コインは円形か 問題 解説 漢字 意味調べノート テスト対策 レトリック感覚とは

『コインは円形か』は、現代文の教科書で学ぶ有名な評論文です。ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくい箇所も多いです。

そこで今回は、『コインは円形か』のあらすじや要約、語句の意味、テスト対策などを含め分かりやすく解説しました。

『コインは円形か』のあらすじ

 

本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①ふだん私たちは、コインを丸いものとみなしている。そのため、「コインは円形だ。」という文をもっともな発言だと思うのに対し、「コインは長方形だ。」という文を異様な発言だと思う。だが、この二つの文は論理的には同格である。そして、どちらも省略的で一面的である。これはコインの円形の面からの付き合いの方が、長方形の面からの接触よりも頻繁だからである。

②人間の認識一般は、ある立場からの有限のアプローチである。自分の認識、自分の言葉が有限で一面的だと承知している人は、やがて自分の視点を変え、多様なアプローチを試みるようになる。しかし、私たちは生きている人間や抽象的存在なども相手にして生きているため、そういう対象に向かって一面的に決めつけるような精神硬化現象なら珍しくない。

③レトリックとは、私たちの認識と言語表現の避けがたい一面性を自覚し、別の視点に立てば別の展望があるうるのではないかと探求する努力のことである。つまり、創造力と想像力の営みである。新しい視野を獲得するためにも、習慣の枠を越えた相互理解のためにも、今日ほどレトリック感覚が必要とされる時はない。

『コインは円形か』の要約&本文解説

 

200字要約人間の認識一般は、ある立場からの有限のアプローチであり、自分の認識が有限で一面的だと承知している人は、多様なアプローチを試みることになる。レトリックとは、私たちの認識と言語表現の避けがたい一面性を自覚し、別の視点に立てば別の展望がありうるのではないかと探求する努力であり、創造力と想像力の営みである。新しい視野を獲得するためにも、異なる文化との相互理解のためにも、レトリック感覚が必要とされている。(199文字)

全体の構成としては、第一段落で「コインは円形かどうか」について、第二段落で「人間の認識一般」について、第三段落で「レトリック感覚の必要性」について述べられています。

まず本文を理解する上で、「レトリック」という言葉が一つのキーワードとなります。「レトリック」を辞書で引くと、「修辞法、美辞麗句、巧言」などとあります。簡単に言えば、文章を装飾する技術や口先だけの言葉、相手を言いくるめるような言葉という意味です。

ただ、ここでのレトリックは上記のような意味を指しているわけではありません。

本来のレトリックとは、私たちの認識と言語表現の避けがたい一面性を自覚し、もっと別の視点に立てばもっと別の展望がありうるのではないかと探求する努力のことであり、創造力と想像力の営みである、と筆者は述べています。

これを分かりやすくするために、本文中では、果実が枝から落ちて地面へ落ちるシーンを例に挙げています。

同じ現象でも、「りんごが地面から落ちた」「りんごに向かって地面が突進してきた」「りんごと地面は互いに引き付け合っている」などのように人はさまざまな想像力を働かせることができます。

このように、物事を色々な角度から考え、色々な角度の言葉によって表現してみることが、本来のレトリックなのだと筆者は言います。

そして、筆者は今日の価値観の多様化という時代では、レトリック感覚こそが必要なのだと述べています。レトリック感覚とは、物事を多面的に見て多彩に表現し、多様な視点があることを理解する能力のことです。

私たちは、「○○=A」「○○=B」のように自分の慣れ親しんだ視点からものを見ようとし、自分の見方こそが絶対であると考えがちです。そうではなく、人には人の視点や表現方法があるということを理解する能力こそが、今の時代に求められているということです。

全体を通して筆者が主張したいことは、最後の第三段落に集約していると言えます。

『コインは円形か』の意味調べノート

 

