「名詞」の種類はいくつかあります。その中でも特に混同しやすいのが、「普通名詞」と「固有名詞」です。
どちらも中学の国語で習う言葉ですが、違いが分かりにくいと感じる人も多いでしょう。
そこで本記事では、「普通名詞」と「固有名詞」の使い分けをなるべく簡単にわかりやすく解説しました。
普通名詞の意味
まずは、「普通名詞(ふつうめいし)」の意味からです。
「普通名詞」とは「一般的な物事の名称を表す単語」のことを表します。
【例】⇒「犬・山・イス・時計・家・ペン・パソコン」など。
上記の言葉はすべて「普通名詞」です。
例えば「犬」と聞けば、多くの人は「四つ足で毛と尻尾があり、ワンと吠える生き物」のような一般的なイメージがあります。
「犬」を見てこれは「猫」だなんて言う人はいないですよね。
柴犬だろうとチワワだろうとブルドックだろうと、私たちはそれを「犬」と呼びます。
また、「山」という言葉も「富士山」「エベレスト」「北岳」など多くの山がありますが、それらをまとめて「山」と呼びます。
「時計」に関しても同様です。「腕時計」「砂時計」など様々な時計がありますが、それらをひとくくりにして私たちは「時計」と呼びます。
このように、「同じ種類に属する物事を広く指すことのできる名詞」を「普通名詞」と言うのです。
「普通名詞」は「普通の名詞」と書くので、「一般的な名前が付いた品詞」と考えれば分かりやすいかと思います。名詞の中でも比較的使用が多いものです。
普段使われている名詞の多くが、「普通名詞」だと考えて問題ありません。
その他には、具体的な形のない一般的な名称も「普通名詞」に含まれます。
【例】⇒「自由・利益・運動・時間・知識・メンタル」など。
固有名詞の意味
次に、「固有名詞(こゆうめいし)」です。
「固有名詞」とは「ただ一つしかないものの名称を表す単語」のことを表します。
「固有名詞」は、人の名前・地名・国名・書名・建造物などを指すことが多いです。
【例】⇒「野口英世・東京・イギリス・万葉集・エッフェル塔」など。
上記の言葉はいずれも「固有名詞」です。
例えば、「野口英世」という人物は歴史上の人物でただ一人しかいません。
「東京」も日本にだけ存在する都市名、「イギリス」も世界に1つだけある国名です。
さらに、「万葉集」も日本固有の作品名ですし、「エッフェル塔」も世界に1つしかない建造物です。
いずれの単語も他に同じものは存在しません。
このように、世の中にただ1つしかない名称を表す単語を「固有名詞」と言うのです。
「固有」とは「他に同じものはない・それ以外にはない」という意味です。
したがって、他と区別されていてそれだけしかない名称を「固有名詞」と定義しているのです。
その他の「固有名詞」としては、曲名や団体名、企業の商品名、チーム名、年号なども含まれます。
【例】⇒「キセキ・自民党・カローラ・読売ジャイアンツ・令和」など。
普通名詞と固有名詞の違い
ここまでの内容を整理すると、
「普通名詞」=一般的な物事の名称を表す単語。
「固有名詞」=ただ一つしかないものの名称を表す単語。
ということでした。
つまり、両者の違いは「一般的な名称を表すのが普通名詞、1つしかない名称を表すのが固有名詞」ということです。
「普通名詞」は、一般的な単語を表します。
「山」や「川」「スポーツ」など、同じ種類に属する事物に当てはまる名称を表すのが「普通名詞」です。
一方で、「固有名詞」の方は世の中にただ1つしかない単語を表します。
したがって、こちらは同じ種類の事物の中からそれ以外には存在しない区別された名称を指すのです。
分かりやすい例で比較してみると、例えば「犬」は普通名詞です。
そして、「犬」の特徴を表す「小型犬」や「大型犬」も普通名詞です。
さらに、「犬」の種類を表す「柴犬」「土佐犬」「ポメラニアン」なども普通名詞です。
しかし、自分が飼っている柴犬に「ポチ」という名前を付けたら、それは「固有名詞」となるのです。
「人」に当てはめてみても同様です。
「人」は普通名詞、「男」も「女」も普通名詞です。さらに「学生」「主婦」「社会人」なども普通名詞です。
ところが、「山田太郎」となるとそこで初めて「固有名詞」となるのです。
ここでもしも「山田太郎」という同姓同名の人物がいた場合はどうでしょうか?
