「包括的」という言葉は、主にビジネスシーンや政治ニュースなどにおいて使われています。例えば、「包括的な交渉をする」「包括的な条約を結ぶ」といった使い方です。
ただ、この言葉は「総合的」「全体的」など似たような語が多いため違いが分かりにくいです。そこで今回は「包括的」の意味や類義語・対義語などをわかりやすく解説しました。
包括的の意味
まず、「包括的」を辞書で引くと次のように書かれています。
【包括的(ほうかつてき)】
⇒すべてをひっくるめているさま。総括的。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「包括的」とは「すべてをひっくるめているさま」という意味です。
まず、漢字の成り立ちを確認しておくと「包括」の「包」は、「包容」「包含」「小包」などがあるように「何かを包(つつ)む」という意味があります。
そして、「括」は「概括」「一括」などがあるように「ひとまとめにする」という意味があります。
すなわち、「包括」という言葉は「何かを包んでひとまとめにする様子」を表すことになります。
イメージとしては、「餃子の皮」を想像すると分かりやすいでしょう。餃子の皮は、野菜や肉など色々な具材が入ったものをすべて包み込みます。
このように、何かを包み込んで一つにまとめる様子を「包括的」と言うのです。
包括的の使い方
「包括的」という言葉は実際にどう使えばよいのでしょうか?ここでは代表的な使い方を3つ挙げました。
包括的な評価
「包括的な評価」とは「全体を見る評価」という意味です。例えば、Aさんという社員がいたとします。
Aさんの特徴は、
- 責任力は高い
- 実行力はある
- 勤務態度はまじめ
- 協調性はまずまず
- 企画力は不足気味
だったとします。
この時に、「Aさんの評価は、包括的に見れば良い」などと言うわけです。
つまり、一つの要素を見るのではなく、あらゆる要素を見て評価することを「包括的な評価」と言うのです。
包括的な議論
「包括的な議論」とは「全ての内容や意見を含んだ議論」と考えると分かりやすいです。
例えば、「人口問題」について各国の代表が意見を主張したとしましょう。
- 「日本」⇒「少子化を改善させたい。」
- 「中国」⇒「人口増加を抑えたい。」
- 「アメリカ」⇒「人口を維持したい。」
3者ともそれぞれの意見を持っています。そこで、世界各国で起こっている人口問題を国連でまとめて議論することになりました。
このような場面では、「各国の人口問題をまとめて話し合う」という意味で「人口問題を包括的に議論する」などと言われることがあります。
つまり、「包括的な議論」とは「様々な意見や考えを重ね合わせた上で行う議論」という意味になります。
包括的核実験禁止条約
「包括的核実験禁止条約」は、政治や経済のニュースでよく出てくる言葉です。
この場合の「包括的」とは、「あらゆる空間(陸・海・空)を含む」という意味です。
「核実験」というのは、元々は部分的な場所では許可されていました。
例えば、「地下核実験」と言って、地表面化の下であれば核実験を行っても許されていたのです。しかし、それでは不十分ということで1996年に国連で採択が決定しました。
その採択が、「地球のあらゆる所で核実験を禁止する」という内容です。あらゆる場所をひっくるめて禁止するので、「包括的核実験禁止条約」と言います。
包括的の類義語・言い換え
「包括的」の類義語には、次のような言葉があります。
どれも似たような意味を持っていますが、微妙に意味が異なります。それぞれの違いを簡単に整理しておきましょう。
包括的と総括的の違い
「総括的」とは「全体をひとまとめにするさま」という意味です。
「包括的」と「総括的」は、辞書によっては同じように記述されているので、同義語と考える人も多いかもしれません。しかし、厳密に言うとこの2つは意味が異なります。
「総括」には全体を一つにまとめるという意味はありますが、そこに「結論を出す」というニュアンスまで含まれます。
例えば、「総括的な議論を進める」であれば、「皆で全体的に話し合い、最終的な結論を出すような議論を進める」という意味になります。
すなわち、全体をひっくるめてなおかつ結論を出したり、締めくくったりする意味を持つ言葉が「総括的」ということです。
「包括的」の方は、締めくくるという意味までは含まれていません。
包括的と総合的の違い
「総合的」とは「個々の物事を一つにまとめるさま」という意味です。
「総合的」の場合は、全く別々の要素を一つにまとめるような時に使います。
例えば、スポーツや音楽、勉学、料理など全く別ジャンルのものを一つにするような時に「総合的」を使うのです。
対して、「包括」の方は「別々」という条件までは指定されません。
「包括」は場合によっては似たような要素をまとめる時にも使います。先ほど紹介した「包括的核実験禁止条約」などがこれに当てはまります。
陸・海・空という場所は異なりますが、同じ核実験という要素を一つに含めているので、「総合的」ではなく「包括的」を使うのです。
全体的・全般的との違い
「全体的」や「全般的」は、物事の全体をとらえる様子を表す時に使います。
例えば、「全体的にみて良い一年だった」「科学に対する全般的な知識がある」のような使い方です。
ただし、どちらも一つにまとめたり一つにひっくるめたりするような意味までは含まれていません。
あくまで全体に及んでいるだけです。この点が、「包括的」との違いと言えます。
また、「全体的」と「全般的」の違いですが、「全般的」の方が広い範囲に及ぶような場合に使われます。
「全体的」も物事の全体をとらえる様子を表しますが、こちらは「一つのブロック」として捉えるような時に使います。
「全般的」の方は、ブロックのような固定的なイメージではなく、すべての範囲に及ぶようなイメージとなります。
包括的の対義語
一方で、「包括的」の「対義語」は以下のような言葉が挙げられます。
いずれの言葉も、「全体ではなく、個々の要素に注目している点」が共通しています。
その他では、「排他的」「局所的」なども反対語と呼べるでしょう。
「排他的(はいたてき)」とは「自分や仲間以外の者をしりぞけるさま」という意味です。すべての要素を包み込む「包括的」とは正反対の言葉です。
また、「局所的(きょくしょてき)」とは「全体の中の限られた部分」という意味です。主に「局所的に雨が降る」などのように使います。
包括的の例文
最後に、「包括的」の使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
- 理科は物理や化学・地学などを含んだ包括的な言葉である。
- 一人一人に目線を傾けて、包括的な解決策を探っていきます。
- 文化とは、人間が作り出した精神的なものを包括的に指す。
- アベノミクスは、政治・経済・成長を合わせた包括的な政策だ。
- 包括的な同意を行い、各国との調整を進めていくようにします。
- 包括的に説明すれば、相手も話の内容が理解しやすくなるだろう。
- 今回の取り決めにより、お互いの会社で包括提携を結ぶことにした。
最後の「包括提携」とは「部分的な提携ではなく、全体的に提携する」という意味です。
「提携」とは簡単に言うと「会社間などで交わす約束事」を表します。主に会社同士が協力して、より良い商品やサービスを作る際に使われます。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「包括的」=全てをひっくるめているさま。ひとまとめにしたさま。
「使い方」=「包括的な評価」「包括的な議論」「包括的核実験禁止条約」など。
「類義語」=「総括的・総合的・全体的・全般的・一通り・全てにおいて」
「対義語」=「個別的・部分的・限定的・集中的・特定的」など。
「包括的」という言葉は、似たような類義語があるため混同しやすいです。これを機に、ぜひ正しい意味を理解して頂ければと思います。