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資本主義 社会主義 共産主義 意味 わかりやすく 違い

 

「資本主義」「社会主義」「共産主義」は、いずれも普段からよく目にする言葉です。受験であれば、現代文や世界史、政治経済などにおいて特によく使われています。

ただ、具体的な意味が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、これらの言葉の違いについて時代背景などを含めなるべく簡単に分かりやすく解説しました。

資本主義の意味

 

まず、「資本主義」の意味を調べると次のように書かれています。

【資本主義(しほんしゅぎ)】

封建制度に次いで現れ、産業革命によって確立された経済体制。生産手段を資本として私有する資本家が、自己の労働力以外に売るものを持たない労働者から労働力を商品として買い、それを上回る価値を持つ商品を生産して利潤を得る経済構造。生産活動は利潤追求を原動力とする市場メカニズムによって運営される。キャピタリズム。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

資本主義」とは「資本を持つ資本家が労働者を雇い、利益を得る社会システム」のことを意味します。

一つずつ説明すると、「資本」とは「お金」のことです。

また、「資本家」とは「お金を元手に会社を立ち上げる経営者」をイメージしてもらうと分かりやすいです。「経営者」≒「社長」だと考えてください。

そして、「労働者」とは、サラリーマンやOLなど「社長に雇われて会社で働いている全ての従業員」のことです。

したがって、「資本主義」とは「お金を持った経営者が従業員を雇い、利益を得る社会システム」ということになります。

別の言い方をするなら、「資本主義」=「自由に商売ができる社会」とも言えるでしょう。

つまり、「資本主義」は今の私たちが生活している日本の社会そのものということです。

日本という国で働いてお金を稼ぐ以上、「資本家」か「労働者」のどちらかに当てはまります。

日本では一般的に、まず資本を持つ人が会社を作って労働者を雇います。そして、みんなで商品を作り、多くのお客さんにモノを売って利益を上げています。

その結果、私たちは給料を得ることができ、色んな物を買うことにより経済が回っているのです。

日本に限らず、アメリカやヨーロッパなど先進国のほとんどが資本主義というシステムで経済を回しています。

元々、「資本主義」というシステムは、18世紀半ば~19世紀のイギリスで起こりました。

今では当たり前のシステムですが、実は当時のイギリスの産業革命によりできた考えということになります。

社会主義の意味

 

続いて、「社会主義」の意味です。

【社会主義(しゃかいしゅぎ)】

生産手段の社会的共有・管理によって平等な社会を実現しようとする思想・運動。空想的社会主義・共産主義・社会民主主義など。

マルクス主義で、資本主義から共産主義へと続く第一段階としての社会体制。各人は能力に応じて働き、働きに応じて分配を受けるとされる。1917年のロシア革命により、1922年に世界初の社会主義国家としてソビエト社会主義共和国連邦が成立したが、硬直化した官僚体制への不満などから1991年に崩壊した。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

社会主義」とは「国が国民の給料や財産を管理して、平等を実現しようとするシステム」のことを意味します。

「国民の財産」とは「働いて得たお金や持っている土地のこと」です。

お金や土地を国が管理するとは、一体どういうことでしょうか?

分かりやすい例を出しましょう。「資本主義」の場合、月に70時間働いた人と月に100時間働いた人だと、当然もらえる給料の額は違います。

なぜなら、働いたら働いた分だけ給料を多くもらえるのが「資本主義」だからです。

一方で、「社会主義」の場合は資本家ではなく「国」が会社を作り、そして工場を建てて人を雇います。

そのため、どれだけ一生懸命働いても働いた分のお金はいったん国が預かります。その後、預かったお金を国民に平等に分けるのです。

土地に関しても同様です。「資本主義」の場合は「私有財産(しゆうざいさん)」と言って、土地は個人のものという決まりがあります。

私たち日本人は、土地を買いたいときに買い、売りたいときに売ることができますよね?

一方で、「社会主義」の場合は「土地は国や政府のもの」という考えなので、国民が土地を所有することは許されません。すべては「国民を平等にするため」ということです。

「社会主義」の国は、現在キューバ・ラオス・ベトナムなどが挙げられます。中国は「政治は社会主義」ですが、「経済は資本主義」という複雑な国なので社会主義の候補からは外しました。

共産主義の意味

 

3つ目は、「共産主義」の意味です。

【共産主義(きょうさんしゅぎ)】

財産の私有を否定し、生産手段・生産物などすべての財産を共有することによって貧富の差のない社会を実現しようとする思想・運動。古くはプラトンなどにもみられるが、現代では主としてマルクス・エンゲルスによって体系づけられたマルクス主義思想をさす。

マルクス主義で、プロレタリア革命によって実現される人類史の発展の最終段階としての社会体制。そこでは階級は消滅し、生産力が高度に発達して、各人は能力に応じて働き、必要に応じて分配を受けるとされる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

