100パーセントは正しくない科学 解説 意味調べノート テスト問題 要約

『100パーセントは正しくない科学』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、高校の定期テストにも出題されています。

ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本作のあらすじや要約、語句の意味、テスト問題などを解説しました。

『100パーセントは正しくない科学』のあらすじ

 

本文は、行空きにより二つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①科学で重要なことは、推論を行うことである。推論には、演繹と推測の二種類がある。演繹は100パーセント正しい結論を得られるが、推測では100パーセント正しい結論は得られない。だが、いくら演繹をしても新しい情報は得られないため、演繹よりも推測のほうが重要である。また、もとの主張が正しい場合、逆や裏が正しいとは限らないが、対偶は必ず正しい。

②推測を行えば、知識は広がる。科学では、必ず何らかの形で推測を使い、推測によって仮説を立て、観察や実験の結果によって検証する。何度も観察や実験によって支持されてきた仮説は、より良い仮説となり、「理論」や「法則」と呼ばれるようになる。だが、科学では、仮説による説明や予測を演繹にしなければならないので、仮説の正しさを保証する仮説形成や検証は、どうしても演繹の逆になってしまう。したがって、科学は100パーセントの正しさを保証できないのだ。

『100パーセントは正しくない科学』の要約&本文解説

 

200字要約科学は新しい情報を手に入れようとする行為なので、演繹よりも推測のほうが重要である。推測によって仮説を立て、観察や実験によって検証し、何度も支持されてきた仮説はそれが理論や法則と呼ばれるようになる。だが、仮説による説明や予測は、仮説から演繹されなければならないので、仮説の正しさを保証する仮説形成や検証は、どうしても演繹の逆になってしまう。よって、科学は100パーセントの正しさを保証できないのだ。(198文字)

筆者の主張を一言で述べるなら、「科学は100%正しくはない」となります。

まず、本文を理解するための前提知識として、「逆・裏・対偶」の意味を理解しておく必要があります。

論理学では、「AならばBである」という主張があった場合、その「逆」を「BならばAである」と言い、「裏」を「AでないならばBでない」と言い、「対偶」を「BでないならばAでない」と言います。

そして、この時のポイントとしては、元の主張が真であれば「対偶」は必ず真となるのに対し、「逆」と「裏」は必ずしも真になるとは限らない、という点です。この関係性をまとめたのが以下の図です。

100パーセントは正しくない科学 演繹 推測 対偶

例えば、「カラスは黒い鳥である。」という主張があった場合、「黒い鳥でなければ、カラスではない(対偶)」という主張は100パーセント正しいです。(「カラスは黒い鳥である。」という前提文は、まぎれもない真実であるため。)

しかし、「黒い鳥はカラスである。(逆)」や「カラスでないなら黒い鳥ではない。(裏)」などは100パーセント正しいとは言えません。なぜなら、世の中には九官鳥やカワウなどカラス以外の黒い鳥はたくさん存在するからです。

このように、「対偶」は100パーセント必ず成立する一方で、「逆」と「裏」は100パーセント成立するとは限りません。この関係性を把握しておくことが、まず重要となります。

その上で筆者は、「科学では演繹よりも推測が重要である」ということを述べています。

「演繹」とは「一般的な理論によって特殊なものを推論し、説明すること」、「推測」とは「ある事柄をもとに推量すること」という意味です。

科学というのは新しい情報を手に入れようとする行為なので、「演繹」では新しい情報は入りませんが、「推測」を行えば知識は広がっていきます。

また、推測によって仮説を立てて検証することで、その仮説が科学で言うところの「理論」や「法則」となっていきます。

そのため、筆者は、科学では演繹ではなく推測の方が重要だと考えているのです。

ところが、ここで問題なのは、仮説の正しさを保証する「仮説の形成」や「仮説の検証」は、演繹の「逆」で保証されるものだということです。すでに説明したように、ある主張の「逆」は必ずしも正しいわけでない、ということでした。

したがって、筆者は、科学というのは100パーセントの正しさを保証できないものだと結論付けているのです。

『100パーセントは正しくない科学』の意味調べノート

 

【推論(すいろん)】⇒ある事実をもとに、未知の事柄をおしはかり論じること。

【演繹(えんえき)】⇒ 一つの事柄から他の事柄へ広げて述べること。一般的な理論によって特殊なものを推論し、説明すること。

【推測(すいそく)】⇒ある事柄をもとに推量すること。

【科学(かがく)】⇒体系的な知識。広い意味では「知識や学問」を指し、狭い意味では「自然科学」を指す。

【仮説(かせつ)】⇒ある現象を合理的に説明するため、仮に立てる説。

【検証(けんしょう)】⇒実際に物事に当たって調べ、仮説などを証明すること。

【理論(りろん)】⇒個々の現象を法則的、統一的に説明できるように、筋道を立てて組み立てられた知識の体系。

【法則(ほうそく)】⇒一定の条件下で、事物の間に成立する普遍的、必然的な関係。また、それを言い表したもの。

【形成(けいせい)】⇒一つのまとまったものとして作り上げること。形作ること。

【暗黙(あんもく)】⇒口に出さないで黙っていること。

【前提(ぜんてい)】⇒物事が成り立つための前置きとなる条件。 論理学で、推論において結論が導き出される根拠となる判断。

【予測(よそく)】⇒事の成り行きや結果を前もっておしはかること。

【典型的(てんけいてき)】⇒その種類の特徴をよく現わしているさま。

【到達(とうたつ)】⇒ある状態や目的に行きつくこと。

【保証(ほしょう)】⇒間違いがないと認め、責任をもつこと。

【真理(しんり)】⇒いつどんなときも変わることのない、正しい物事の筋道。真実の道理。

『100パーセントは正しくない科学』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①結果をスイソクする。

②物事をケンショウする。

アンモクのうちに認める。

ショウコを残す。

⑤品質をホショウする。

解答①推測 ②検証 ③暗黙 ④証拠 ⑤保証
問題2『でも、残念ながら、そうはいかない。』とあるが、なぜそう言えるのか?
解答例科学は新しい情報を手に入れようとする行為だが、演繹では、新しい情報は手に入らないから。
問題3「演繹」と「推測」の違いを、本文中の語句を使い説明しなさい。
解答例「演繹」は一〇〇パーセント正しい結論が得られるが、新しい情報は手に入らない。一方で、「推測」は一〇〇パーセント正しい結論は得られないが、新しい情報を得ることができ、知識は広がっていく。
問題4『新しい事柄を知るためには、一〇〇パーセントの正しさを諦めなくてはならない。』とあるが、なぜか?
解答例科学では、「仮説の形成」「仮説の検証」の手順で新しい事柄を見つけたとしても、それは演繹の逆によって保証されるものなので、一〇〇パーセント正しいものとは言えないため。

まとめ

 

今回は、『100パーセントは正しくない科学』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。