『生物の作る環境』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『生物の作る環境』のあらすじや要約、テスト問題などを解説しました。

『生物の作る環境』のあらすじ

 

本文は、行空きにより二つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①生物学者であるユクスキュルは、環境は客観的に存在して記述できるものである、という従来の認識に異議を唱えた。彼は、ダニの話を例にして、多くの人に強い印象を与えた。巨大な環境の中でダニにとって意味を持つのは、匂い、体温、皮膚の接触刺激のみで、この三つだけでダニのみすぼらしい世界が構成されているとした。それぞれの動物は、まわりの環境の中から、自分にとって意味のあるものを認識し、その組み合わせにより自分たちの世界を構築しているのだ。

②応接間のような部屋を見たとき、同じ部屋であっても、犬が見ると、関心があるのは食べ物と飲み物、人間の座る椅子だけで、他には関心がない。また、ハエから見ると、関心があるのは食べ物と飲み物、上に照っている電灯だけで他は何も存在しないに等しい。人間だと気にする本棚や読書台などは、犬やハエにとっては何の関心もないのだ。このように、動物にとって意味のある世界は、客観的なものではない。動物が生きているのは、彼らの環世界の中である。

『生物の作る環境』の要約&本文解説

 

200字要約ユクスキュルは、環境を客観的で記述可能なものとする従来の認識に異議を唱えた。彼は、主体となる動物は、まわりの環境の中から自分にとって意味のあるものを認識し、その組み合わせによって自分たちの世界を構築していると考えた。同じ部屋であっても、人間が見る「客観的」な部屋と、イヌとハエが見る部屋では関心の度合いにより異なる。動物が生きているのは、意味のない客観的な環境の中ではなく、彼らの環世界の中なのだ。(199文字)

筆者の主張を一言で述べるなら、「動物が生きているのは環世界の中である」ということになります。

「環世界」とは、本文中だと、「主体となる動物が自分にとって意味のあるものを認識し、その組み合わせによって構築される世界」と定義されています。

この事を分かりやすくするために、筆者はいくつか例を挙げています。

例えば、ダニを取り囲む環境には多くの刺激がありますが、その中でダニが「意味のある知覚信号」として認識しているのは、匂い、体温、皮膚の接触刺激の三つのみです。

巨大で豊かな客観的環境に対し、ダニは三つの刺激だけに反応することで生活しているのです。

また、同じ部屋であっても、人間が見る世界とイヌやハエが見る世界は、その見え方が異なることが分かっています。イヌやハエなどの動物にとって、部屋にある全てのものは見えず、大半は意味のないものです。

このように、動物が生きているのは、私たち人間が認識する客観的な環境ではなく、主体となる動物がそれぞれを認識する「環世界」の中にあると筆者は考えているのです。

『生物の作る環境』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

シツドが低い部屋だ。

ヒフがかゆくなる。

エモノをつかまえる。

ビンカンな神経の持ち主。

タナから荷物をとる。

解答①湿度 ②皮膚 ③獲物 ④敏感 ⑤棚
問題2「機械」と「機関士」の違いとは何か?
解答例機械は、ある動きをするときに意思をもたずに動くが、機関士は、ある動きをするときに意思をもって主体的に動くという違いがある。
補足※本来は「機械」は「動力を受けて、目的に応じた一定の運動・仕事をするもの。」を意味し、「機関士」は「機械を動かす人」のことを指す。
問題3筆者が、ダニを「機関士」だと表現しているのはなぜか?
解答例ダニは、それぞれの信号に対して意味のある知覚信号として認知し、それに主体として反応した結果、食物を得て子孫を残しているから。
問題4『それは人間の見る部屋とぜんぜん違うものである。』とあるが、どのようなことが違うのか?
解答例イヌにとって関心があるのは、食べ物と飲み物、人間が座るであろう椅子だけであり、それ以外はイヌにとってないに等しいものであること。

まとめ

 

今回は、『生物の作る環境』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。