共産主義」とは「貧富の差のない究極の平等社会を実現しようとするシステム」のことを意味します。

言いかえれば、「社会主義をさらに発展させた考え方」ということになります。

「社会主義」は、国民の平等を目指した考え方でした。「共産主義」は、社会主義よりもさらに人の平等を目指します。

具体的にどういうことかと言うと、まず「国や政府という概念をなくすこと」を主張しました。

つまり、「いくら平等といっても、国や政府が国民をコントロールしていては真の平等ではない」ということです。

「共産主義」では、資本家や労働者のような序列はもちろん、国や国民といった序列も許されません。また、お金を貯めることも許されません。

「必要な時に必要な分だけしかお金を受け取れない」という考え方です。

「社会主義」では給料は平等でしたが、お金の貯蓄までは禁止されていませんでした。まさに「究極の平等」だと言えるでしょう。

「共産主義」という思想は、「社会主義」をさらに発展させると、最終的に人類が皆平等になり幸せな社会が訪れると考えています。「社会主義」を発展させた最終段階が「共産主義」の世界ということです。

なお、「共産主義」というシステムが成立した国は過去に一つもありません。そのため、「共産主義」は、実現不可能なユートピア(理想・空想)を目指した考え方とも言われています。

対立構造が生まれた理由を簡単に

 

資本主義 社会主義 対立構造

 

それぞれの意味を理解するには、歴史という背景を知っておく必要があります。

まず、「資本主義」は18世紀半ばのイギリスで起こったシステムでした。

当時のイギリスは、資本家が大規模な工場を建てて、大量の労働者を雇って利益を出していました。

働けば働いた分だけお金がもらえるのは嬉しいですが、「資本主義」にもデメリットがあります。

それは、貧富の差が拡大しやすいということです。

特に、資本家と労働者の間には大きな貧富の差が生まれました。

なぜなら、働いた分の利益は最初に資本家がもらい、労働者にはその後分配されるからです。

労働者にとってみれば、お金をもらって雇われている以上、資本家に逆らうことはなかなかできません。

また、労働者同士の間でも格差が出てきました。理由は簡単で、「資本主義」では給料は実力次第だからです。

能力のあるものは給料が多いが、能力のないものは給料が少ない

当たり前のことかもしれませんが、能力が足りない人にとっては厳しい現実ですよね。こうして、労働者たちの不満は少しずつたまっていったのです。

資本主義って本当に幸せになれるの?

世界中の労働者たちが、「資本主義」に対して疑いを持つようになりました。こうした流れで出てきたのが「社会主義」という考え方です。

そもそも給料をコントロールする資本家がいるからいけないんだ。

ならば、国が給料を管理してみんなに平等に分けようじゃないか。

という対立の意見が出てくるようになりました。

そして、最初に「社会主義」を実行したのが当時、地球で一番面積が大きかった「ソ連」という国です。

当時の労働者たちは、「ソ連が社会主義を目指すのか?」「いよいよこれからは社会主義の時代か?」と多くの期待を寄せました。

しかしながら、「社会主義」は見事に失敗しました。「ソ連崩壊」という言葉を何となく聞いたことがあるかと思います。

崩壊した原因は色々ありますが、簡単に言うと、給料がみんな同じだと、なまける人が増えたからです。これは、「社会主義」の一番のデメリットと言われています。

私は一生懸命働いているのに、あの人はなまけてるな。

それでも給料は一緒?ばかばかしい、自分も手を抜こう。

こんな感じで皆がなまけてしまえば、経済がうまく回るわけがないですよね。結果、ソ連という国は崩壊してしまいました。

つまり、社会主義というのは経済的にうまくいかないシステムということが歴史的に証明されてしまったのです。

「社会主義」が失敗した結果、「共産主義」という考えは見向きもされなくなりました。

「社会主義ですら無理だったのに、共産主義なんて到底無理」ということです。

現在のイデオロギーの主流が「資本主義」というのは、このような過去の歴史があったからなのです。

資本主義・社会主義・共産主義の違い

資本主義 社会主義 共産主義 違い

 

最後に、それぞれの違いを整理しておきましょう。ここまでの話をまとめると次のようになります。

資本主義】⇒お金を持った経営者が従業員を雇い、利益を得る社会システム。(例)日本・アメリカ・イギリスなど先進国のほとんど。
社会主義国が国民の給料や財産を管理して、平等を実現しようとするシステム。(例)キューバ、ラオス、ベトナムなど一部の国。
共産主義国や政府をなくし、社会主義よりもさらに平等を目指すシステム。(例)なし

つまり、3つの違いを簡単に説明すると、

  • 【資本主義】自由に商売ができる。給料は実力次第。
  • 【社会主義】自由に商売ができない。給料は国が管理するので平等。
  • 【共産主義】社会主義を発展させた究極の平等社会。ユートピアの世界。

となります。

それぞれの「メリット」「デメリット」も挙げると、

  • 【資本主義】自由に商売ができるが、お金持ちと貧乏人の格差が生まれる。
  • 【社会主義】給料は平等だが、なまける人が増えるので経済が発展しない。
  • 【共産主義】実現できればよいが、現実的には不可能。

ということになります。

現在では、「資本主義」という大多数のシステムに対し、一部の「社会主義」が対立している構造となっています。

まとめ

 

以上、今回は「資本主義・社会主義・共産主義」について解説しました。いずれも現代文や政治・経済などにおいてよく出てくる重要な言葉です。これを機にぜひ正しい意味を理解して頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。