「雌雄を決する戦い」という言い方はよく聞きます。気になるのは、「雌雄」という言葉ではないでしょうか?
初めて聞いた人は、「めす」と「おす」のどっちが決まることなの?と疑問に感じる人も多いでしょう。そこで今回は、「雌雄を決する」の意味や由来、語源、類義語などを含め詳しく解説しました。
雌雄を決するの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【雌雄を決する(しゆうをけっする)】
⇒戦って勝ち負けを決める。決着をつける。
出典:三省堂 大辞林
「雌雄を決する」は「しゆうをけっする」と読みます。意味は「勝ち負けを決める・決着をつける」などを表したものです。
主にスポーツやビジネス、政治などお互いが勝ち負けを争う分野において使われます。
例えば、高校野球というのはそれぞれのチームが全国制覇を目指して必死で戦います。
特に、決勝戦ともなれば、泣いても笑っても決着が着くことになります。
このような場面では、「明日は決勝戦なので、雌雄を決する日になるだろう。」などのように言われることがあります。つまり、「決着が着く・勝ち負けが決まる」ということです。
「雌雄を決する」とはこのように、勝敗や優劣がはっきりと決まるような場面で使われる慣用句ということになります。
雌雄を決するの語源・由来
「雌雄を決する」は『史記(しき)』の内容が元となっています。「史記」とは、中国前漢の武帝の時代に、司馬遷によって編纂された歴史書のことです。
「史記」の中の一節で、「項羽(こうう)」という人物が次のような言葉を残しました。
「願わくは漢王との戦いを挑み、雌雄を決せん。」
これを簡単に訳すと、「できれば漢王と戦い、決着をつけたい」という意味になります。
当時の「項羽」は、長年に渡る戦争にうんざりしていました。そこで、ライバルの漢王に対して一騎討ちによる決着を望むことになります。要するに、しびれを切らして対決を申し出たわけです。
では、なぜ「雌雄を決すること」が決着をつけることにつながるのでしょうか?それは、「雌雄」が動物の性別を意味しているからです。
「雌」は「メス」「雄」は「オス」とも読める漢字です。
一般的には、動物はメスよりもオスの方が強いとされています。肉食動物の「ライオン」、あるいは草食動物の「シカ」などを見ても一目瞭然でしょう。
そのため、「どちらが雌でどちらが雄かはっきり決めること」から「決着をつける」という意味になったわけです。
もちろん、メスの方がオスよりも強いという場合もあります。例えば、自然界で言えばカマキリなどはメスの方が強いと言われています。ここでの話はあくまで一般論の話だと考えて下さい。
雌雄を決するは差別用語?
ところで、「雌雄を決する」をネットで検索すると、関連ワードで「差別」「フェミ」などの言葉が出てきます。
※「フェミ」とは「フェミニスト(feminist)」の略で、女性の権利拡張や男女平等を主張する人のことを指します。
なぜこのようなワードで検索する人が多いのかですが、その理由は「男性=勝者」「女性=敗者」と決めつけてしまうのでは?という意見があるからだと思われます。
すでに説明した通り、元々はこの言葉は大昔の中国の話が元となっています。当時は、「男尊女卑(だんそんじょひ)」と言い、「女性」=「か弱い生き物」という考え方が主流でした。
しかし、現代では「男女平等」が当たり前のように浸透している世の中です。そのため、当時の感覚と現代の感覚にギャップが生まれているのでしょう。
個人的には、「雌雄を決する」を差別用語と決めつけるのはナンセンスだと思います。
そもそも男と女は、「肉体や脳の構造が全く別の生き物」ということが科学的に証明されています。男には男、女には女の良さがあるのではないでしょうか?
確かに女性が男性にパワーで敵わないのは事実です。しかし、パワーでは負けていても、包容力や温かさ、慈愛など女性には良い面がたくさんあります。
もしもどうしても気になるという人がいれば、場面によって使い分けるという選択肢を取るのも一つの方法かもしれません。「雌雄を決する」は言い換え表現が数多くありますので、必ずしもこの言葉のみを使わなければいけないわけではないからです。
雌雄を決するの類義語
では、その言い換えを含め、「雌雄を決する」の類義語を紹介します。
- 白黒つける
- 勝負を決める
- 優劣を決める
- 決着をつける
- 終止符を打つ
- けりをつける
- 方(かた)を付ける
- 清算する
いずれも、「勝ち負けをはっきりさせる」という意味の言葉が類義語となっています。
この中では、「白黒つける」が言い換えとしては最も適しているでしょう。
「白黒つける」は元々は囲碁が由来となった言葉ですが、この表現であれば相手に対しても周囲に対しても角が立たない表現かと思います。
雌雄を決するの英語訳
「雌雄を決する」は、英語だと次のように言います。
「come to a showdown」
「fight a decisive battle with」
「showdown」は「対決・土壇場」という意味です。「come to」が付くことで、「対決や土壇場が来る」⇒「決着をつける」という意味になります。
また、「decisive」は「決定的な・明白な」などを意味する形容詞です。直訳すると、「決定的な戦闘を戦う」ので、同じく「決着をつける」という意味になります。
例文だと、それぞれ次のような言い方となります。
They finally came to a showdown.(彼らはついに雌雄を決することになった。)
He is going to fight a decisive battle with me.(彼は私と雌雄を決するつもりのようだ。)
雌雄を決するの使い方・例文
最後に、「雌雄を決する」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 雌雄を決する優勝決定戦が、ついに今始まった。
- 雌雄を決するために、対戦相手に戦いを申し込んだ。
- 首位チームとの直接対決が、雌雄を決する一戦となるだろう。
- 因縁の二人が、雌雄を決するべくお互いにらみ合っている。
- 彼らはいずれ、ライバルとして雌雄を決する日が来るだろう。
- 今回の自民党総裁選は、雌雄を決する激しい戦いとなった。
「雌雄を決する」は勝ち負けをはっきりさせるような場面で用いられます。
その中でも、大一番の戦いで使われることが多いです。例えば、スポーツであれば決勝戦、政治であれば総裁選などのようなものです。
逆に言えば、戦いは戦いでもスケールが小さな戦いに対しては使われません。例を挙げますと、トーナメントの一回戦や特に見ごたえがない者同士の対決といったものです。
「雌雄を決する」は戦いは戦いでも、皆が注目して熱狂するような規模の大きな戦いに対して使うのが適していると言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「雌雄を決する」=勝ち負けを決める・決着をつける。
「語源・由来」=どちらがメスかオスかをはっきり決めることから。『史記』が由来。
「類義語」=「白黒つける・勝負を決める・優劣を決める・決着をつける」など。
「英語訳」=「come to a showdown」「fight a decisive battle with」
「雌雄を決する」は興味深い由来を持った慣用句です。これを機に正しい場面で使って頂ければと思います。