法律を決めたり取締役会で決定したりすることを「議決」あるいは「決議」と言います。どちらも政治やビジネスにおいてよく使われているものです。
ただ、この二つをどのように使い分ければいいのかという問題があります。そこで今回は、「議決」と「決議」の違いについて詳しく解説しました。
議決の意味
まず、「議決」の方を辞書で引くと次のように書かれています。
【議決(ぎけつ)】
⇒合議して決定すること。また、その決定された事柄。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「議決」とは「合議して決定すること・決定した内容」などの意味です。
「合議(ごうぎ)」とは、簡単に言うと「二人以上の者が集まって相談すること」だと考えてください。
つまり、「会議などで複数人が集まって相談し、内容を決定すること」もしくは「その決定された内容のこと」を「議決」と言うわけです。
一般的には、「議決」は前者の「決定する」という意味で使うことが多いです。言いかえれば、「動詞として使う」ということです。
では、実際の使い方はどのようになっているのでしょうか?以下は、憲法の一文となります。
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。(憲法第56条)
この場合はつまり、「議事」を開いたときに「出席人数の数が三分の一以上なければ決定できない」ということです。このように、「議決」というのは多数決によって会議の意思を決定するような場合に使うことになります。
決議の意味
続いて、「決議」の意味です。
【決議(けつぎ)】
⇒会議である事柄を決定すること。また、その決定した内容。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「決議」とは「会議で、ある事柄を決定すること・決定した内容」など意味です。
「決議」は、一般的に後者の「決定した内容」という意味で使うことが多いです。例えば、以下のような使い方です。
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。(憲法第69条・内閣不信任決議より抜粋)
「決議案」とは「決定した内容の案」という意味です。つまり、こちらは「名詞として使われている」ということです。
「衆議院」は、日頃から会議によって法律を決めています。その中の一つに、「内閣不信任決議」というのがあります。
「内閣不信任決議」とは簡単に言うと、国会が「今の内閣は信用しない」と決定した内容のことです。この「決定した内容(決議)」を、内閣側が可決したり否決したりするというわけです。
議決と決議の違い
ここまでの内容を整理すると、
「議決」=合議して決定すること・決定した内容。
「決議」=会議で決定すること・決定した内容。
ということでした。
比較すると分かるように、「議決」も「決議」も同じような説明です。よって、両者の意味自体には、ほとんど差はないことが分かるかと思います。
あえて違いを述べるならば、文法的な使い方です。
「議決」は、「決定する」という意味の動詞として使われることが多いです。一方で、「決議」は「決定した内容」という意味の「名詞」として使われることが多いです。
これは両者の漢字の構成を比較すれば分かりやすいでしょう。
「議決」は、「議して決する」と読みます。つまり、「議」が「動詞」の役割をしているのです。これと同じ構成の言葉としては、「議定・議案・議題」などが挙げられます。
一方で、「決議」は「議を決する」と読みます。この場合の「議」は名詞の役割です。同じ構成の言葉としては、「異義・提議・発議」などがあります。
したがって、
「議決」=動詞としての役割。「決議」=名詞としての役割。
という結論になるわけです。
ただし、上記の原則はあくまで一般論です。場合によっては、区別なく使われることもあります。例えば、「定款の変更」や「事業報告書」「財産目録の承認」などに書かれる文言です。
この場合は、「総会の議決を経なければならない」と書く法律もあれば、「総会の決議を経なければならない」と書く法律もあります。
簡単に紹介すると、以下のようなものです。
【議決を用いる例】
- 水産業協同組合法(第四十八条)
- 土地改良法(第三十条)
【決議を用いる例】
- 農業協同組合法(第四十四条)
- 商品取引所法(第六十七・六十八条)
上記の法律については、明確な意味の違いを設けていません。
つまり、名詞としても動詞としても使っているということです。このような場合は、「議決」と「決議」のどちらでも特に問題はないことになります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【議決の使い方】
- 国会の話し合いで、核兵器の禁止が議決された。
- 税金に関する法案が、満場一致で議決された。
- 株主総会で、配当が増額されることが議決された。
- 来週の取締役会で、取締役を集めて議決します。
- 化学兵器禁止について、各国が国連で議決した。
【決議の使い方】
- 教育費無償についての、決議案が提出された。
- 内閣不信任決議によって、衆議院が解散された。
- 安保理決議に基づき、A国に対して経済制裁が行われた。
- 地方自治法によって決議された内容を確認する。
- 新しい取締役が、株主総会の決議によって選任された。
基本的には、どちらも政治や外交などの場面で多く使われます。また、民間だと取締役会・株主総会などで使われることもあります。「名詞で使われているか?」それとも「動詞で使われているか?」はそれぞれの文から判断するようにしましょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「議決」=合議して決定すること・決定した内容。
「決議」=会議で、ある事柄を決定すること・決定した内容。
「違い」⇒「議決」は主に動詞として使い、「決議」は主に名詞として使う。
「議決」と「決議」は前後の漢字を入れ替えただけですが、その使い方は微妙に異なります。「議して決する」のが「議決」、「議を決する」のが「決議」となります。