大学に提出する課題やテレビ中継の事を「レポート」もしくは「リポート」と言います。学生の方であれば聞きなじみのある言葉でしょう。
ただ、この場合どちらが正しい表記なのか?という問題があります。そこで今回は、「レポート」と「リポート」の使い分けについて詳しく解説しました。
リポートとレポートの意味
まず、「リポート」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。
【レポート(リポートとも)】
①調査・研究などの報告書。レポ。
②新聞・放送などで、現地に取材して、状況や実情を報告すること。また、その報告。取材報告。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記のように、「リポート」と「レポート」は一つの項目として載っています。つまり、辞書での意味はほぼ同じということになります。
一般的には、「レポート」を本見出しとし、「リポート」は補助的に記述する辞書が多いようです。
主な意味としては二つあります。
一つ目は、「調査・研究などの報告書」という意味です。使い方としては、「レポートを提出する。」などのように使います。
これは学校や大学でよく提出するものなので、なじみがあるかと思います。
そして二つ目は、「現地に取材して、状況や実情を報告すること」という意味です。使い方としては、「現地の状況をリポートする。」などのように使います。
この場合は、テレビなどでの中継報告をイメージすると分かりやすいと思います。
以上、二つの意味を紹介しましたが、そもそもなぜ二つの言葉が使われているのでしょうか?さらに詳しく見ていきましょう。
リポートとレポートの違い
まず、大事なのは「リポート」も「レポート」も英語の「report」が由来ということです。つまり、元々一つだった英単語を単に日本語で呼び分けているということです。
「report」は、ローマ字のつづりを見ると「re(レ)」と書かれています。そのため、最初に外来語として日本に入ってきた時は、「レポート」という呼び名で定着しました。
当時の日本新聞協会の「新聞用語集」でも「レポート」と記述されていたようです。ところが、時代とともにだんだんと「リポート」の方も使われるようになりました。
これはなぜかと言いますと、NHKが「リポート」を使うようになったためです。
NHKの「外来語のカナ表記」を見ると、「リポート」と記述されています。そして、NHKの外国語カナ表記の基本方針は以下のように記述されています。
外国語・外来語、および外国の地名・人名などは、その原音を基本とし、なるべく原音に近く書きあらわす。
出典:NHK外国語カナ表記
この場合の「原音」とは「report」の本来の発音です。「report」は、原音だと「rɪpˈɔːt(リポート)」と発音します。
つまり、本来の発音としては「リポート」が近いので、NHKが「リポート」を採用しているということです。
よって、両者の違いをまとめると、
「リポート」=原語の発音を重視した言葉。
「レポート」=原語のつづりを重視した言葉。
となります。
つまり、「発音」か「つづり」のどっちを重視するかということです。
リポートとレポートの使い分け
「リポート」と「レポート」の違いは理解できました。では、結局のところ両者はどう使い分ければいいのでしょうか?
一般的には、
「映像などの中継報告」⇒「リポート」、「書類などの報告書」⇒「レポート」
と使い分けているようです。
前者は、テレビ番組を思い出すと分かりやすいです。
- 現場のリポートは以上です。
- グルメリポートをお願いします。
- 現地リポーターの〇〇です。
どれも映像を伴って誰かが中継している状況がイメージできるかと思います。
一方で後者は、学校や大学のレポート提出を思い出すと分かりやすいです。
- 月末までにレポートを提出する。
- 作成したレポートを発表する。
- レポートのサイズを確認する。
いずれも紙などの書類が「レポート」になっていることが分かると思います。もちろん、これらの使い分けは必ずしも明確にされているわけではありません。
大学の教授でも「報告書」を「リポート」と呼ぶ場合もありますし、TV番組などでも「グルメレポーター」と呼ぶ場合もあります。
先ほども説明した通り、両者の違いは「発音」か「つづり」のどちらを重視するかだけです。したがって、これらの使い分けはあくまで慣習的なものだと考えてください。
なお、先ほども説明した通り、NHKは「リポート」を使うことで統一しています。
そのため、NHKの方針に追随するように、現在では、各新聞社・放送局は「リポート」で統一しているようです。逆の言い方をすれば、「レポート」は使わないということです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「リポート・レポート」=①調査・研究などの報告書。②現地に取材して、状況や実情を報告すること。
「違い」⇒「リポート」は原語の発音を重視した言葉で、「レポート」は原語のつづりを重視した言葉。
「使い分け」⇒映像などの中継報告には「リポート」を使い、書類などの報告書には「レポート」を使う。
一般的には、「リポート」は「中継報告」に使い、「レポート」は「書類報告」に使うことが多いです。ただ、もしも迷った場合は報道機関にならい「リポート」を使うのが無難だと言えます。