「絆される」という言葉をご存知でしょうか?主に「情に絆される」「熱意に絆される」などのように使います。
実はこの言葉は、ビジネスや私生活、恋愛など様々な場面で使われています。ただ、同時に誤用が多い表現とも言われています。
そこで今回は、「絆される」の意味や読み方、類義語・反対語などを含め詳しく解説しました。
絆されるの読み方・意味
まずは、読み方と基本的な意味です。
【絆される(ほだされる)】
⇒情にひかされて自分の考えにない行動をとる。人情にからまれる。
〔動詞「ほだす」に受け身の助動詞「れる」が付いたもの〕
出典:三省堂 大辞林
「絆される」は、「ほだされる」と読みます。「ほぐされる」とは読まないので注意してください。
意味は「情に引かれて、自分の考えにない行動をとること」です。
主に相手側の熱意や相手への同情を理由に、要求をのむような時に使います。
例えば、本当はお金を貸したくなかったけども、相手側の熱意に負けてお金を貸してしまった人がいたとします。
このような場面では、「彼は情にほだされて、お金を貸した」などのように言う事ができます。
一般的に、「絆される」は「情に絆される」という使い方が多いです。「情」とは「気持ち」や「感情」などのことを指します。
すなわち、「情に絆される」とは「相手の気持ちや感情が伝わり、自分までその気持ちになってしまう」ということです。
絆されるの語源・由来
「絆される」は、「絆す」に受け身の助動詞「れる」が付いた形です。「絆」という字は、「馬の脚をつなぎ止める綱(つな)」を表しています。
よって、「絆される」を直訳すると「つなぎ止められる」という意味になります。転じて、「(心理的な)束縛を受ける・考えにない行動をとる」などの意味で使われているわけです。
なお、「絆」は「きずな」とも読める漢字で、「きずな」とは「人と人の気持ちをつなぐもの」という意味です。
したがって、「絆される」は必ずしも否定的な意味で使うとは限りません。
場合によっては、「気持ちをつなぎ合わせる」⇒「共感する」という肯定的な意味で使うこともあります。
例えば、「子供の純粋な笑顔にほだされて、真っ当な生き方を目指した」のような使い方です。良い意味で使うかどうかは、その時の状況次第となります。
絆されるの誤用表現
「絆される」を、「騙される」「強制される」といった意味で使うのは誤用です。
誤用される理由としては、絆された結果、お金を貸してしまったり何か買いたくない商品を買ってしまったりと望ましくない状況になってしまうことが多いからだと思われます。
しかし、元々の意味の「心理的に束縛される」というのは、相手の人情に引かれていることが大前提としてあります。
決して相手から一方的に騙されたりすることで心理的に束縛されるわけではありません。
この言葉自体には、「相手からコントロールされる」というような負の意味はないです。
「絆される」というのは、あくまで相手への同情であったり共感、感心といった主体的な理由により生まれるものだと考えてください。
絆されるの類義語
「絆される」の「同義語」、すなわち全く同じ意味の言葉というのはありません。
しかし、似た意味の類義語としては、次のような言葉で言い換えが可能です。
「絆される」は「相手の情に流されて要求を受け入れること」でした。したがって、この中では「心を動かされる」が一番意味として近いでしょう。
「心を動かされる」ということは、相手の雰囲気に呑まれたり相手の影響を受けたりして、最終的に承諾することを意味します。
そのため、広い意味では「呑まされる・影響を受ける・承諾する」なども類義語に含まれます。
なお、「情を絆される」という言い方だと次のような言葉も類義語となります。
- 同情する
- 気の毒に思う
- 哀れに思う
- かわいそうに思う
- 不憫(ふびん)に思う
- 身につまされる
「身につまされる」とは「人の不幸を自分のように感じること」という意味です。頭に「情」が付くと、相手を気の毒に思ったりかわいそうに思ったりといった意味の言葉となります。
絆されるの対義語
一方で、「絆される」の「対義語」は以下の通りです。
「絆される」の反対語は、「相手の影響を受けない様子」を表す言葉となります。
感情的に心が動かされないのはもちろんのこと、見向きもせずにそっけなく対応したりそもそも相手にしなかったりする様子を表す言葉も含まれます。
その他、「束縛されない」「干渉されない」「自由が利く」なども「対義語」と言っていいでしょう。
絆されるの英語訳
「絆される」は、英語だと次のように言います。
「be moved」
「be bound 」
「moved」は「move(~を揺り動かす)」が受け身となった形で、相手の情に引かれた時によく使われる表現です。
また、「bond」は「bind(~を縛る・縛り付ける)」が受け身となった形で、同じく心理的な束縛を受けるような時に使えます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
Moved by his passion, I decided to help him.(彼の情熱にほだされて、私は手助けすることを決めた。)
Bound as I am by affection, I agreed to support her.(情に絆されて、彼女を支えることにした。)
絆されるの使い方・例文
最後に、「絆される」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 情にほだされて、仕方なく彼にお金を貸すことにした。
- 営業マンの熱意にほだされて、思わず商品を購入した。
- 情にほだされたて、好きでもない人と付き合うのは良くない。
- 息子の純粋な気持ちに、自分も心をほだされた感情になった。
- 情にほだされて、今日も彼女とは別れ話をすることができなかった。
- 彼の優しさに絆されて、正式にお付き合いすることになった。
- 子供の情熱にほだされて、自分も英語の勉強を始めることにした。
- 部下の熱意にほだされたのか、上司は許可を出してくれたようだ。
「絆される」は、例文のように様々なシーンで使うことができます。日常的な会話、ビジネスシーン、恋愛など場面を問いません。
ビジネスでは、営業の人に感情移入して、賞品やサービスを購入するような場合に使います。
また、恋愛の場合はそこまで好きではない人からプロポーズを受け、熱い思いや熱心さに心を奪われて付き合うような時に使います。
あるいは、長く付き合っているカップルの片方が、別れ話を切り出したいけども、長年の情などがあるので、上手く切り出せないといった場面で使われることもあります。
いずれにせよ、「絆される」は、相手の熱意や感情に揺さぶられて、最終的には承諾するような時に使う表現です。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「絆される」=情に引かれて、自分の考えにない行動をとる。
「語源」=「絆」という字が「馬の脚をつなぎ止める綱」を表すため。
「類義語」=「押し込まれる・呑まされる・心を動かされる・ 影響を受ける・承諾する」など。
「対義語」=「意に介さない・素知らぬ様子・歯牙にもかけない・にべもない」など。
「英語訳」=「be moved」「be bound 」
「絆される」とは「相手の影響を受けて心を動かされること」です。相手から騙されたり支配されたりするような内容までは含んでいません。ぜひ正しい意味を理解した上で、実際に使って頂ければと思います。