【承知(しょうち)】⇒知っていること。分かっていること。

【承認(しょうにん)】⇒事実であると認めること。

【まことに】⇒ほんとうに。

【ものは試し】⇒物事はやってみなければ、そのよしあしはわからない、ということ。

【異様(いよう)】⇒様子が普通ではなく、変に思われるさま。

【頻繁(ひんぱん)】⇒しきりに行われるさま。

【論理的(ろんりてき)】⇒理屈に合っているさま。

【同格(どうかく)】⇒資格が同じであること。

【認識(にんしき)】⇒物事を知り、その本質などを理解すること。

【実証的(じっしょうてき)】⇒経験に基づく事実によって明らかにするさま。

【まなざし】⇒視線。

【着飾る(きかざる)】⇒美しい衣服を着て、身なりを飾る。

【裸体(らたい)】⇒衣服をまとっていない、はだかのからだ。

【有限(ゆうげん)】⇒限界や限度があること。

【あぐらをかく】⇒現在の立場や状態に甘んじて、何の努力もしないこと。

【多様(たよう)】⇒いろいろ異なるさま。

【奇妙(きみょう)】⇒珍しく、不思議なさま。

【硬化(こうか)】⇒主張や意見などを、強い態度で押し通そうとするさま。

【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒現実から離れていて、具体性に欠けるさま。

【考慮(こうりょ)】⇒様々の要素を含めて、物事をよく考えること。

【レトリック】⇒言葉を巧みに使い、効果的に表現すること。また、その技術。

【たぶらかす】⇒人をあざむく。だます。

【術(すべ)】⇒手段。方法。

【不届き(ふとどき)】⇒道や法に背いたさま。

【通俗的(つうぞくてき)】⇒俗受けのするさま。世間一般に好まれるさま。

【意義(いぎ)】⇒意味。

【展望(てんぼう)】⇒本来は「見通し」という意味。ここでは、あらゆる対象についての深い認識、を意味する。

【探求(たんきゅう)】⇒あるものを得ようと、探し求めること。

【創造力(そうぞうりょく)】⇒新しいものを自分でつくり出す力。

【想像力(そうぞうりょく)】⇒頭の中に思い浮かべる力。想像する能力。

【営み(いとなみ)】⇒行為。行い。

【多角的(たかくてき)】⇒多くの方面に渡っているさま。

【価値の多様化(かちのたようか)】⇒価値のあるとされるものが多くのものに分かれ、複雑化すること。

【しばしば】⇒たびたび。何度も。

【統制(とうせい)】⇒思想や言論などを、一定の計画や方針に従って指導・制限すること。

【視角(しかく)】⇒物を見る立場。視点。

【容易(ようい)】⇒たやすいこと。やさしいこと。

【かたくな】⇒頑固なさま。

【滑稽(こっけい)】⇒いかにもばかばかしく、おかしいこと。

【肝心(かんじん)】⇒何かをするのにもっとも大事なこと。

【相違(そうい)】⇒違い。

【文化圏(ぶんかけん)】⇒一つの文化が一致あるいは類似した特徴をもつ地域。(例)英語圏・イスラム圏など。

【いわば】⇒言ってみれば。たとえて言えば。

【暗黙(あんもく)】⇒口に出さず、黙っていること。

【相互理解(そうごりかい)】⇒お互いが理解し合うこと。「相互」とは「お互い」という意味。

『コインは円形か』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

エンバン型の商品。

セッショク事故を起こす。

③話をショウリャクする。

オロかな行為を反省する。

⑤幸福をタンキュウする。

⑥言論をトウセイする。

アンモクの了解が多い。

解答①円盤 ②接触 ③省略 ④愚 ⑤探求 ⑥統制 ⑦暗黙
問題2「有限のアプローチ」と反対の表現を、本文中から8文字で抜き出しなさい。
解答多様なアプローチ
補足「有限のアプロ―チ」とは、対象の見方を限定するアプローチのこと。対して、「多様なアプローチ」とは、さまざまな角度から対象を捉えるアプローチのことを指す。
問題3「もっと認識的な思いやりである。」とあるが、「認識的な思いやり」とは何か?本文中の語句を用いて答えなさい。
解答相手の立場、別の視点に立って見ればどんなぐあいにものが見えるか、ということを思い描いてみること。
問題4

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)「百円玉は円形だ。」と「百円玉は長方形だ。」という二つの文は、どちらも省略的で一面的である。

(イ)人間の認識一般は、ある立場からの有限のアプローチであり、その有限性は、たいてい、言語表現に反映して現れる。

(ウ)レトリックとは、「想像力」をはたらかせて多角的に考え、なおかつ「創造力」で多角的な言葉により表現してみることである。

(エ)レトリック感覚とは、人を言葉巧みにたぶらかすような誤ったレトリック観を是正し、レトリックの積極的な意義を見直すことである。

解答(エ)レトリック感覚とは、物事を多面的に見て多彩に表現し、多様な視点があることを理解する能力のことを指す。誤った感覚を是正し、積極的な意義を見直すとまでは本文中には書かれていない。

まとめ

 

以上、今回は『コインは円形か』について解説しました。この評論文は入試や定期テストなどにも出題されやすいです。ぜひ正しい読解ができるようになって頂ければと思います。