『届く言葉』は、教科書・現代の国語で学ぶ評論文です。ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。
そこで今回は、『届く言葉』のあらすじや要約、語句の意味などを含めわかりやすく解説しました。
『届く言葉』のあらすじ
本文は、内容により2つの段落に分けることができます。ここでは、それぞれのあらすじを簡単に紹介していきます。
①「はやぶさ」の製作に関わった研究者T君の説明の上手さに、僕は感嘆した。この説明能力の高さは、国民的な理解と支援が必要な巨大プロジェクトならではのものだ。最先端の仕事は、身内の専門家だけが分かればいいわけではなく、多くの他分野の専門家に理解される必要がある。そして、研究の規模が大きくなればなるほど話が通じない人が増えるので、忍耐強く、分かりやすく語るようになる。話を聴きながら、僕も国民の一人として「はやぶさ」プロジェクトを支援したいと思った。単に学術の進歩のためにとどまらず、人類のためになるということを確信できていなければ、ここまで説得力のある言葉は出てこないだろう。
②自分の利益のために話す言葉は、説得力がない。自己利益を求めて語る人間の言葉は、閉じられた集団内で資源を分配する権力を持っている人間だけに向けられる。僕はこれを「内向きの言葉」と呼んでいる。逆に、「外に向かう言葉」はできるだけ多くの人間に届けようと情理を尽くして話す。「届く言葉」は届くが、「届かない言葉」は届かない。違いは、「届く言葉」には発信者の「届かせたい」という切迫があるかだ。できるだけ多くの人に正確に自分の言いたいことを伝えようとする必死さが、相手に言葉を届かせるのである。
『届く言葉』の要約&本文解説
筆者はまず、はやぶさプロジェクトに関わった研究者T君の説明のうまさに驚嘆したと述べています。そして、説得力があり、自分も国民の一人として支援したい気分になったと述べています。
なぜなら、ただ単に「お金がかかるから支援をお願いします」のような自分の利益のための言葉ではなく、「世のため・人類のためになる」という確信が伝わって来た言葉だったからです。
このように、自分の利益のための話す言葉には説得力がなく、逆に、情理を尽くして必死に語るような言葉には説得力があるのだと筆者は続けます。
前者を、「内向きの言葉」、後者を「外向きの言葉」とも呼んでいます。
「内向きの言葉」とは、試験の解答者が採点者に向けて答えを書くような、閉じられた集団内で資源を分配する権力を持つ人間だけに向けられた言葉のことです。
一方で、「外向きの言葉」とは、数値的な評点を与える査定者などはいなく、できるだけ多くの人に受信され、理解されることを求めるような言葉のことです。
つまり、T君の言葉は「外向きの言葉」だったからこそ説得力があり、筆者の心に響いたということです。
最終的に筆者は、相手に「届く言葉」と「届かない言葉」の違いは、「発信者の届かせたいという切迫があるかどうか」だと述べています。
つまり、「届く言葉にはできるだけ多くの人へ正確に伝えたい必死さがある」ということです。これが筆者の最も主張したい内容だと言えます。
『届く言葉』の意味調べノート
【経緯(けいい)】⇒物事の筋道。いきさつ。
【驚嘆(きょうたん)】⇒驚いて感心すること。ひどく感心すること。
【卓越(たくえつ)】⇒他よりぬきん出てすぐれていること。
【最先端(さいせんたん)】⇒ある分野で最も進んでいる部分。
【協働的(きょうどうてき)】⇒複数の組織が同じ目的のために協力して共に働くさま。
【内輪(うちわ)】⇒外部の者を交えないこと。身内。
【先端的(せんたんてき)】⇒時代や流行の先頭に立つさま。
【支援(しえん)】⇒支え助けること。援助すること。
【規模(きぼ)】⇒物事の内容・仕組みなどの大きさ。
【忍耐(にんたい)】⇒苦難などをこらえること。
【利益(りえき)】⇒得になること。得。
【レトリック】⇒巧みな表現や言い回し。
【査定(さてい)】⇒調査した上で決定すること。
【排他的(はいたてき)】⇒他の者を排斥するさま。
【志向(しこう)】⇒心が一定方向へ働くこと。
【パイ】⇒分割できる利益の総体。
【案分(あんぶん)】⇒基準となる数量に比例した割合で物を分けること。
【相容れない(あいいれない)】⇒互いに受け入れない。両立しない。
【情理を尽くす(じょうりをつくす)】⇒相手の気持ちをよく考え、筋道を立てる。
【懇請(こんせい)】⇒心を込めてひたすら頼むこと。
【修辞的(しゅうじてき)】⇒言葉を巧みに飾り立てるさま。
【論理的(ろんりてき)】⇒論理にかなっているさま。きちんと筋道を立てて考えるさま。
【語義明瞭(ごぎめいりょう)】⇒言葉の意味がはっきりしていること。「語義」は「言葉の意味」、「明瞭」は「はっきりしていること」という意味。
【韻律(いんりつ)】⇒詩の音声的な形式。
【切迫(せっぱく)】⇒さしせまること。
【駆動(くどう)】⇒動力を与えて動かすこと
【射程(しゃてい)】⇒届きうる範囲。距離。
『届く言葉』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ワクセイを探査する。
②活動をシエンする。
③流行のセンタンを行く。
④ヒッスの条件。
⑤ハイタ的な考え方。
⑥セイドの高い技術。
⑦シュウジ的に美しい。
⑧シャテイ距離が長い。
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。
(ア)最先端の仕事は、身内の専門家だけが分かっていればいいわけではなく、多くの他分野の専門家に理解されることを求めている。
(イ)内向きの言葉に説得力がないのは、それは自分の分配比率を増やすための言葉であり、査定する者を排他的に志向するからである。
(ウ)「お願いだから話を聴いてくれ」というような懇請のある言葉は、「外に向かう」ことができるため、説得力がある。
(エ)「届かない言葉」とは、相手からすると知らない言葉がたくさん出てきて、文法的に聞き取りにくいものである。
まとめ
以上、今回は『届く言葉』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。