『動機の語彙論』は、高校教科書・現代の国語に出てくる評論文です。ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。
そこで今回は、『動機の語彙論』のあらすじや要約、意味調べなどを含め簡単に解説しました。
『動機の語彙論』のあらすじ
本文は5つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①「動機」とは、一体何でどのように形作られているのかという疑問がある。普通に考えれば、動機は行為者の心の中にあり、行為に先立って存在していたものだと考えられる。
②一般的には、行為の理由はあらかじめ心の中に存在し、時には行為の前に、時には事後的に振り返られる形で言語化され、伝えられていくと考えられる。
③しかし、動機はすべての行為について明示的に問われるわけではない。また、動機として理解されるものは、必ずしも行為に先立って、行為者の内面にはっきりと像を結んでいるわけでもない。例えば、友たちにとっさにひどいことを言ってしまったり、自分ではよくわからなかった理由を他人が的確に言い当ててくれることもある。
④このように考えると、動機は個人の心理状態に根差した行為の源泉であるというだけではなく、行為の理由についての「他者と共有されるべき説明」という性格を持つことがわかる。
⑤人は目前の状況や行為についてどのような言語表現を使えばその理由が人々に好ましいと思われたり思われなかったりするのかという動機の適切性の感覚を身につけており、その場にふさわしい言葉を選んで伝えようとする。つまり私たちは、特定の状況や行為に結びついた表現のレパートリーとしての「動機の語彙」を学習し、それを使いこなすすべを身に付けているのである。動機は人々が互いの行為を意味のあるもの、理にかなったものとして提示し合い、了解し合っていく作業の中で組織されるのである。
『動機の語彙論』の要約&本文解説
全体の構成としては、第一段落で読者への問題提起、第二・第三段落で具体例、第四・第五段落で筆者の主張が述べられています。
筆者はまず第一段落で「動機」とは何なのだろうか?と読者に問いかけています。普通に考えれば、動機というのは行為よりも先にあり、個人の中に作られ、それによって行為が引き起こされ理解されると考えがちです。
しかし、筆者は必ずしもそうではないのだと述べています。この事をはっきりと否定しているのが、第三段落の最後の部分です。
ここで筆者は、「動機はすべての行為について明示的に問われるわけではない。また、動機として理解されるものは、必ずしも行為に先立って、行為者の内面にはっきりと像を結ぶわけでもない」と述べています。
この否定を元に、第四段落で、動機というのは行為の理由についての「他者と共有されるべき説明」という性格を持ち、なおかつ人々が互いの意味のあるもの、理にかなったものとして提示し合い、了解し合っていく作業の中で組織される。と述べています。
全体を通して筆者が主張したいことは、最後の第四段落に集約されていると言えます。
『動機の語彙論』の意味調べノート
【動機(どうき)】⇒人が意志を決めたり、行動を起こしたりする直接の原因。
【客観的(きゃっかんてき)】⇒特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま。
【機械的(きかいてき)】⇒型どおりに物事を処理するさま。
【主観的(しゅかんてき)】⇒自分ひとりのものの見方・感じ方によっているさま。
【介して(かいして)】⇒仲立ちとして。
【常識的(じょうしきてき)】⇒普通であるさま。
【事後的に(じごてきに)】⇒物事が起こったあとで。
【発覚(はっかく)】⇒隠していた悪事などが明るみに出ること。
【想起(そうき)】⇒以前にあったことを思い起こすこと。
【反復的(はんぷくてき)】⇒同じことが何度も繰り返されるさま。
【考慮(こうりょ)】⇒物事を色々な要素を含めてよく考えること。
【虚心(きょしん)】⇒心に何のわだかまりもないこと。先入観を持たずに、すなおな心でいること。
【明示的(めいじてき)】⇒はっきりと示されているさま。
【推察(すいさつ)】⇒事情や他人の心情などを想像して考えること。
【根ざした(ねざした)】⇒それに基づいた。
【資産家(しさんか)】⇒財産を多く所有する人。
【安泰(あんたい)】⇒無事で安らかなこと。
【水準(すいじゅん)】⇒価値・能力などを定めるときの標準となる程度。レベル。
【すべ】⇒目的を遂げるための手段。方法。
【付与(ふよ)】⇒さずけ与えること。
【動員(どういん)】⇒ある目的のために、多くの人や物を集めること。
『動機の語彙論』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①社会現象をカイメイする。
②コウギの内容を思い出す。
③朝起きて歯をミガく。
④一生アンタイな人生。
⑤自分のコウイを反省する。
次の内、本文の内容を適切に表したものを選びなさい。
(ア)動機は行為に先立ち、個人の中に形成され、それに基づいて行為が引き起こされ、後から理解されていくものである。
(イ)動機は人に伝えることが可能なものではないため、自分自身で行うのではなく他者の指摘や推察などによって行われる必要がある。
(ウ)動機は個人の心理状態に根差した行為の源泉にとどまるため、行為の理由についての「他者と共有されるべき説明」という性格を持つ。
(エ)動機は閉ざされた個人の心理の中に生じるものではなく、人々が互いの行為を意味のあるもの、理にかなったものとして提示し合い、了解し合っていく作業の中で生まれる。
まとめ
以上、今回は『動機の語彙論』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。