『瓦を解かないこと』は、現代文の教科書で学ぶ文章です。定期テストなどにも出題されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『瓦を解かないこと』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。
『瓦を解かないこと』のあらすじ
本文は、三つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①自然現象や、私的な日々の暮らし、公的な政治の場など、いたるところの軸がゆがみ、狂いはじめている。おなじ「カイ」でも、「壊」ではなく「解」の方が心に響いてくる。「解」は、固いものを少しずつほぐしていく時間の経過と過程を意識させてくれる。結果として、崩壊に達するとしても、そこへ到るまでの映像が見えてくる。
②「瓦解」という言葉があるように、瓦は結び目を解きほぐすように剥ぎ取られ、全体の均衡を失わせ、取り返しのつかない事態を引き起こす。瓦解のあとにできる瓦礫にも再生のにおいは薄い。だが、古瓦と呼ばれる粘土瓦は、木造建築物が焼け落ちたあとも生き残り、多くの情報をもたらしてくれる。灰色の美濃瓦は、見る者の幻想のなかで人工物から生物へと進化していき、命が宿る。崩落する一枚の瓦を、全体で押しとどめるのだ。
③「瓦博士」と呼ばれる四人によって焼かれた粘土瓦は、法興寺で用いられ、のちに元興寺に移されて再利用された。つまり、日本最古の粘土瓦はまだ瓦解せずに生き延びているのだ。いま必要なのは、元興寺の瓦のように、瓦解そのものを許さないことである。この瓦を言葉に置き換えたとき、崩れに襲われた心の軋みも引き受けられるのではないだろうか。
『瓦を解かないこと』の要約&本文解説
筆者はまず、この国では自然や人々の生活、政治などさまざまなものが壊れかけているのだと述べています。こうした問題を、「瓦解」という語を使い、読者に分かりやすく説明しています。
具体的には、一枚の瓦がほころびると全体がくずれることの脆さ、逆に、崩落しそうになる弱い一枚を全体で押しとどめることの重要性といったことです。
最終的に筆者は、「いま必要なのは、瓦解そのものを許さないことである」「互いの身体を支え合い、最初の瓦を落としてはならない」と述べています。
つまり大事なのは、壊れた後に再生するのではなく、壊れる前に事前に防ぐこと、そして、互いに支え合うことにより一つの問題から全体が崩壊するのを避けるべきだということです。
『瓦を解かないこと』の意味調べノート
【軋む(きしむ)】⇒かたいものがこすれ合って音をたてる。
【氾濫(はんらん)】⇒川の水などが増して勢いよくあふれ出ること。
【極私的(きょくしてき)】⇒極めて私的であるさま。完全にプライベートである様子。
【政(まつりごと)】⇒政治。
【公(おおやけ)】⇒政府。国家。
【不吉(ふきつ)】⇒縁起の悪いこと。
【瓦解(がかい)】⇒一部の崩れから全体が崩れること。
【波及(はきゅう)】⇒物事の影響が波のように徐々に広がること。
【均衡(きんこう)】⇒二つ以上の物事の間で、釣り合いがとれていること。
【取り返しのつかない】⇒元の状態に戻すことが不可能である。
【脳裏に浮かぶ(のうりにうかぶ)】⇒考えなどが頭の中に現れる。
【礫(つぶて)】⇒小石。岩のかけら。ごつごつとしたかけら。
【~の如何(いかん)にかかわらず】⇒事の次第や状況にはかかわらず。
【陶片(とうへん)】⇒陶磁器の欠片(かけら)。焼き物の欠片。
【意匠(いしょう)】⇒設計。デザイン。
【銘(めい)】⇒製作物に入れる製作者の名。
【語り部(かたりぶ)】⇒ある事柄を知り、伝える人。
【逆説(ぎゃくせつ)】⇒矛盾しているようで、実は真実を伝えている説。
【鈍色(にびいろ)】⇒濃いねずみ色。薄黒い色。
【軛(くびき)】⇒思考や行動の自由を束縛するもの。
【自重(じじゅう)】⇒構造物などのそれ自体の重量。
【建立(こんりゅう)】⇒寺院や堂・塔などを建てること。
【葺く(ふく)】⇒瓦・板・茅(かや)などで屋根をおおう。
【工程(こうてい)】⇒作業を進めていく順序・段階。
【伝授(でんじゅ)】⇒伝え授けること。
【遷都(せんと)】⇒都を他の地に移すこと。
【想像を絶する】⇒想像をはるかに超えているさま。想像することもできないほど大きな、激しい。
『瓦を解かないこと』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①政権がガカイする。
②キンコウが失われる。
③ノウリに浮かぶ。
④モウソウにふける。
⑤寺がコンリュウされる。
⑥地方にセントする。
まとめ
以上、今回は『瓦を解かないこと』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。