その場合でも、「山田太郎」はまぎれもなく「固有名詞」だと言えます。
なぜなら、名前は同じでも顔や身長などの見た目、性格・趣味などは異なるものだからです。
「山田太郎」という人物は日本に多くいるかもしれませんが、見た目と性格まですべて同じの「山田太郎」などはいないですよね。
よって、人の名前は「固有名詞」になるのです。
注意点としては、「種類」は固有名詞ではないという点です。
「犬」の中の「柴犬」であったり、「人」の中の「学生」などは単なる種類なので普通名詞となります。
以上の事から考えますと、「普通名詞を分類していった結果、最後に残されるのが固有名詞」と言うことができます。
別の言い方をするなら、「固有名詞」とは「これ以上分類することができない単語」ということです。
確認問題
では、今までの内容を理解できたか確認しておきましょう。以下に簡単な問題を用意しました。
次の名詞は「普通名詞」と「固有名詞」のどちらか?
「普通名詞」であれば(A)、「固有名詞」であれば(B)を選択せよ。
①桜 ②みかん ③大阪駅 ④テレビ ⑤山田花子 ⑥法隆寺
⑦学校 ⑧太平洋 ⑨論語 ⑩自由 ⑪利根川 ⑫マクドナルド
①⇒(A)②⇒(A)③⇒(B)④⇒(A)⑤⇒(B)⑥⇒(B)
⑦⇒(A)⑧⇒(B)⑨⇒(B)⑩⇒(A)⑪⇒(B)⑫⇒(B)
「普通名詞」は、一般的な名称を指す言葉ということでした。上記の問題だと、「桜」「みかん」「テレビ」「学校」などが該当します。
一方で、それ以外の選択肢は「固有名詞」です。③は「駅名」、⑤は「人名」、⑥は「建造物の名前」、⑧は「海の名前」、⑨は「書名」、⑪は「川の名前」、⑫は「企業名」です。
次の名詞の中から「固有名詞」をすべて選びなさい。
①「国・外国・フランス・海・上海・飛行機・アルプス山脈」
②「野球・捕手・阪神・スタンド・東京ドーム・ホームラン・王貞治」
③「日本・漫画・アニメ・作者・ドラえもん・鬼滅の刃」
①「フランス・上海・アルプス山脈」
②「阪神・東京ドーム・王貞治」
③「日本・ドラえもん・鬼滅の刃」
補足すると、「上海(しゃんはい)」は中国の都市の名前、「アルプス山脈」は「ヨーロッパ中部にある山脈」を指します。
「阪神」はプロ野球のチーム名、「東京ドーム」は「建造物」、「王貞治」は「人物名」です。
「ドラえもん」と「鬼滅の刃」は「作品名(書名)」です。
次の文中から名詞を抜き出し、その種類も答えなさい。
①友達とハワイへ行き、夜までたっぷりと遊んだ。
②日本の歴史、特に織田信長について熱く語った。
③自民党の岸田文雄が、初めて首相となった。
④ノートルダム大聖堂は、パリにある有名な建物である。
⑤マイクロソフトのビルゲイツは、Windowを開発した。
①「友達」⇒「普通名詞」「ハワイ」⇒「固有名詞」「夜」⇒「普通名詞」
②「日本」⇒「固有名詞」「歴史」⇒「普通名詞」「織田信長」⇒「固有名詞」
③「自民党」⇒「固有名詞」「岸田文雄」⇒「固有名詞」「首相」⇒「普通名詞」
④「ノートルダム大聖堂」⇒「固有名詞」「パリ」⇒「固有名詞」「建物」⇒「普通名詞」
⑤「マイクロソフト」⇒「固有名詞」「ビルゲイツ」⇒「固有名詞」「Window」⇒「固有名詞」
「自民党」は団体の名前なので固有名詞となります。「ノートルダム大聖堂」はパリにしかない建造物です。「マイクロソフト」は「会社名」、「Windows」は「商品名」です。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「普通名詞」=一般的な物事の名称を表す単語。
「固有名詞」=ただ一つしかないものの名称を表す単語。
「両者の関係性」=普通名詞を分類していった結果、最後に残されるのが固有名詞。
今回は、「普通名詞」と「固有名詞」について解説しました。ただ、「名詞」の種類は他にもたくさんあります。その他の名詞に関しては以下の記事を参照してください。