『デザインの本意』は、高校教科書・現代の国語に出てくる評論文です。定期テストや入試の小論文などにも出題されています。
ただ、本文の内容や筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『デザインの本意』のあらすじや要約、意味調べなどを含め解説しました。
『デザインの本意』のあらすじ
本文は4つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①デザインとは生み出すだけの思想ではなく、物を介して暮らしや環境の本質を考える生活の思想でもある。したがって、気づくということの中にもデザインの本質がある。ふだんは意識されない環境の中に、それを意識する糸口が見つかっただけで、世界は新鮮に見えてくる。
②人間は、四角に導かれて環境を四角くデザインしてきた。また、円形にも触発されて、日用品に円を適用してきた。このように、人類は四角や円をデザインしてきた歴史がある。
③近代科学の発達と球技の発達は、平行して進んできた。つまり、人間は自然の秩序や法則を、球技をすることで再確認してきたのだ。精度の高いボールが宇宙の原理を表すように、優れたデザインは人の行為の普遍性を表している。デザインは、人の行為の本質に寄り添っていないと、暮らしも文化も熟成していかないのである。
④技術革命の速度と変化に対応するには、理性と合理性を持ち、自分たちが生きる未来環境を計画していく意志が必要である。近代社会の成立とともに、人々は志を持って形を作り、環境をなすような着想を生み出した。それがデザインである。
『デザインの本意』の要約&本文解説
全体の構成としては、第一段落で筆者の主張、第二・第三段落でその具体例、第四段落で再度、筆者の主張といった流れになっています。
筆者はまず第一段落で、デザインとは生み出すだけの思想ではなく、物を介して暮らしや環境の本質を考える生活の思想であり、作ることと同様に、人間が生きている環境の中から気づくことの中にもデザインの本意がある。と述べています。
つまり、ただ単に形を作ること(スタイリング)がデザインなのではなく、私たち人間が生きている生活環境の中で意識すること・気づくことの中にもデザインの本質があるという意味です。
それを説明するために、第二段落で身近にある四角のデザイン、第三段落で円のデザインや球技の歴史について述べています。
最後の第四段落では、技術革命が速度と変化を伴う中、理性と合理性を携えて未来環境を計画していく意志が必要で、志を持って形を作り環境をなすデザインが豊かさを作る。と結論付けています。
全体を通した筆者の主張は、最後の第四段落と冒頭の第一段落に集約していると言えます。
『デザインの本意』の意味調べノート
【スタイリング】⇒効果的なスタイルを形作ること。
【堆積(たいせき)】⇒積み重ねること。
【覚醒(かくせい)】⇒目が覚めること。今まで気づいていなかったことに気付くこと。
【醍醐味(だいごみ)】⇒物事の本当のおもしろさ。深い味わい。
【糸口(いとぐち)】⇒きっかけ。手がかり。
【有機的(ゆうきてき)】⇒多くの部分が互いに結びつき、全体を作っているさま。
【街路(がいろ)】⇒市街地の道路。まちなかの道。
【数理(すうり)】⇒数学上の理論。
【造化の妙(ぞうかのみょう)】⇒ここでは、自然界にはほとんどない四角が、立方体の鉱物の結晶として現れること、という意味。「造化」とは「造物主(神)によってつくられたもの。」、「妙」とは「いうにいわれぬほどすぐれていること。きわめてよいこと。」という意味。
【最適性能(さいてきせいのう)】⇒ここでは、「四角が人間にとって最も優れた形であること」という意味。
【幾何学原理(きかがくげんり)】⇒図形や空間の性質に関わる根本的な法則。「幾何学」とは「図形や空間の性質を研究する数学の一部門」という意味。
【フォルム】⇒形。形式。
【即応(そくおう)】⇒状況に応じてすばやく行動すること。
【演繹(えんえき)】⇒一般的な理論によって、特殊なものを推論し、説明すること。⇔「帰納」
【簡素(かんそ)】⇒飾りけがなく、質素なこと。また、そのさま。
【合理性(ごうりせい)】⇒論理の法則にかなった性質。むだなく能率的に行われるような物事の性質。
【立脚(りっきゃく)】⇒立場を決めてそれをよりどころとすること。
【集積(しゅうせき)】⇒集めて積み上げること。
【触発(しょくはつ)】⇒感情や行動を起こさせること。
【適用(てきよう)】⇒物事にあてはめて用いること。
【精度(せいど)】⇒正確さの度合い。
【表象(ひょうしょう)】⇒象徴。シンボル。
【秩序(ちつじょ)】⇒整った状態。整然とまとまっている状態。
【普遍性(ふへんせい)】⇒すべての物事に通じる性質。すべての物事に適合する性質。
【熟成(じゅくせい)】⇒十分に成熟してできあがること。
【精巧(せいこう)】⇒仕組みが細かくよくできていること。
【啓発(けいはつ)】⇒人が気づかずにいるところを教え示して、より高い認識・理解に導くこと。
【探求(たんきゅう)】⇒ある物事を得ようと探し求めること。
【鍾乳洞(しょうにゅうどう)】⇒石灰岩が雨水や地下水によって溶けてできる洞窟。
【研磨(けんま)】⇒表面を滑らかにするために、とぎみがくこと。
【用(よう)】⇒役に立つこと。必要なこと。
【理性(りせい)】⇒道理によって物事を判断する心の働き。論理的に思考する能力。
【携える(たずさえる)】⇒身につけて持つ。
【着想(ちゃくそう)】⇒アイデア。思いつき。考え。
【蓄積(ちくせき)】⇒たくさんたくわえること。
【勃興(ぼっこう)】⇒急に勢力を得て盛んになること。
『デザインの本意』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①カンキョウ問題を考える。
②ケイコウトウを交換する。
③ゾウカの妙を楽しむ。
④セイドの高い技術。
⑤富のチクセキを目指す。
次の内、本文の内容を適切に表したものを選びなさい。
(ア)デザインは物の形を計画的・意識的に作る行為によって成り立ち、効果的なスタイルを形にすることの中にもデザインの本意がある。
(イ)近代科学が発達するに従い、球技の発達も並行して進んだが、人の行為の普遍性を表象するようなデザインまでは人類は作れなかった。
(ウ)デザインがスタイリングではないと言われるのは、デザインが人の行為の本質に寄り添っていないと、暮らしも文化も熟成していかないためだからである。
(エ)技術革命の発展に対応するには、理性や合理性といった要素を捨て、自分たちが生きる未来環境を積極的に計画していく意志が必要である。
まとめ
以上、今回は『デザインの本意』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。