について、お互いの陣営がイデオロギー闘争を起こした。
- 自民党のイデオロギーと立憲民主党のイデオロギーは、まさに正反対である。
- ボランティアの是非について、彼とは道徳的なイデオロギーの違いがある。
- イデオロギー的に考えても、我々と彼らの思想は一致している部分が多い。
「イデオロギー」を現代で使う場合は、政治的な文章で用いるケースが非常に多いです。特に、民主主義や資本主義などの是非を論じた文章ではよく登場します。
その他では、道徳についての考え方を説く場合にも用いられることがあります。例えば、例文6だとボランティアをすることについての道徳的な考えの違いを「イデオロギー」を用いて表しています。
ただ、いずれの場合も共通しているのは「イデオロギーは全体的な考え方を指す」ということです。逆に言えば、個人が考えているような狭い意味での特定の考えを指すような時はこの言葉は使いません。
最低でもある程度まとまった数の集団に受け入れられている考えでないと、それは「イデオロギー」とは言えないことになります。
イデオロギーの類義語・対義語
イデオロギーは次のような「類義語」で言い換えることができます。
基本的には「政治や社会に対する考え方」を表す言葉が類義語となります。
そこから派生して、「宗教に対する考え方」なども広い意味では類義語に含まれます。
他には、「主義」「信条」「観念」といった言葉で言い換えることも可能です。
なお、イデオロギーの「対義語」と呼ばれるものは厳密には存在しません。ただ、近い意味の「関連語」としては以下の言葉が挙げられます。
「イデオロギー」は「社会全体に対する考え方」という意味でした。
その「社会」と対を為す「個人」についての考え方という意味で「個人主義」がよく使われます。
イデオロギーの英語訳
「イデオロギー」は、英語だと「ideology」と言います。これはすでに説明した単語と一緒です。
英語の場合はカタカナで「イデオロギー」とそのまま訳すことが可能です。あるいは、日本語で「思想」「観念形態」などと訳しても良いでしょう。
例文だと、以下のような言い方をします。
It is the ideology of Communism.(それは共産主義のイデオロギーである。)
That incident greatly influenced the later ideology of Japan.(その事件は、後の日本の思想に大きな影響を与えた。)
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「イデオロギー」=政治や社会に対する考え方・思想。
「使い方」=「イデオロギー的」「イデオロギー闘争」「イデオロギー対立」など。
「類義語」=「政治思想・観念形態・理論体系・ドグマ」
「英語訳」=「ideology」
「イデオロギー」は、普段の文章でもよく使われている言葉です。これを機にぜひ正しい意味を理解して頂ければと思います。