『ありのままの世界はみえない 定期テスト 漢字 ノート 学習の手引き

『ありのままの世界はみえない』は、高校教科書・現代の国語で学ぶ評論文です。ただ、筆者の伝えたいことが分かりにくいと感じる人も多いと思われます。

そこで今回は、『ありのままの世界はみえない』のあらすじや要約、語句の意味などを含めわかりやすく解説しました。

『ありのままの世界はみえない』のあらすじ

 

本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①私たちが見ている世界は、知覚の枠組みだけでは決まらない。例えば、嗅覚の鋭い犬は、常にあらゆる匂いを感知しているわけではなく、感心のある匂いには集中し、そうでない匂いは無視している。同様に、人間が文化や時代によって見え方が違うのは、人によってどこに関心を持つかが異なるためだ。

②同じ映画を見ても、人によって解釈の仕方が異なることがある。その理由は、人は自分たちの文化的な文脈の中にあるものしか見えないからである。我々が映画を見てストーリーを理解できるのは、そこに使われている約束事を理解しているからである。

③つまり、「見る」には約束事が必要ということだ。セグロカモメのヒナは、親鳥を全体の姿で認識しているのではなく、必要な情報だけを取り出し、パターン化してイメージを作り上げている。私たち人間も同様で、ありのままの世界は見たくても見ることができない。ありのままの世界は、切れ目も境界もない連続体であり、名づけることも認識することもできない。

④私たちは、連続体である世界に切れ目を入れ、約束事やパターンをあてはめ、自分にとって理解可能なものに変換することで初めて「見る」ことができる。人は、文化や環境といった約束ごとに従って作り上げられた世界を見ているので、ありのままの世界を見ることはできないのだ。

『ありのままの世界はみえない』の要約&本文解説

 
200字要約ありのままの世界とは、切れ目も境界もない連続体であり、認識しようもないものである。私たちは連続体である世界に切れ目を入れ、約束ごとやパターンをあてはめ、自分にとって理解可能なものに変換することにより、初めて「見る」ことができる。「見る」とは学習であり、文化や環境といった約束ごとに従い、目に入ってくる信号を関連づけ「世界」を作ることである。したがって、ありのままの世界を見ることはできないのである。(199文字)

筆者の主張を一言で言うなら、「ありのままの世界は見えない」ということになります。

「ありのままの世界」とは、「人間の意識とは無関係に存在する現実世界そのもの」のことです。この「ありのままの世界」のことを、筆者は本文中で「どこにも切れ目も境界もない連続体であり、それは名づけようもなければ、認識しようもないものである」「全てがつながってごっちゃになっている世界」などと定義しています。

このごっちゃになっている世界のことを、私たちは見ることはできないと筆者は述べているのです。その主張を証明するために、筆者は三つの具体例を挙げています。

一つ目が、「映画の例」、二つ目が「親鳥のヒナの例」、三つ目が「生まれつき盲目だった患者の例」です。

人や動物というのは、文化や環境といった約束事に従って作り上げた「世界」を見ているため、ありのままの世界に切れ目を入れ、約束事を当てはめ、自分にとって理解可能なものに変換することで、初めて「見る」ことができるようになります。

そのため、「見る」ための約束事をすべて外した、切れ目も境界もない連続体である「ありのままの世界」を、私たちは見ることはできないということです。

全体の構成としては、第一段落で「筆者の主張」、第二・第三段落で「筆者の主張および具体例」、最後の第四段落で「結論」が述べられています。

私たちは無意識に約束事によって作り上げた世界を見ているため、「ありのままの世界を見ることは不可能である」という筆者の主張を読み取ることが、この評論のポイントとなります。

『ありのままの世界はみえない』の意味調べノート

 

【知覚(ちかく)】⇒感覚器官を通して外界の事物を認識し、見分けるはたらき。視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚など。

【鋭敏(えいびん)】⇒感覚が鋭いさま。

【嗅覚(きゅうかく)】⇒においを感じる感覚。

【感知(かんち)】⇒感じとること。気づくこと。

【衛星監視員(えいせいかんしいん)】⇒人々の生活が衛生的に行われているかどうか、監督し指導することを仕事としている人。

【いぶかしむ】⇒あやしむ。不審に思う。

【文化的な文脈(ぶんかてきなぶんみゃく)】⇒その人が属している文化の中での考え方や生き方。

【映像の文法(えいぞうのぶんぽう)】⇒映画などの映像表現における基本的な決まりごと。「文法」は、ここでは「決まり」や「法則」といった意味。

【認識(にんしき)】⇒物事を見定めて理解すること。

【把握(はあく)】⇒しっかりと理解すること。

【先天的(せんてんてき)】⇒生まれつきであるさま。持って生まれたさま。

【途方もない(とほうもない)】⇒並外れた。並々でない。

【生存(せいぞん)】⇒生命を存続すること。

【部位(ぶい)】⇒全体の中である位置を占める部分。

【概念(がいねん)】⇒個々の事物から共通する性質を抜き出して構成される意味内容。

【機能(きのう)】⇒ある物が本来備えている働き。

【遠近感(えんきんかん)】⇒奥行きや遠近の距離の違いが感じられること。

『ありのままの世界はみえない』のテスト問題対策

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

エイビンな聴覚を持つ。

サイボウが分裂する。

カンシの目が光る。

センテンテキな体質。

ヒフから呼吸をする。

⑥状況をハアクする。

カビンの花に水をやる。

解答①鋭敏 ②細胞 ③監視 ④先天的 ⑤皮膚 ⑥把握 ⑦花瓶
問題2「これは人間も同じである」とあるが、どういうことか?本文中の語句を用いて説明しなさい。
解答嗅覚の鋭い犬が関心のある匂いには集中するが、そうでない匂いは無視しているように、人間も関心によって世界を知覚しているということ。
問題3

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)同じ視覚の構造を持つ人間であっても、文化や時代によって見える風景が違うのは、どこに関心をもってイメージをつくるかが異なるからである。

(イ)監視員たちが上映した映画の中に、村人がニワトリしか見えなかったのは、唯一ニワトリだけが村人の生活の文法で解釈できるものだったからである。

(ウ)セグロカモメのヒナは人間とは違い、いま生きる上で必要な情報だけを取り出し、ありのままの世界や自然を、全体として認識しているわけではない。

(エ)「見る」とは学習であり、文化や環境といった約束ごとに従い、目に入ってくる信号を関連づけ「世界」をつくることである。

解答(ウ)セグロカモメのヒナだけではなく、人間も他の動物も、ありのままの世界や自然を、全体として認識しているわけではない。と本文中にはある。

まとめ

 

以上、今回は『ありのままの世界はみえない』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。