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のれん すだれ 違い 暖簾 簾 使い分け

 

のれん」と「すだれ」は、家具やインテリアなどに使われている言葉です。

この「のれん」ですが、漢字だと「暖簾」と書きます。そして、「すだれ」の方は単体で「」と書きます。

同じ漢字が使われていますが、両者の違いはどこにあるのでしょうか?本記事では、「のれん」と「すだれ」の使い分けについて詳しく解説しました。

のれんとすだれの違い

 

まず、それぞれの意味を簡潔にまとめると、以下のようになります。

のれん」=日よけ・目隠し・風よけなどの目的で店の出入り口などにかけておく布。

すだれ」=日よけ・目隠し・虫よけなどの目的で、窓の外や軒先にかけておく竹や葦(あし)。

最も分かりやすい違いは、「材質」です。

「のれん」の方は布でできており、「すだれ」の方は竹や葦によってできています。

材質が異なるので、両者の見た目も必然的に異なるということです。

また、「のれん」の方は漢字で「暖簾」と書くように、元は冬に暖房効果を得るために作られたという経緯があります。

対して、「すだれ」の方は元は「涼簾(りょうれん)」と書き、夏に涼しい風を通すために作られたという経緯があります。

つまり、作られるようになった目的が全く異なるということです。その辺の理由も交え、両者の違いを詳しく説明していきたいと思います。

のれんの意味を詳しく

のれん 意味 くわしく

 

まず、「のれん」の方を辞書で引いてみます。

【のれん(暖簾)】

《「のんれん」「のうれん」の音変化。もと、禅家で簾 (す)のすきまをおおい風よけとする布の帳 (とばり) をいった》

①商家で屋号・店名などをしるし、軒先や店の出入り口にかけておく布。また、それに似た、室内の仕切り・装飾などに用いる布。のんれん。のうれん。

②店の信用・格式。「暖簾に傷がつく」

③多年にわたる営業から生じる無形の経済的利益。得意先・仕入れ先関係、営業上の秘訣、信用、名声など。法律で権利とみなされることがある。

④「暖簾名 (のれんな)」の略。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

のれん(暖簾)」は、元は「のうれん」が変化したもので、「店の出入り口や軒先にかけておく布」として使われていました。

その歴史は古く、平安時代頃からはすでに「のれん」が存在していたと言われています。

当時の用途としては、日よけ・目隠し・風よけなどがありましたが、一番の目的は寒さをしのぐための風よけでした。

その後、鎌倉時代や室町時代になると、「のれん」は屋号や商標、店名などとして用いられるようになりました。

つまり、そのお店の「看板」としての役割ということです。

当時は、文字が読めない人がまだ多くいたので、お店が営業していることが一目でわかる「のれん」は、お客に対して宣伝するという意味で大変便利だったのです。

さらに現在ではそこから派生して、企業が有する無形の価値としても使われるようになっています。

これは企業が持っているノウハウなど形のない価値を、会計上の価値として計上したものです。

簡単に言えば、「企業が持っている目に見えない価値のこと」だと考えて下さい。

このように、元は風よけ目的であったものが、次第に店の看板や無形の価値など様々な意味として使われるようになったのが、「のれん」ということです。

すだれの意味を詳しく

すだれ 意味 詳しく

 

続いて、「すだれ」の意味も辞書で引いてみます。

【すだれ(簾)】

①《「簀垂 (すだ)れ」の意》細く割った竹やアシなどを横に並べ、糸で編み連ねたもの。部屋の隔てや日よけ・目隠しなどに掛けて垂らす。す。

②せいろうなどの底に敷いたり、海苔巻(のりま)きなどの巻き物料理に使う簀。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

すだれ(簾)」とは「窓の外や軒先にかけておく竹や葦(あし)」のことです。

すだれの歴史は「のれん」よりもさらに古く、奈良時代の万葉集にはその記録が確認されています。

主な目的は、夏の強い日差しを避けたり風を通しやすくしたりといったことです。

風を通しやすくするために、布ではなく細く割った竹や葦を編んで用いていました。

特に、夏の西日を防ぐための「すだれ」は、夏の風物詩として重宝されていたと言われています。

クーラーや扇風機などがない時代ですので、「すだれ」をうまく使うことにより、少しでも室内で快適に過ごせるようにしていたのです。

「すだれ」は、横方向に垂らす形の「掛け簾」や、縦方向に立て掛ける形の「立て簾(たてす)」など種類も豊富です。

ただ、その用途としては、「日よけ」「目隠し」「虫よけ」など歴史的に見ても使い道がほぼ限定されています。

「のれん」のように使い方が大きく変化したり、意味が変わっていったりということはありません。あくまで、夏の暑さをしのぐために使われていました。

そのため、「すだれ」のことを「涼簾(りょうれん)」とも言っていたのです。

のれんとすだれの使い分け

のれん すだれ 使い分けは

 

以上の事から考えますと、両者の使い分けは次のように定義できます。

のれん」=主に暖房目的で使う。その他、看板やノウハウにも使う。

すだれ」=主に冷房目的で使う。看板やノウハウには使わない。

 

「のれん」の方は、幅広い意味を持った言葉です。お店の看板や商標、屋号、無形価値など様々な対象に使うことができます。

一方で、「すだれ」の方は「のれん」に比べて狭い意味を持った言葉です。こちらは看板や屋号などに使うことはせず、無形価値などに使うことももちろんできません。

したがって、意味の範囲の大きさで言えば、「のれん」>「すだれ」と言うこともできます。

どちらも、「日よけ」や「目隠し」といった目的は共通しています。

しかし、「のれん」は「風を通しにくくする」という暖房目的で使うのに対し、「すだれ」は「風を通しやすくする」という冷房目的で使うという大きな違いがあるのです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

のれん」=日よけ・目隠しなどの目的で店の出入り口などにかけておく布。

すだれ」=日よけ・目隠しなどの目的で、窓の外や軒先にかけておく竹や葦。

違い」=「のれん」は暖房目的で使い、「すだれ」は冷房目的で使う。「のれん」は意味の範囲が広く、屋号や店名、無形の価値などの意味としても使える。

元々、冬に使われていた「のれん」は現在では様々な用途として用いられています。対して、「すだれ」の方は意味の範囲は狭いですが、現在でも夏になると窓の外、建物の外などで用いられています。どちらもよく使われる言葉なので、この機会に違いを整理しておきましょう。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。