『現代日本の開化』は、夏目漱石による作品です。高校現代文の教科書にも載せられています。
ただ、本文を読むとその内容や主張などが分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『現代日本の開化』のあらすじや200字要約、テスト対策などを簡単に解説しました。
『現代日本の開化』のあらすじ
本文は、大きく分けて4つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①西洋の開化は内発的であって、日本の現代の開化は外発的である。日本の開化は、今まで内発的に展開してきたのが、急に自己本位の能力を失って外から無理やり押されて、外発的に発展したものである。これにより、我々はやむをえず不自然な発展を余儀なくされることになった。
②本来、開化は内発的に進むものなので、外発的開化は人間の心理にも影響を及ぼす。人間の心理は、明と暗の変化を繰り返すことにより内発的に波のように進んでいくものである。だが、それは個人の意識に限らず、人間活力の発展の経路である開化においても本来、内発的に波動を描いて推移していくと考えられる。開化の推移は、内発的でなければ嘘である。
③日本の開化は、西洋の激しい潮流に押された状態にあるため、人々は空虚の感を抱き、どこかに不満と不安の念を抱かなければならない。現代日本の開化は内発的ではなく、外発的である。それなのに、あたかも内発的であるかのような顔をして得意でいるのはよろしくない。これは実体を伴わない皮相上滑りの開化である。
④皮相上滑りの開化は問題が多い。だからといって、ただ上滑りの開化をやめるのでは、西洋の開化に追いつくために想像を絶する活力を要し、神経衰弱になってしまうだろう。できるだけ神経衰弱にかからない程度に、内発的に変化していくことが一つの解決策である。
『現代日本の開化』の要約&本文解説
この作品は、明治44年(1911年)に夏目漱石が和歌山で行った講演を記録したものです。つまり、「書き言葉」ではなく「話し言葉」のテキストということになります。
当時の日本は、日清戦争そして日露戦争にも勝利し、言わば絶頂の時期です。ところが、今のようにネットやSNSなどの情報網がない時代ですから、どうしても世界の中の日本は見えてきません。
そんな状況の中で、漱石は自身がロンドンへ留学した経験をもとに、現在の日本、そしてこれからの日本について述べた内容となっています。
まず、本文を理解する上で「内発的」と「外発的」の意味を理解することが重要となります。
「内発的」とは「外部からの刺激ではなく、内部から自然と起こるさま」、そして「外発的」とは「外部からの刺激によって、人為的に起こるさま」という意味です。
例えば、自分の将来なりたい職業があったとして、どうすればその職業に就けるのかを調べ上げ、図書館で調べ物をしました。そして、そのためにはまず希望の大学に受かることが必要だと考え、自ら勉強を始めることにしました。
この場合、自ら内的な要求が自然に出ているため「内発的」だと言えます。
一方で、自分の将来なりたい職業などもなく、毎日嫌々勉強をしている人がいたとします。興味のない内容を覚えるのはつらいですが、周りの親や先生などに指摘されたので、無理やり受験勉強を始めることにしました。
この場合、外からの力によってやむを得ず行動しているので「外発的」だと言えます。
この例と同様に、日本の西洋化というのも他国の無理な力による外発的な開化であったため、漱石はその事を実態の伴わないうわべだけの開化だと批判しているわけです。
最終的に漱石は、「日本の将来のためには、神経衰弱にかからない程度に内発的に変化していくことが必要である」と述べています。これはつまり、日本は精神的に疲弊しない程度にこつこつと頑張るしかない、外発的なものを内発的なものに少しずつ変えていくしかない、ということです。
ポイントとしては、江戸時代から明治の近代国家への移行において、漱石が日本の開化をどのように捉えていたかを読み取ることです。この作品が書かれた当時と今では時代背景が大きく異なるため、当時の日本がどのような状況にあったかを考えることも重要となります。
『現代日本の開化』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①チョウゼンとした態度。
②セッショクを避ける。
③成長をヨギなくされる。
④同じ作業をクり返す。
⑤魚をカイボウする。
⑥タイクツな仕事をこなす。
⑦時代のチョウリュウに乗る。
⑧キョギの報告を受ける。
⑨ハッコウ食品を食べる。
⑩コウマンな人気俳優。
「内発的」⇒内から自然に出て、発展すること。
「外発的」⇒外からの他の力で、やむをえず一種の形式を取ること。
まとめ
以上、今回は『現代日本の開化』について解説しました。ぜひノート代わりにして頂ければと思います。なお、本文中の漢字や重要語句については以下の記事でまとめています。