『美神』は、三島由紀夫の短編小説として有名な作品です。高校現代文の教科書でも取り上げられているため、学校の定期テストの問題にも出題されることが多いです。
ただ、本文中に出てくる語句は辞書に載っていないものも多く、あらすじが理解しにくいと感じる人も多いと思われます。そこで本記事では、『美神』に出てくる言葉の意味を一覧にしてまとめました。
『美神』の言葉・語句一覧
【R博士(アールはかせ)】⇒83歳のドイツ人。古代彫刻の権威で臨終の床にある。
【ライン流域(りゅういき)】⇒ライン川の流れに沿う地域。ライン川とは西ヨーロッパを流れる大河を指す。
【デュッセルドルフ】⇒ドイツ中西部、ライン川沿いの商業・貿易都市。
【定住(ていじゅう)】⇒一定の場所に住居を構え、そこに住みつくこと。
【おびただしい】⇒数や量が非常に多いさま。
【著作(ちょさく)】⇒書きあらわした書物。
【彫刻(ちょうこく)】⇒木・石・金属などに文字や絵・模様を彫り込むこと。
【権威(けんい)】⇒ある分野において優れたものとして認められていること。
【名に背く(なにそむく)】⇒名声に反する。実体が名と一致しない。
【臨終の床(りんじゅうのとこ)】⇒死ぬ間際。
【病褥(びょうじょく)】⇒病人の寝る床。「病床(びょうしょう)」と同じ。
【真摯(しんし)】⇒まじめで熱心なこと。
【N博士(エヌはかせ)】⇒美術愛好家として知られる若くてまじめな医者。
【ローマ】⇒イタリア共和国の首都。
【都門(ともん)】⇒都の入り口の門。
【ボルゲーゼ公園】⇒ローマにある80ヘクタールの広大なイギリス式庭園。その中にはボルゲーゼ美術館などの様々な建築物も建っている。
【閑静(かんせい)】⇒もの静かで落ち着いたさま。
【アパートメント】⇒アパートのこと。共同住宅の中の1世帯分が住む部屋。
【適当(てきとう)】⇒あてはまること。ふさわしいこと。
【強烈(きょうれつ)】⇒力や刺激などが強く激しいこと。
【遍満(へんまん)】⇒広くいっぱいにいきわたること。
【街路樹(がいろじゅ)】⇒街路に沿って並べて植えてある樹木。
【木陰(こかげ)】⇒樹木の下で日の光が当たらない所。
【街角(まちかど)】⇒町の通りの曲がりかど。
【終日(しゅうじつ)】⇒一日中。朝から晩まで。
【とどめない】⇒元の状態を保たない。
【廃墟(はいきょ)】⇒建物などが荒れはてた跡。
【幾多(いくた)】⇒数多く。たくさん。
【泉(いずみ)】⇒地下水が自然に地表にわき出る所。
【清水(きよみず)】⇒澄んだきれいな水。
【装飾(そうしょく)】⇒飾ること。美しく装うこと。
【彫像(ちょうぞう)】⇒彫刻して作られた像。
【ローマの泉(いずみ)】⇒ローマという都市にある泉のこと。
【源(みなもと)】⇒物事の起こりはじめ。起源。
【トリトンの泉(いずみ)】⇒トリトーネの噴水のこと。トレビの泉の北東500mあたりにある観光スポット。
【トレビの泉(いずみ)】⇒イタリアの首都ローマ市街のトレビ広場にある噴水。ローマの代表的な観光名所の一つで、後ろ向きにコインを投げ入れ、泉に入れば再びローマに訪れることができると言われている。
【離京(りきょう)】⇒都を離れること。
【貨幣(かへい)】⇒商品を交換する際の媒介物。
【訪う(とう)】⇒目的をもって人の家や特定の場所などをたずねる。おとずれる。
【口碑(こうひ)】⇒古くからの言い伝え。伝説。
【終生(しゅうせい)】⇒一生。死ぬまでの間。
【真っ向(まっこう)】⇒ま正面。
【日覆い(ひおおい)】⇒日光をさえぎるためのおおい。日よけ。
【ぬるむ】⇒少しあたたかくなる。
【死に瀕(ひん)している】⇒今にも死にそうになっている。
【荘厳(そうごん)】⇒重々しくおごそかなこと。
