普段の会話の中で「万策尽きる」というセリフが登場することがあります。ただ、「万策」とはそもそも何を指しているのかという疑問があります。
そこで本記事では、「万策尽きる」の意味や由来、読み方などを含めなるべく簡単に解説しました。
万策尽きるの意味・読み方
まず読み方ですが、「万策尽きる」は「ばんさくつきる」と読みます。「まんさくつきる」とは読まないので注意して下さい。
意味は「あらゆる手段や方法を試したものの、効果がなくどうしようもなくなること」を表したものです。簡単に言えば、「打つ手がない」という意味です。
主にその人のあきらめの感情や絶望的な心理を表すような際に使われます。
例えば、医者が患者に対してあらゆる手段を講じて治療をしたとしても、もう治らないということが分かったとします。この場合、「万策尽きた」などのように言うことができます。
また、会社の会議でどれだけ頑張って話し合ってもなかなか良いアイデアが出なかったとします。最終的には、時間が切れて皆があきらめてしまったような状態です。この場合も同じく、「万策尽きた」と言うことができます。
つまり「万策尽きる」とは手段や方法が完全になくなり、これ以上何もできない状態になることを表した慣用句となります。
万策尽きるの語源・由来
「万策尽きる」の「万策」は「できる限りのあらゆる手段・方法」という意味です。
「万」は数字の万があるように、「たくさんあること」を表します。転じて、ここでは「すべて」という意味で使われています。
そして、「策」は「策士」「策略」などの熟語があるように「はかりごと・作戦」などの意味があります。
この事から「万策」とは「すべてのはかりごと・作戦」というのが本来の意味となります。
その「すべてのはかりごと」が「尽きる」、つまり「なくなる」のはどうしようもない状態になることを表しています。
以上の事から、「打つ手がなくなること・これ以上何もできないこと」などを表す慣用句として使われているわけです。
なお、「万策尽きる」は、元々は昔の戦(いくさ)において有効な作戦がなくなり、力果てる様子を表す際に使われていたと言われています。
ただ、現在においては日常的な場面からビジネスシーンまで様々な場面において用いられています。
万策尽きるの類義語
「万策尽きる」の「類義語」は以下の通りです。
- 打つ手がない
- やり尽くす
- 逃げ場がない
- 手立てがない
- 手も足も出ない
- お手上げ
- 万事休す
- ギブアップ
- 四面楚歌
- 八方塞がり
- 行き詰まり
基本的には、「打つ手がなくなり、何もできなくなること」を表した言葉が類義語となります。
この中でも「万事休す」は意味もほぼ同じなので、「万策尽きる」の同義語と定義しても構いません。「万事休す」とは「もう施すべき手段がなく、すべてが終わりである」という意味のことわざです。
元々は中国の故事成語が元になった言葉で、「これ以上何をやっても意味がない・何事も全く見込みがない」といった様子を表す際に使われます。
万策尽きるの反対語
逆に、「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
- 見込みがある
- 可能性がある
- 起死回生
- 順風満帆
- 虎口を脱する
- 死線を越える
「起死回生」とは「危機的な状況から一気に体制を立て直すこと」、「順風満帆」とは「物事が滞りなく進むこと」を表した四字熟語です。
また、「虎口を脱する(ここうをだっする)」とは「非常に危険な状態から抜け出ること」、「死線を越える」とは「生死の境を切り抜ける」という意味です。
「万策尽きる」は、絶望的な状態を表す慣用句でした。したがって、反対語は絶望的な状態から回復したり、明るい未来が見えたりするような様子を表したものとなります。
万策尽きるの英語訳
「万策尽きる」は、英語だと次のような言い方があります。
①「exhaust all the possibilities」(すべての可能性をなくす)
②「exhaust all the options」(すべての選択肢を使い果たす)
③「have no other choice」(他に選択肢がない)
「exhaust」は「疲れさせる・疲弊させる」などが原義ですが、ここでは「使い尽くす・使い果たす」などの意味です。
また、「possibility」は「可能性」、「option」は「選択肢」を表します。この事から、「可能性や選択肢を使い果たす」⇒「万策尽きる」と訳すことができます。
最後の③は「他に選択肢を持っていない」⇒「何も手立てがない」となり、同じく「万策尽きる」と訳すことができます。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
He exhausted all the possibilities.(彼は万策尽きた。)
We exhausted all the options.(私たちは万策尽きた。)
I have no other choice than this.(私はこれ以外に選択肢がない。)
万策尽きるの使い方・例文
最後に、「万策尽きる」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 経営再建しようとあらゆる手段を模索していた社長だが、ついに万策尽きてしまったようだ。
- 政府はあらゆる経済政策を行ってきたが、出尽くした感がある。万策尽きるといった感じだろう。
- 急にスマホが壊れたので何とか直そうとしたが、万策尽きたので新しいものに買い替えます。
- 修正する箇所が非常に多いですが、とりあえず万策尽きるまでできる限りのことはやってみます。
- 今回の企画に関しては万策尽きるようなことがあっても、私はあきらめないつもりです。
- あきらめるのは簡単なので、万策尽きる前に色々なことを試していきたいと思います。
- まだ万策尽きたというわけではないので、可能性のある案や代替案を出してもらいたい。
「万策尽きる」は、「もうこれ以上打つ手がない」というお手上げの状況・ギブアップの状況に対して使う表現です。
したがって、具体的な手立てを講じている最中の場合には使いません。例えば、「彼は万策尽きながらも次の手段を講じた」などとの言い方は誤用です。
実際には、「あらゆる手段を使い尽くした」というケースは意外と多くありません。特に、ビジネスにおいては考えられる打開策というのは残されているものです。
そのため、例文のように、「万策尽きる前に~」「万策尽きるまで~」のように未来へ向けて前向きな使い方をすることも多いです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「万策尽きる」=あらゆる手段や方法を試したものの、効果がなくどうしようもなくなること。
「語源・由来」=「万策」は「できる限りのあらゆる手段」、「尽きる」は「なくなる」という意。
「類義語」=「打つ手がない・やり尽くす・手立てがない・万事休す」など。
「反対語」=「起死回生・順風満帆・虎口を脱する・死線を越える」など。
「英語訳」=「exhaust all the possibilities」「exhaust all the options」「have no other choice」
「万策尽きる」は、日常会話や政治、ビジネスなど様々な場面で使われる表現です。意味を理解したからには、ぜひ実際の文章で使って頂ければと思います。