宮司 神主 違い 禰宜 意味 使い分け

神社にお参りしたときに、「宮司」や「神主」という名前をよく聞きます。さらに、場合によっては「禰宜(ねぎ)」という言葉を聞くこともあります。

これらの言葉はどのような違いを持っているのでしょうか?本記事では、「宮司」と「神主」の違い、さらに「禰宜」についても解説しました。

宮司・神主とは

 

まず最初に、それぞれの意味を辞書で引いてみます。

【宮司(ぐうじ)】

神社に仕え、祭祀 (さいし)・造営・庶務などをつかさどる者の長。

戦前の神官・神職の職階の一。明治4年(1871)の神官職員規則では、神宮および官・国幣社だけに用いられた職名。

【神主(かんぬし)】

神社に奉仕して、神事に従うことを業としている人。神官。神職。また、その長。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

宮司」とは「神社に仕えて祭司、造営、庶務などを司る長」のことを指します。

そして、「神主」とは「神社に仕えて神事に従う者全般」のことを指します。

つまり、神主の中でもさらに役職が上の人のことを「宮司」と呼ぶわけです。

会社で例えるなら、「神主」が社員全般を指し、「宮司」がトップである社長を指すようなイメージです。

一般に、「神社」の職位は次のようにランク付けされています。

①「宮司(ぐうじ)」⇒神社における最高責任者。

②「権宮司(ごんぐうじ)」⇒宮司の次の責任者。宮司を補佐する役割を行う。

③「禰宜(ねぎ)」⇒宮司、権宮司の補佐を行い、現場の取りまとめを行う。

④「権禰宜(ごんねぎ)」⇒神社における一般職員。

冒頭で触れた「禰宜」は、上から3番目の職位に位置しています。

「禰宜」の語源は「和ませる」の古語である「ねぐ」から来ており、「神の心を和ませ、その加護を願う」という意味を表しています。

この事から、「禰宜」は、古代において「神に祈請を行う者・祭祀に専従する者」などを指していました。現在の役割である補佐や現場の取りまとめなどの業務は、ここから派生したものだと言われています。

では、大まかな違いが分かった所で両者の意味を詳しくみていきたいと思います。

宮司の意味を詳しく

 

宮司」とは「その神社における最高責任者」を意味します。

「宮司」は神社における責任者なので、原則としてその神社には1人しかいません。逆に言えば、どんな神社であっても必ず1人の宮司が存在するということです。

ただし、各神社にいる宮司がその神社だけに常駐しているというわけではありません。

日本全国にはおよそ8万社ほどの神社がありますが、その一方で宮司の方は約1万人ほどしかいないとされています。

つまり、足りない分の7万社ほどの神社にいる宮司は、他の神社の宮司との兼務ということです。

意外に思うかもしれませんが、大半の宮司は一カ所の神社に常にいるというわけではなく、複数の神社で宮司を兼務しているのです。

神主の意味を詳しく

 

神主」とは「神社に仕えて従事する者全般」のことを指します。

実は「神主」という名前は正式名称ではありません。本来は、神社に仕えている者のことは、総称して「神職(しんしょく)」と呼びます。

これは「お坊さん」という呼び名が正式名称でないのと同様です。私たちはお寺に勤めている人を「お坊さん」とよく呼びますが、実際には「住職」「僧侶」などが正式名称です。

これと同様で本来は「神主」ではなく、「神職」と呼ぶのが正しいのです。

元々、「神職」という言葉は神社神道の世界で広く用いられていました。「神職」は、文字通り職業を表す名前として使われていたのです。

その後、「神社の主」という意味で次第に「神主」の方も使われるようになったという経緯があります。

したがって、「神主」という言葉は本来の語源から考えても役職名ではなく職業名を指していることが分かるかと思います。

宮司・神主の違い

宮司 神主 違いは

以上の事から考えますと、両者の違いは次のように定義することができます。

宮司」=神社における最高責任者で、役職名を指す。

神主」=神社に仕える者全般で、職業名を指す。

「宮司」は、神職階級で最も高い役職を意味します。簡単に言えば、その神社で最も偉い人です。

したがって、その神社で行うことは基本的に「宮司」が責任を持つことになります。

対して、「神主」の方は役職名ではなく職業名を指した言葉です。こちらは神社に仕える者全般を指すことになります。

ただ、日本全国にある神社のほとんどは中小規模なので、「神主(神職)が一人の神社」というのが現状としては多いです。

そのため、各神社にいる唯一の神職は、おのずと「宮司」ということになります

現在、世の中の大半の人が「宮司」と「神主」を混同しているのは、日本全国のこうした神社の構造的な問題が理由だと考えられます。

つまり、神主でもあり宮司でもある人がかなりの数で存在しているためです。

何らかの理由で権宮司や禰宜がトップを務める場合もありますが、基本的には宮司が神主として務める場合が多いのです。

なお、似たような言葉で「神官」がありますが、「神官」とは「神という概念がある国において、その神に仕える人」のことです。

特に国などから公的に任命された神職のことを「神官」と言います。ただ、「神官」は現代では神道において使う言葉ではありません

かつての日本では国家神道を唱え、神社は公的な機関である政府が管理していました。その証拠に、戦前の日本では神社で神に仕えて奉仕する人のことを「神官」と呼んでいた歴史があります。

ところが、1945年の戦争で日本が敗れると、国家神道は廃止されることとなります。そして、神社が国家の管理下からなくなり、「神官」という呼び名も自然とされなくなりました。

このような経緯もあり、現在では「神官」という言葉は使われていないのです。

名前が似ているのでややこしいですが、宮司や神主は自由職なので「神官」ではありません。そのため、神職を「神官」と言うのは正式には誤りということになります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

宮司」=神社に仕えて祭司、造営、庶務などを司る長。神社の最高責任者。

神主」=神社に仕えて神事に従うこと者全般。正式名称は「神職」。

禰宜(ねぎ)」=宮司、権宮司の補佐を行い、現場のとりまとめを行う。

「宮司」や「禰宜」などは「役職名」です。対して、「神主」は元は「神職」と書くように「職業名」のことだと覚えておきましょう。