【倨傲(きょごう)】⇒おごり高ぶること。傲慢。
【眼窩(がんか)】⇒眼球が入っている頭蓋骨の深い大きなくぼみ。
【微光(びこう)】⇒かすかな光。弱々しい光。
【起伏(きふく)】⇒高くなったり低くなったりしていること。
【圧縮(あっしゅく)】⇒縮めること。
【兆し(きざし)】⇒物事が起こりそうな気配。前触れ。
【明瞭(めいりょう)】⇒はっきりしていること。
【弾力(だんりょく)】⇒外力が加わって変形した際に、元の形に戻ろうとする力。
【静脈(じょうみゃく)】⇒毛細血管から血液を心臓に向けて送る血管。
【手の甲(てのこう)】⇒手の外側の面。
【縦横(じゅうおう)】⇒あらゆる方面。
【形骸(けいがい)】⇒外形だけを残して、実質的な意味を失っているもの。
【痰(たん)】⇒気道から吐き出される粘液性の分泌物。
【言わんとする】⇒言おうとしている。
【傍ら(かたわら)】⇒そば。すぐ近く。
【台座(だいざ)】⇒物を載せておく台。
【絨毯(じゅうたん)】⇒床の敷物などに使う厚い毛織物。
【大理石(だいりせき)】⇒石灰岩が変成作用を受けてできた粗粒の方解石からなる岩石
【アフロディテ】⇒ギリシャ神話で、美と愛の女神。
【発掘(はっくつ)】⇒地中に埋もれているものを掘り出すこと。
【近代(きんだい)】⇒15、16世紀以降~20世紀中頃までの時代。
【納める(おさめる)】⇒きまった所にしまう。
【病が篤い(やまいがあつい)】⇒病気が重い。
【特例(とくれい)】⇒特別に設けた例外。
【模糊(もこ)】⇒ぼんやりしているさま。はっきりしないさま。
【形態(けいたい)】⇒外から見た形やありさま。
【原型(げんけい)】⇒もとの型。
【羞恥(しゅうち)】⇒恥じらい。恥ずかしいと思うこと。
【伏せる(ふせる)】⇒下の方に向ける。
【あたかも】⇒まるで。
【冷(ひ)ややか】⇒態度が冷淡であるさま。
【挙措を失う(きょそをうしなう)】⇒取り乱した行いをする。※「挙措」とは「立ち振る舞い」のこと。
【辛うじて(かろうじて)】⇒やっとのことで。どうにか。
【モロッコ革(モロッコがわ)】⇒モロッコ産のなめし革。ヤギの皮をなめした良質のもの。
【フィレンツェ 】⇒イタリア中部の古都。
【細工(さいく)】⇒手先を使い、細かい器物などを作ること。
【大部(たいぶ)】⇒一つの書物のページ数・紙数が多いこと。
【かくて】⇒こうして。このようにして。
【無上(むじょう)】⇒この上ないこと。最上。
【傑作(けっさく)】⇒非常にすぐれた作品。
【優雅(ゆうが)】⇒しとやかで気品があること。
【品格(ひんかく)】⇒気高さや上品さ。
【クニドス】⇒小アジア地方にあった古代都市。現在のトルコ南西部付近に位置。
【匹敵(ひってき)】⇒能力や価値などが同程度であること。肩を並べること。
【比類なき(ひるいなき)】⇒比べる対象がないほどすばらしいさま、突出しているさま。
【優婉(ゆうえん)】⇒やさしくしとやかなこと。あでやかで美しいこと。
【一抹(いちまつ)】⇒ほんのわずか。
【神秘(しんぴ)】⇒人間の知恵では計り知れない不思議なこと。
【悲哀(ひあい)】⇒悲しくあわれなこと。
【宿す(やどす)】⇒内に含み持つ。
【神聖(しんせい)】⇒清浄でけがれがないこと。
【官能(かんのう)】⇒性的感覚を享受する働き。
【得も言われぬ(えもいわれぬ)】⇒何とも言い表せない。
【プラクシテレス】⇒古代ギリシャの彫刻家。前4世紀に活躍し、優美な裸体の神像を得意とした。
【原作(げんさく)】⇒もとの作品。
【模作(もさく)】⇒すでにあるものを手本として似せて作った作品。
【土中(どちゅう)】⇒土のなか。地面の下。
【至上(しじょう)】⇒この上ないこと。最上。最高。
