「語源」と「由来」は言葉の意味を調べる際に、辞典などに記されているものです。特にことわざや慣用句、四字熟語などの説明には大抵書かれています。
ただ、どちらも似たような使い方がされているため、違いが分かりにくいです。そこで今回は、「語源」と「由来」の違いについて例を交えてわかりやすく解説しました。
語源の意味
まずは、「語源」の意味からです。
【語源(ごげん)】
⇒個々の単語の本来の形や意味。また、個々の単語の成立の由来や起源。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「語源」とは「個々の単語の本来の形や意味」のことを表します。
例えば、「一石二鳥」という四字熟語を例にすると、「一石二鳥」とは「一つのことをして、二つの利益を得ること」という意味です。
主に一つの行為や苦労で、二つの目的を同時に果たすような際に使われます。
「一石二鳥」の語源は、「一つの石を投げ、同時に二羽の鳥を捕まえること」から来ています。漢字の通り、「一つの石と二羽の鳥」と書くことからも分かるかと思います。
このように、「ある単語がその形や意味で使われるようになった元の形・意味」のことを「語源」と呼ぶわけです。
言葉というのは、時代に応じて少しずつ意味や使用例が変化してきています。
そのため、今に伝わる語の元の意味は何だったのかを調べると、出てきたその元の意味が語源となることが多いです。
由来の意味
続いて、「由来」の意味です。
【由来(ゆらい)】
①物事がそれを起源とするところ。また、物事が今までたどってきた経過。来歴。由緒。いわれ。「伝説に―する地名」「神社の―を調べる」
②[副]昔からそのようであるさま。もともと。元来。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「由来」とは「物事がそれを起源とするところ・物事が今までたどってきた経過」などを表します。
例えば、「他山の石」ということわざを例にすると、「他山の石」とは「他人の誤った行いでも、自分のためになること」という意味です。
「他山の石」の由来は、中国最古の詩集である『詩経(しきょう)』にあります。
「詩経」の中に「他山の石を以て玉を攻むべし」という一文があり、これを訳すと「よその山から出た質の悪い石でも、自分の玉を磨くのに役立てられる」となります。
転じて、「他人の誤った行いでも自分の助けとなること」という意味で現在は使われているわけです。
このように、「由来」とは「物事がいつ・どこで・何から起こり、どのようにして現在まで伝えられてきたか?」といった経緯を示します。
簡単に言えば、「由来」=「歴史」のことだと考えても構いません。
一般にことわざや故事成語などの由来は、最初に何か事件やいわれがあり、その出来事を元にして出来上がります。
そのため、多くの人々に伝えられるような書物などにその具体的な内容が記されている場合が多いです。
語源と由来の違い
ここまでの内容を整理すると、
「語源」=ある単語がその形や意味で使われるようになった元の形・意味。
「由来」=物事がいつ・どこで・何から起こり、どのようにして現在まで伝えられてきたかという経緯。歴史。
ということでした。
つまり、「語源」は単語の元の形を表し、「由来」は今までの経緯や歴史を表すことになります。
同じ例で比較しますと、例えば「朝令暮改」は「命令や方針がすぐに変わってしまうこと」を表した四字熟語です。
この場合、「語源」は「朝に出した命令を、夕暮れには改めること」となります。
一方で、「由来」の場合は中国漢代の書物である『漢書』の中の「勤苦如此、尚復水旱之災、急政暴賦、賦斂不時、朝令而暮改。」という一文になります。
元々、「朝令暮改」は漢の時代における農民の苦しさを伝える話の中で使われたのが始まりでした。
当時の農民は、税金をすぐに求められたり、朝出された命令が夜にすぐ変更されたり、といったことをされていました。
このような当時の出来事や経緯、簡単な歴史などを表したものが「由来」となるのです。
一般に、ことわざや慣用句、四字熟語などは、「語源」と「由来」が両方あるものが多いです。ただし、必ずしも両方あるとは限りません。
「語源」だけの四字熟語、「由来」だけの慣用句なども存在します。
また、どちらも確実な根拠がない場合もあり、その場合は現在における有力な説としてその内容が記されることになります。
語源と由来の例文
最後に、「語源」と「由来」の使い方を例文で紹介しておきます。
【語源の使い方】
- 個々の単語の一番はじめの音形や意味を表すものを、一般に語源と呼ぶ。
- 太陽が南中する時刻を「午の正刻」と呼ぶが、これが現代の12時を表す「正午」の語源である。
- 正しい語源が判明していても、誤った説のほうが広く世の中に流布していることがある。
- 語源学は単語の起源を研究する言語学の一部門であり、古代ギリシャから存在していた。
- 今日のような語源学の研究は、19世紀頃から本格的に始まるようになった。
【由来の使い方】
- 哲学という学問は、日本でなく古代ギリシャに由来するものである。
- 「石の上にも三年」は、古代インドの故事に由来することわざと言われている。
- 彼女は自分の名前の由来を知らなかったので、両親に聞いてみたようだ。
- 今回起こった事件は、彼自身の育った環境や性格に由来すると思われる。
- いずれの説も確かなものとは言えないため、正確な由来ははっきりとはしていない。
「語源」は、その単語が作られる元になった形を意味します。そのため、基本的には、単語(言葉)を対象とするような際に使われます。
一方で、「由来」は単語ではなく物事がどのように起こったか?という経緯や歴史を意味します。したがって、こちらは人の性格や環境といった対象にも使われることになります。
「由来」の方が「語源」よりも対象が広いため、様々な文脈の中で用いられるのが特徴です。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「語源」=個々の単語の本来の形や意味。
「由来」=物事がそれを起源とするところ・物事が今までたどってきた経過。
「違い」=「語源」は単語の元の形を表し、「由来」は今までの経緯や歴史を表す。
「語源」と「由来」の違いを理解しておくと、言葉の意味を調べる際に役に立ちます。これを機に、両者の正しい定義を理解して頂ければと思います。