「枚挙にいとまがない」という慣用句をご存知でしょうか?
普段の文章でもよく使われており、最近ではビジネスシーンでも用いられるようになりました。ただ、具体的な由来や成り立ちなどが分かりにくい表現でもあります。
そこで本記事では、「枚挙にいとまがない」の意味や読み方、語源、英語訳などを含め詳しく解説しました。
枚挙にいとまがないの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【枚挙(まいきょ)にいとまがない】
⇒たくさんありすぎて、いちいち数えきれない。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「枚挙にいとまがない」は「まいきょにいとまがない」と読みます。意味は「たくさんありすぎて、いちいち数えきれないこと」を表したものです。
例えば、ある人の性格や能力、人柄などが素晴らしくて数えきれないほど長所があったとします。
この場合、「彼女の長所は枚挙にいとまがない」などのように言ったりします。つまり、「数えきれないほど長所がたくさんある」ということです。
このように、物事の数が多すぎていちいち数え上げることができない様子の事を「枚挙にいとまがない」と言うわけです。
なお、「枚挙にいとまがない」は数えるという意味が含まれているため、何か目に見えるような具体的な形のある物にしか使われないと思われがちです。しかし、実際には具体的な形のない物に対しても使われます。
枚挙にいとまがないの語源・由来
「枚挙にいとまがない」は、「枚挙」と「いとま」という二つの言葉を語源とします。
まず、「枚挙」とは「一つ一つ数え上ること」という意味です。「枚」は「一枚・二枚」などの語があるように「物を数えること」、そして「挙」は「挙手」などの熟語があるように「取り上げること」を表します。
この事から、何かを一つ一つ数えたり取り上げたりすることを「枚挙」と呼ぶわけです。
そして、「いとま」は漢字で「暇」と書きます。「暇」は「ひま」とも読むことができる漢字なので、その読み方通り「ひまなこと」を表します。
念のため、「暇」を辞書で引くと次のように書かれています。
【暇(いとま)】
①用事のない時間。ひま。
②一時的に休むこと。休暇。
③職務を離れること。辞職。
④離縁。離婚。
⑤別れて去ること。また、そのあいさつ。
⑥喪に服すること。またそのために出仕しない期間。
⑦ある物事をするのに空けることのできる時間。
⑧すきま。ひま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
意味が複数ありますが、ここでの「いとま」は①の「用事のない時間・ひま」だと考えれば問題ありません。
つまり、「いとまがない」とは「ひまがない」すなわち「時間がなくて忙しい様子」を表す慣用句であることが分かります。
この事から、「枚挙にいとまがない」⇒「一つ一つ数え上げるひまがない」⇒「いちいち数えきれない」という意味になるわけです。
「枚挙にいとまがない」を使う時は、物がたくさんありすぎる状態を想像すると分かりやすいでしょう。
例えるなら、目の前に1000個のりんごがあるようなイメージです。1000個もあるりんごを一つ一つ数える暇がある人などはいません。
そのため、「たくさんあって、いちいち数えきれない」という意味になるのです。
枚挙にいとまがないの類義語
「枚挙にいとまがない」の類義語は以下の通りです。
どの類義語も「物の数が多い」という意味は共通しています。「あふれんばかりの物がある」「いちいち数えきれないほど多い」といったイメージを持つ言葉が類義語となります。
この中だと、「十指に余るほど」「列挙しきれないほど」の二つは「枚挙にいとまがない」に近い意味だと言えます。ただ、全く同じ意味の言葉(同義語)というのはありません。
例えば「腐るほどある」「ごまんとある」「吐いて捨てるほど」などは悪い事柄が多く存在するような場合に使われます。また、その他の慣用句は具体的な物の数や人数などを表す際に使われます。
「枚挙にいとまがない」は形のあるもの・ないものに加え、良い意味としても悪い意味としても使うことができるという特徴があります。
枚挙にいとまがないの英語訳
「枚挙にいとまがない」は、英語だと次の二つの言い方をします。
「so many(とても多くの)」
「a lot of (たくさんの)」」
どちらも「数が非常に多い」という意味で使うことができます。英語では「枚挙にいとまがない」は、シンプルな形で表現するのがよいでしょう。
例文だと、それぞれ以下のようになります。
There have been so many customs like in Japan.(日本ではそのような習慣は挙げたらきりがない。)
He is having a lot of trouble in this week.(彼は今週、数多くのトラブルにあっている。)
枚挙にいとまがないの使い方・例文
最後に、「枚挙にいとまがない」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。
- アマゾンのこれまでの成功事例は、枚挙にいとまがないほど多いと言えるだろう。
- 彼の特技については、枚挙にいとまがないほど多いので私も把握しきれていない。
- あの夫婦がしているケンカは枚挙にいとまがない。見苦しいのでやめてほしいものだ。
- 日本が抱えている政治の問題は枚挙にいとまがない。特に少子高齢化は深刻である。
- 彼女が仕事で犯したミスは枚挙にいとまがないので、改善してもらいたいものだ。
- イチローから影響を受けた野球選手は、私も含めて枚挙にいとまがないだろうね。
- 浮気が原因で離婚した夫婦は、世の中を見渡しても枚挙にいとまがないと感じる。
- 同じ例を挙げれば枚挙にいとまがない。いちいち数えるのはやめておこう。
「枚挙にいとまがない」は、良い意味と悪い意味の両方で使われます。
良い意味の場合は、多くの長所や良い例、成功事例などを対象とします。一方で、悪い意味の場合は現状の多くの問題や犯してしまったミス・失敗などを対象とします。
また、最後の例文のように、単に「たくさんある」「非常に多い」という客観的な状況を表す際に使われることもあります。
いずれにせよ、「枚挙にいとまがない」は身近な話題から社会の話題まで幅広く使うことができる慣用句です。もちろん、ビジネスシーンでも使うことができますので、状況に応じて何を対象とするかを判断してから使うようにして下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります、
「枚挙にいとまがない」=たくさんありすぎて、いちいち数えきれない。
「語源・由来」=「一つ一つ数え上げるひまがないこと」から。
「類義語」=「腐るほどある・ごまんとある・星の数ほど・十指に余るほど・掃いて捨てるほど・列挙しきれないほど」
「英語訳」=「so many」「a lot of 」
モノの数を表現するときは、様々な言い方があります。「とても多い」「かなり多い」「非常に多い」。「枚挙にいとまがない」とはそのような数の多さを表す際に使われる慣用句だと覚えておきましょう。