日本人の「自然」は、教科書・論理国語にも採用されている文章です。そのため、定期テストなどにも出題されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いです。そこで今回は、日本人の「自然」のあらすじや要約、テスト問題などを解説しました。
日本人の「自然」のあらすじ
本文は、内容から5つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①今日、私たちは「自然」という言葉を英語のnatureと同じ意味に解している。それは、私たちを取り囲む環境の全部から、一切の人為的なものを引き算した余りのことである。また、私たちが「自然」という言葉を名詞として使っているのも、西洋語の「自然」に由来している。
②「自然」という語が「自然環境」を意味する西洋の訳語として使われるようになったのは、わずか100年ほど前からである。「自然」という言葉自身は、それよりもはるか前からすでに日本語としては定着していた。中国でも日本でも名詞として使われることはなく、中国では「おのずからそうであること」、日本では「おのずから」「万一、もしも、不慮のこと」などの意味で使われていた。
③西洋語の「自然」は、客体的・対象的なもの、主体的自己に対して外部から対峙するものであり、古来の日本語の「自然」は、自己の主観的情態性の面に反映させて心で感じ取るものであった。西洋の自然が人間の心に安らぎを与え、緊張を解除するものならば、日本の自然は、自己の一種の緊張感において成立しているものと言ってもよい。
④イギリス式庭園は写実的だが、日本の庭園は表意的である。日本の庭は、そこに表意された自然の真意を鋭敏に感じ取る主体側の感受性が期待されて作られた芸術作品なのだ。
⑤西洋の自然は誰にとっても外的実在だが、日本の自然は一人一人の個人の心の内にある。むしろ、張りつめた緊張感の中で自在性において感じ取っているという事態、あるいはそのような事態を出現させる契機となっている事物である。
日本人の「自然」の要約&本文解説
今日、私たちは、「自然」という言葉を「自然環境」を意味する英語の「nature」と同じ意味だと捉えています。
しかし、日本に「nature」という単語が入って来るよりはるか前から、「自然」という言葉は日本語として存在しました。
元々、「自然」という言葉は「おのずから」「万一、もしも、不慮のこと」などの意味として使われており、西洋語の意味とは本質的にかなり違いがあったのです。
西洋語の「自然」は、客体的・対象的なもの、主体的自己に対して外部から対峙するものであるのに対し、古来の日本語の「自然」は、自然を自己の主観的情態性の面に反映させ、心で感じ取るものでした。
また、西洋の自然が、人間の心に安らぎを与え、緊張を解除するようにはたらくものなのに対し、日本の自然は、自己の一種の緊張感において成立しているものでした。
例えば、日本人は美しい山や川を見て自分の心の中で深く感じ取る感受性を持っていますし、いつ起こるか分からない地震や台風などに対して一種の緊張感のようなものを常に持っています。
一方で、西洋では自然を法則性・規則性によって支配できる対象として捉えるのが基本であり、日本人のように、自然を人力が及ばないもの、自分たちの力ではどうすることもできないようなものとして捉えるようなことはしませんでした。
このように、筆者は、西洋語の「自然」と日本語の「自然」は本質的には異なるものだと考えているわけです。
このことを分かりやすくするために、筆者は西洋と日本の庭園の違いを例に挙げています。
西洋の庭園は写実的であるのに対し、日本の庭園は表意的です。「写実的」とは、「主観を入れずにありのままに表現するさま」、「表意的」とは「意味を表すさま」という意味です。
つまり、日本の庭園というのは、自然の真意を鋭敏に感じ取る主体側の感受性を期待した上で作られる、鑑賞能力が必要なものだと考えているわけです。
これらの説明をふまえた上で、筆者は最終的な結論を述べています。筆者は、日本の自然とは、一人一人の個人の心の内にある張りつめた集中性において感じ取っているという事態、あるいはそのよう事態を出現させる契機となっているものだと結論付けています。
全体を通した筆者の主張としては、”西洋と日本の「自然」は本質的に意味が異なること”、”日本語の「自然」は心の内にあり、緊張感や自在性を持つものであること”という二点を押さえることが重要となります。
日本人の「自然」のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①権力にテイコウする。
②フリョの事故にあう。
③自然のセツリに反する。
④エイビンな神経をもつ。
⑤音楽をカンショウする。
⑥自由をソクバクしない。
⑦失敗をケイキに立て直す。
まとめ
今回は、日本人の「自然」について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。