「組織」と「体制」は、どちらの言葉も普段からよく使われている印象です。「組織を運営する」「体制を改善する」。
特に企業に勤める社会人の方は「組織図」「体制図」などを作成することもあるかと思います。今回はこれらの言葉の使い分けについて詳しく解説しました。
組織の意味
まずは、「組織」の意味からです。
【組織(そしき)】
①組み立てること。組み立てられたもの。
②一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団。また、それを組み立てること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「組織」とは「共通の目標を達成するために集まった集団」という意味です。
分かりやすい例として、「会社組織」が挙げられるでしょう。会社というのは、従業員全員に共通の目標があります。
- 良い商品を作り出す。
- 会社の利益を上げる。
- 株式の上場を目指す。
このように、皆が同じ目標を達成しようと集まった集団を「組織」と呼ぶわけです。
また、「組織」にはもう一つ大事な特徴があります。それは、個々のメンバーに役割が与えられているという点です。
例えば、会社の中では従業員に対して以下のような役割が与えられています。
- Aさんは営業をする。
- Bさんは事務をする。
- Cさんは経理をする。
いずれも個々の役割が異なっていることが分かるでしょう。逆に言えば、それぞれが役割を持ち、相互に関連し合っている集団でなければそれは「組織」とは言えないことになります。
体制の意味
続いて、「体制」の意味です。
【体制(たいせい)】
①各部分が統一的に組織されて一つの全体を形づくっている状態。
②社会が一定の原理によって組織だてられている状態。政治支配の形式。社会の仕組み。
③その時代の社会を支配する権力。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「体制」とは、「組織の仕組みや形式」もしくは「組織の仕組みや形式が保たれている状態」という意味です。
例えば、会社であれば以下のような組織の仕組みがあります。
- 商品をちゃんと作る。
- その商品をお客様に売る。
- 従業員に給料をちゃんと支払う。
このように、組織の仕組みが保たれている状態を「体制」と言うわけです。
具体的な使い方としては、「社内体制を改善する」などがあります。
会社内では、社員の不祥事や商品の発注ミスなどにより、何か不健全なことが起こるケースが多々あります。
このような場面で、「不健全な状態を良くする」という意味で、体制を改善する」などと言うわけです。
また、「体制」は「政権や支配権を握っている側」という意味で使うこともあります。この場合は「反体制運動をする」などのように、政権と対立する側の勢力を指して用いることが多いです。
組織と体制の違い
ここまでの内容を整理すると、
「組織」=共通の目標を達成するために集まった集団。
「体制」=組織の仕組みや形式。組織の仕組みや形式が保たれている状態。
ということでした。
両者の違いを簡単に言うと、「組織化」できている状態が「体制」だと言えます。
「組織化」とは簡単に言うと「集団がまとまっている」という意味です。すなわち、集団がしっかりと保たれている状態を「体制」と言うわけです。
また、両者は、「組織図」「体制図」などの使い方もします。
「組織」の方は、「集団」を表す言葉でした。したがって、「組織図」の場合は、会社の各部署の名称や序列などを大まかにまとめた図となります。これは、個々の役割や機能を明確にするためです。
一方で、「体制」の場合は「経営体制図」や「プロジェクト体制図」など前に名詞がつくことが多いです。その理由は、「体制」が「状態」という意味を持つ言葉だからです。
「体制図」の場合は、それぞれの役割がどんな状態であるかを「組織図」よりも詳しく書くことになります。
ここで大事なのは、「体制は長期的な仕組みを指す」ということです。例えば、「経営体制」であれば、「会社の長期的な経営の仕組み」を指すことになります。
一時的な仕組みの場合は、「体制」ではなく「態勢」を使うようにします。
使い方・例文
最後に、「組織」と「体制」の使い方を例文で確認しておきます。
【組織の使い方】
- 犯罪組織のリーダーが、ようやく逮捕された。
- 会社内の組織図を作成し、新入社員に対して配る。
- 労働組合を組織し、ブラック企業の撲滅を目指す。
- 組織は個々の考え方を一つに統一しないと成り立たない。
- キリスト教の教会組織は、カトリックとプロテスタントに分かれる。
【体制の使い方】
- 経営体制の改善を目指し、まずはコスト削減を行う。
- 戦前の日本の国家体制は、天皇主権のものであった。
- 独裁体制を維持できなくなったため、その国は崩壊した。
- 反体制派によるデモが、都内で行われたようだ。
- 世界経済は、資本主義体制によって動いている。
「組織」は、「共通の目標がある集団」を表す言葉でした。
上の例文だと、「労働組合」は「労働条件の改善」、「犯罪組織」は「犯罪を行う」、「教会組織」は「宗教を広める」といった共通の目標があるので「組織」を使うということです。
一方で、例文にあるような「国家」や「資本主義」などは「組織の仕組み」だと言えます。「国家」は「国民という組織の仕組み」、「資本主義」は「人々のお金の仕組み」を表した言葉です。よって、こちらは「体制」を使うことになります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「組織」=共通の目標を達成するために集まった集団。
「体制」=組織の仕組みや形式。組織の仕組みや形式が保たれている状態。
「違い」⇒「組織」は「集団」を表し、「体制」は「仕組み」や「形式」を表す。「組織化」できている状態が「体制」
どちらもビジネスではよく使われている言葉です。これを機に両者の違いを理解して頂ければと思います。