頭をもたげる 意味 語源 例文 類語 英語 由来

「頭をもたげる」という慣用句をご存知でしょうか?

漢字だと「頭を擡げる」と表記し、普段の文章や現代文などにおいても使われることがあります。ただ、似たような慣用句で「首をもたげる」が使われることもあります。

そこで今回は、「頭をもたげる」の意味や語源、類語、誤用表現などを含め詳しく解説しました。

頭をもたげるの意味

 

最初に、「頭をもたげる」を辞書で引いてみます。

【あたまをもたげる(頭を擡げる)】

それまで意識にのぼらなかった考えや気持ちなどが、浮かび上がる。

次第に勢力を得て目立つ存在になってくる。台頭する。頭角をあらわす。

出典:三省堂 大辞林

頭をもたげる」には、二つ意味があります。一つ目は、「それまで意識していなかった考えが、思い浮かぶ」という意味です。

使い方としては、以下の通りです。

景気が悪いというニュースを聞き、将来への不安が頭をもたげてきた。

この場合はつまり、今まで意識してなかった将来への不安が頭に浮かんできたということです。

具体的には、学生であれば今後の進路について、会社員であれば将来の年金について、などといった思いです。

そして、二つ目は「台頭する・頭角をあらわす」などの意味です。「台頭(たいとう)」とは「勢いや強さが増すこと」を表します。

こちらも簡単な例文を紹介しておきましょう。

与党内の右派が、頭をもたげてきたようだ。

この場合は、「与党の中の右派勢力が勢いを増してきた」という意味です。政治のニュースなどでよく使われる表現です。

以上、「頭をもたげる」は①「今まで隠れていた考えが浮かぶこと」、②「台頭すること」という二つの意味を持つことになります。どちらの意味でも使えますが、一般的には①の意味として使われることの方が多いです。

頭をもたげるの語源・由来

 

「頭をもたげる」で注目すべきは「もたげる」という動詞です。実は「もたげる」は「持ち上げる」が変化したものと言われています。

つまり、「頭を持ち上げる」が元々の言い方だったのです。それが、だんだんと「持ち上げる・・・持ち上げる・・・もたげる」と変化していったのです。

頭を持ち上げれば、自然と見晴らしはよくなります。そして、以前は見えなかったものが見えてくるでしょう。この事から、「(意識してなかった)考えが浮かぶ」という意味になったわけです。

なお、冒頭でも紹介したように「もたげる」は漢字だと「擡げる」と書きます。

「擡」という字は、元々「擡頭(たいとう)」という言葉としてよく使われていました。この「擡頭」が、現在の「台頭」の元になった漢字だと言われています。

漢字の成り立ちからみても、「頭をもたげる」は「台頭する」という意味も含んでいることが分かるでしょう。

頭をもたげるの類義語

頭をもたげる 類義語 言い換え

続いて、「頭をもたげる」の類義語を紹介します。

  • 思い浮かぶ
  • イメージが湧く
  • 想起される
  • 連想される
  • 眼前に浮かぶ

 

  • 頭角を現す
  • 勢力を伸ばす
  • 急伸する
  • 急成長する
  • 目立ち始める
  • 抜きん出てくる

前半は「考えが頭に浮かぶ」、後半は「台頭する・勢力を伸ばす」という意味の類義語となります。

「頭をもたげる」は、隠れていたものが存在を表すような際にも使うことができます。したがって、「目立つ・抜きん出る」なども類義語に含まれます。

ここで注意すべきは、首をもたげる」という言い方は存在しないということです。

よくこの慣用句を勘違いして、「首をもたげる」と表記してしまう人がいます。しかし、「首をもたげる」だと単に「首を持ち上げる」というよく分からない意味になってしまいます。

おそらくは、「首をかしげる」と似ているため広まったものだとは思いますが、いずれにせよこのような慣用句は存在しません。「首をもたげる」は誤用なので注意してください。

頭をもたげるの英語訳

 

「頭をもたげる」は、英語だと次の二つの言い方があります。

raise one’s head

gain power

「raise」は「持ち上げる」、「gain」は「得る」という意味です。前者は「頭を持ち上げる」というシンプルな表現、後者は「力を得る」という少し遠回しな表現だと言えます。

例文だと、それぞれ以下のような言い方をします。

His anxiety began to raise its head.(彼は不安が頭をもたげてきた。)

His team gained power gradually.(彼のチームはだんだんと台頭してきた。)

頭をもたげるの使い方・例文

 

最後に、「頭をもたげる」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 相手の怪しい動きに対して、彼は不信の念が頭をもたげた
  2. ほっとしたと同時に、今度は別の新たな疑問が頭をもたげた
  3. 犯人は彼ではないか?という疑惑が、ふつふつと頭をもたげてきた。
  4. 自分のミスのせいでは?という不安が、頭をもたげるようにやってきた。
  5. 若手の学者が、頭をもたげる存在となってきたね。非常に楽しみだよ。
  6. AI(人工知能)は、世界経済で頭をもたげてきた分野の技術である。

 

すでに説明した通り、「頭をもたげる」は「台頭する」よりも「思い浮かぶ」という意味で使われることの方が多いです。その中でも、ネガティブな負の感情に対して使うのが基本となります。

具体的に言いますと、不信や不安、疑惑や疑問といった感情です。これらの考えが、ふと頭に浮かぶような時に「頭をもたげる」を使うようにして下さい。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

頭をもたげる」=①それまで意識していなかった考えが、思い浮かぶ。台頭する。勢力を伸ばす。

語源・由来」=「もたげる」は「持ち上げる」が変化した形。(頭を持ち上げると、物事がよく見えるため。)

類義語」=「思い浮かぶ・イメージが湧く・想起される」「頭角を現す・勢力を伸ばす・急伸する」など。

英語訳」=「raise one’s head」「gain power」

「頭をもたげる」は一見するとイメージがわきにくい慣用句ですが、由来を知れば意味を理解することができます。ぜひ正しい場面で使って頂ければと思います。