猫は後悔するか 要約 テスト 意味調べノート 漢字 学習の手引き 授業

『猫は後悔するか』は、現代文の教科書で学ぶ評論です。ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張などが分かりにくい部分もあります。

そこで今回は、『猫は後悔するか』のあらすじや要約、テスト対策などをわかりやすく解説しました。

『猫は後悔するか』のあらすじ

 

本文は、大きく分けて4つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①人間はあれこれと後悔する。では猫はどうか。いや猫にかぎらない。人間以外の動物は、後悔をするのだろうか。後悔するということは、事実に反する思いを含んでいる。哲学者であるウィトゲンシュタインは、可能な事実の総体を「論理空間」と呼ぶ。現実の世界というのは、論理空間の中のごく一部分にすぎない。実際に起こっていることを取り巻いて、現実化しなかった可能性が広大に開けているのである。

②論理空間を開くには、世界が対象と概念に分節化されていなければならない。逆に、世界が分節化されているためには論理空間が成立していなければならない。これはどちらが先というものではなく、厳密には同時なのである。

③論理空間の成立のためには、そして分節化された世界の成立のためには、われわれは分節化された言葉をもっていなければならない。可能性とは、言語が表現するものとしてのみ、成り立ちうる。それ以外に可能性の生存場所はない。

④論理空間・分節化された世界・分節化された言語、これらはすべて厳密に同時に成立する。それゆえ、言語をもっていない動物は、可能性の了解(=論理空間)をもたず、分節化された世界にも生きていないことになる。したがって、猫は後悔しない。人間だけが後悔する。

『猫は後悔するか』の要約解説

 
200字要約論理空間を開くには、世界が対象と概念に分節化されている必要があり、世界が分節化されているためには論理空間が成立している必要がある。論理空間の成立と分節化された世界の成立には、分節化された言語をもっていなければならない。論理空間・分節化された世界・分節化された言語は同時に成立するため、言語をもっていない動物は分節化された世界にも生きていない。したがって、人間以外の動物は後悔せず人間だけが後悔する。(199文字)

本文を理解する上で、三つのキーワードを理解することが重要となります。それが、「論理空間」「分節化された世界」「分節化された言語」です。

まず、「論理空間」とは、現実に起こった事実と現実には起こらなかったけども起こり得たという事実、可能性のことを表します。大学教授である筆者が、大リーガーである可能性も想像できるという例から、現実の世界は論理空間の中のごく一部で、現実化しなかった世界が広大に開けていることを説明しています。

次に、「分節化された世界」とは、事実を性質と対象と動作のような構成要素で取り出した世界のことを表しています。「白い」「犬が」「走っている」などのように、対象を分節化することを例にして説明しています。

そして、「分節化された言語」とは「白い」「犬が」「走っている」などのように、分節された言語を確かに持っている状態のことを表しています。実際に対象を分節化するには、そもそも言語がないと成り立たないということです。

筆者は、これら三つは同時に存在するため、猫のような言語を持っていない動物は後悔することはないのだと主張します。

かなり哲学的な内容なのでイメージがしにくいですが、簡単に言えば、動物は人間のような広大な「可能性」や細かく分けられた「世界」あるいは細かく分けられた「言語」を持っていないため、後悔しない、ということです。

『猫は後悔するか』の意味調べノート

 

【後悔】⇒悔やむこと。

【忍び足】⇒相手に気づかれないように、そっと歩くこと。

【可能な事実の総体】⇒起こりうる事実のすべて。

【承知】⇒知っていること。

【矛盾】⇒つじつまが合わないこと。

【抽象画の世界】⇒対象の意味と輪郭が失われた世界。

【概念(がいねん)】⇒一般に、物事の概括的な意味内容のこと。ここでは、物事の性質と物事同士の関係が合わさり生まれた意味を意味している。

【未分節(みぶんせつ)】⇒分けられていないこと。

【反事実的な可能性】⇒今ある事実ではなく、これから起こりうる事実。

【厳密(げんみつ)】⇒厳しくすきがないさま。

【イデア】⇒観念。理念。

『猫は後悔するか』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①過去をコウカイする。

②英語をホンヤクする。

チュウショウ的な考え。

リンカクが失われる。

⑤鉄道のロセン図。

タンジュンな性格の人。

解答①後悔 ②翻訳 ③抽象 ④輪郭 ⑤路線 ⑥単純
問題2『「ウィトゲンシュタイン」は、可能な事実の総体を「論理空間」と呼ぶ。』とあるが、ここでの「論理空間」とは筆者はどのようなものだと述べているか?
解答例現実に起こった事実と現実には起こらなかったけれど起こりえたという事実、可能性の総体。
問題3「なによりもまず、世界が分節化されていなければならない。」とあるが、ここでの「分節化」とはどのようなことか?本文中の語句を用いて説明しなさい。
解答例事実を、性質と対象と動作といった要素から構成されるものとして捉え、こうした構成要素を取り出すこと。
問題4「論理空間を開くには、世界が対象と概念に分節化されていなければならないのである」とあるが、それはなぜか?
解答例論理空間は、分節化された「対象=事物」と「概念=性質と関係」のさまざまな組み合わせの可能性により開かれているため。
問題5筆者はなぜ「猫は後悔しない」と述べているか?「論理空間」「分節化された世界」「分節化された言語」という3つのキーワードを使い、100文字以内で答えなさい。
解答例論理空間・分節化された世界・分節化された言語は、すべて同時に成立する。したがって、言語を持っていない動物、つまり猫は可能性の了解を持たず、分節化された世界にも生きていないので後悔することはないため。(99文字)
問題6

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)現実の世界は論理空間の中の一部分にすぎず、現実化しなかった可能性が広大に開けているが、我々はこの現実の世界を生きるしかないため、ここに問題の根っこがある。

(イ)世界が分節化されているためには、論理空間が成立していなければならないわけではなく、反事実的な了解があるのであれば、世界は分節化されていることになる。

(ウ)われわれは現実に生きるしかなく、この現実の中で空気振動やインクの染み、塩化ビニールの塊などを適当に操りながら、さまざまな可能性を表現するのである。

(エ)論理空間の成立と分節化された世界の成立のためには、われわれは分節化された言語をもっていなければならない。

解答(イ)本文中には、「論理空間を開くには世界が分節化されていなければならないが、逆に、世界が分節化されているためには論理空間が成立していなければならない。」とある。

まとめ

 

以上、今回は『猫は後悔するか』について解説しました。言語について論じた文章は、入試においても出題されやすいです。ぜひ正しい読解ができるようになって頂ければと思います。