『ジェンダー化された身体の行方』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストなどにも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本作の要約やテスト対策、語句調べなどを簡単に解説しました。

『ジェンダー化された身体の行方』のあらすじ

 

あらすじ

①身体とは何か。それは、自己を表現して守るが、自分を閉じ込めて負の記憶を刻むものでもある。私たちは体を制御の利かない何かだと感じており、怪我や病気、妊娠や老いによってそれを実感する。だが、別の意味で、身体は完全に私たちのものではない。

②性別により、社会から「中身」のあり方が規定され、価値づけられることへの違和感は、誰もが時には抱くものではないか。脳もまたジェンダー化されているという幻想があり、人の生は初めから性差により結果が決まっているという考えを生んでいる。だが、実際には脳は環境と結果により日々形作られていくのだ。

③女性の身体は、父権制社会の願望や執着により、偏った女性像に押し込められ、切り捨てられてきた。「私も」運動は、女性が自分自身の身体を取り戻そうという強い意志表明である。

④男性の場合も、いまだに価値が収入で計られ、専業主夫が差別される現状がある。女性は低賃金で悪条件の労働に追いやられる一方で、家庭こそが女性にとってブラックで危険な職場になり得るという事実も変わっていない。「男対女」「女の敵は女」といった類型的なジェンダー表象を裏支えする構造的不平等から目をそらさせる社会のありかたを、まずは見極め、見直さなければならない。

『ジェンダー化された身体の行方』の要約&本文解説

 

200字要約私たちの身体は完全に自分のものではなく、性別によって社会からあり方が規定され、価値づけられ、ジェンダー化されたものである。女性は父権制社会の願望や執着により、身体の主体性と権利を否定され、男性もまた価値を収入で計られて差別されてきた。こうした中、「男対女」「女の敵は女」といった類型的なジェンダー表象を裏支えする構造的不平等から目をそらさせる社会のありかたを、まずは見極め、見直さなければならない。(199文字)

筆者はまず、私たちの身体は性別によって社会から決められており、価値づけられたものであるという問題を取り上げています。

例えば、「女性は家で家事をするものである」「男性は外で仕事をするものである」といった考え方は、私たちを性別によって決めつけている分かりやすい例だと言えます。

このように、本人の意志とは関係なく、性別によって生き方を強要されてしまうような考えは、日本社会が抱える構造的な問題です。したがって、男女の不平等をなくすためには、そうした不平等が起こっている構造を変える必要があると言えます。

ところが、現在の日本は、男と女の対立にしたり、女の敵は女といった言説を説いたりして、構造的な男女の不平等から目をそらさせるような社会になっています。

筆者は、こういった根本的な問題を解決させないような現状が起こっている社会をしっかりと見極め、そして見直さなければならないと考えているのです。

『ジェンダー化された身体の行方』の語句調べ

 

【お仕着せ(おしきせ)】⇒一方的に与えられたもの。

【隆起(りゅうき)】⇒ある部分が高く盛り上がること。

【誇示(こじ)】⇒誇らしげに示すこと。得意になって見せること。

【崇める(あがめる)】⇒非常に尊いものとして敬う。

【称賛(しょうさん)】⇒ほめたたえること。「賞賛」とも書く。

【随所(ずいしょ)】⇒あちこち。いたるところ。

【偽装(ぎそう)】⇒ある事実をおおい隠すために、他の状況や物事をよそおうこと。

【忘却(ぼうきゃく)】⇒忘れ去ること。すっかり忘れてしまうこと。

【持て余す(もてあます)】⇒取り扱い方や処置に困る。

【制御(せいぎょ)】⇒自分の思うように動かすこと。

【宿す(やどす)】⇒内に含み持つ。

【身体的性(しんたいてきせい)】⇒身体の構造による性。

【違和感(いわかん)】⇒しっくりしない感じ。

【傲慢(ごうまん)】⇒おごりたかぶって人を見くだすさま。

【つかさどる】⇒支配する。

【知見(ちけん)】⇒ある物事に対する確かな考えや意見。

【ジェンダー】⇒社会的・文化的に形成される男女の差異。男らしさ、女らしさといった言葉で表現されるもの。

【差異】⇒違い。差。

【ロジック】⇒論理。

【ステレオタイプ】⇒固定観念。

【後天的(こうてんてき)】⇒生まれた後に身に備わるさま。

【可塑性(かそせい)】⇒固体に外力を加えて変形させ、力を取り去っても元に戻らない性質。

【ことに】⇒特に。

【投影(とうえい)】⇒あるものや状態を、他のものの上に映し出すこと。

【画策(かくさく)】⇒ひそかに計画を立てること。

【執拗(しつよう)】⇒しつこいさま。

【具現化(ぐげんか)】⇒具体的な形で現すこと。

【糾弾(きゅうだん)】⇒罪や責任を問いただし、非難すること。

【著名(ちょめい)】⇒世間に名が知られているさま。有名。

【波及(はきゅう)】⇒物事の影響が波のように徐々に広がること。

【謳歌(おうか)】⇒良い境遇にあることを十分に楽しむこと。

【無造作(むぞうさ)】⇒念入りでないさま。

【言説(げんせつ)】⇒意見を言ったり物事を説明したりすること。また、その言葉。

『ジェンダー化された身体の行方』のテスト対策問題  

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①地盤がリュウキする。

②自らの能力をコジする。

③機械をセイギョする。

④物にシュウチャクする。

⑤囚人をカンシする。

解答①隆起 ②誇示 ③制御 ④執着 ⑤監視
問題2『たった二種類しかないラベル』とは、ここでは何を指すか?
解答例男という性別と女という性別。
問題3『私たちの身体は、完全に自分のものではない』とあるが、なぜそう言えるのか?
解答例私たちの身体は、性別によりその「中身」のあり方があらかじめ規定され、価値づけられていて、それに合う存在であるように期待されるため。
問題4本文のタイトルにもなっている「ジェンダー化された身体」とは、どのような身体か?
解答例社会が期待する男らしさや女らしさを、押し付けられたような身体。

まとめ

 

今回は、『ジェンダー化された身体の行方』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。