【戦慄(せんりつ)】⇒恐ろしくてからだが震えること。
【朗読(ろうどく)】⇒詩歌や文章などを声に出して読み上げること。
【書架(しょか)】⇒本を並べて置く棚。本棚。
【一隅(いちぐう)】⇒一方のすみ。かたすみ。
【背丈(せたけ)】⇒背の高さ。身長。
【不審気(ふしんげ)】⇒不審そうな。
【オックスフォード大学】⇒イギリスの大学都市、オックスフォードにある総合大学。
【ほとり】⇒近辺。その付近。
【不意(ふい)】⇒思いがけないさま。突然であるさま。
【瀕死(ひんし)】⇒死にそうであること。
【死臭(ししゅう)】⇒死体から発する悪臭。
【腐敗(ふはい)】⇒腐って悪臭を放つようになること。
【嘲り(あざけり)】⇒ばかにして笑うこと。
【陶酔(とうすい)】⇒気持ちよく酔うこと。
【碩学(せきがく)】⇒修めた学問が広く深いこと。また、その人。
【引用(いんよう)】⇒人の言葉や文章を、自分の話や文の中に引いて用いること。
【いまわ】⇒死にぎわ。最期。
【懺悔(ざんげ)】⇒自分の罪を悔いて告白すること。
【学究(がっきゅう)】⇒ひたすら学問、研究などに没頭すること。
【精確(せいかく)】⇒]詳しくて間違いのないさま。綿密で正確なさま。
【曖昧(あいまい)】⇒物事がはっきりしないこと。
【独断(どくだん)】⇒自分の思い込みだけで、公正を欠いた判断をすること。
【主観的(しゅかんてき)】⇒自分ひとりのものの見方によっているさま。⇔「客観的」
【美学(びがく)】⇒美しさに関する独特の考え方や趣味。
【誤植(ごしょく)】⇒印刷物で文字に誤りがあること。
【名状し難い(めいじょうしがたい)】⇒説明できない。表現できない。
【公共(こうきょう)】⇒社会一般。おおやけ。
【一瞥(いちべつ)】⇒ちらっと見ること。
【魅惑(みわく)】⇒人の心をひきつけて、理性を失わせること。
【とりこ】⇒あることに心を奪われること。また、そのような人。
【些細(ささい)】⇒あまり重要ではないさま。取るに足らないさま。
【たくらみ】⇒たくらむこと。よくない計画。
【あまねく】⇒広く。
【公表(こうひょう)】⇒広く世間に発表すること。
【狂おしい(くるおしい)】⇒今にも気が狂いそうに、心が乱れているさま。
【紅潮(こうちょう)】⇒顔に血が上って赤くなること。
【あえぐ】⇒ 苦しそうに、せわしく呼吸する。
【丹念(たんねん)に】⇒細かいところにまで注意を払うさま。
【脚立(きゃたつ)】⇒短いはしごを八の字形に合わせ、上に板をのせた形の踏み台。
【底知れない(そこしれない)】⇒限度がわからない。無限の。
【おのずから】⇒自然に。ひとりでに。
【錯乱(さくらん)】⇒入り乱れて秩序がなくなること。
【瞳孔(どうこう)】⇒瞳の中心にある黒い部分。
【怨嗟(えんさ)】⇒うらみ嘆くこと。
【事切れる(こときれる)】⇒息が絶える。死ぬ。
【ひざまずく】⇒地面や床などに膝をついて身をかがめる。
【異教徒(いきょうと)】⇒自分が信仰する宗教と異なる宗教を信仰している人。
【終油(しゅうゆ)】⇒カトリック教会の七つの秘蹟の一つ。臨終時の病人に平安と恵みを受けさせるため、その体に香油を塗る儀式。
【がえんじる(肯んじる)】⇒承諾する。聞き入れる。
【婦人(ふじん)】⇒成人した女性。相応の年齢に達している一人前の女性。
【金切り声(かなきりごえ)】⇒金属を切るときに出る音のように、高く張り上げた鋭い声。細くて甲高い声。
【たちすくむ】⇒恐ろしさや驚きなどで、立ったまま動けなくなる。
まとめ
以上、今回は『美神』に出てくる言葉を一覧にしてまとめました。言葉の意味が分かれば、あらすじも理解しやすくなるはずです。ぜひ現代文のノート代わりにして頂ければと思います。