「目を配る」という慣用句をご存知でしょうか?ビジネスで使われることが多く、普段の会話の中でもよく用いられています。
ただ、似たような慣用句が多いため意味が分かりにくい言葉でもあります。特に、類似した言葉である「気を配る」との違いが気になる所です。
本記事では、「目を配る」の意味や例文、反対語、敬語表現などを詳しく解説しました。
目を配るの意味・読み方
最初に、基本的な意味と読み方をご紹介します。
【目を配る(めをくばる)】
⇒注意してあちこちを見る。「周囲に―・る」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「目を配る」は「めをくばる」と読みます。意味は、「注意してあちこちを見ること」です。
例えば、学校の先生が生徒達の勉強への姿勢や生活態度などを注意して見るのは「目を配ること」だと言えます。
また、会社の上司が部下達の仕事ぶりを観察し、おかしな点がないか注意しながら見ることも「目を配ること」だと言えます。他には、幼い子供が怪我しないように、親が注意して見ておくことなども「目を配ること」です。
つまり、「目を配る」とは、見落としがないように、よく注意してあちこちを見る行為を表すということです。
「目」というのは、ここでは「視線」や「洞察力」のことを表しています。そして、「配る」とは「カードを配る」「新聞を配る」などの表現があるように「方々に行き渡らせる・行き届かせる」という意味があります。
そのため、「視線や洞察力を方々に行き渡らせる」⇒「注意してあちこちを見る」という意味になるわけです。
目を配るの類義語
「目を配る」は、次のような類義語で言い換えることができます。
- 目を向ける
- 意識する
- 気にする
- 気に掛ける
- 気を配る
- 注意する
- 注視する
- 注意を向ける
- アンテナを張り巡らす
「目を配る」と類似した言葉はいくつかありますが、共通しているのは「対象へ意識を向ける」ということです。この中でも「気を配る」はよく使われるので、覚えておいた方がよいでしょう。
「気を配る」とは「細かいところまで配慮する」という意味の慣用句です。主に周囲の人間に対して気を使ったり心遣いをするような時に用いられます。
- 来客した人に対して気を配る。
- 彼はさりげなく気を配る人だ。
- 気を配る人は好感が持たれる。
「目を配る」と「気を配る」の違いですが、「相手への思いやりが強調されるかどうか?」にあります。
どちらも「相手の事を注意深く見る」という点は共通しています。ただ、「目を配る」は相手への思いやりというよりも、何かを見落とさないために注意深く見るような時に使います。
対して、「気を配る」の方は相手に対して思いやりや配慮を持つような時に使われます。例えば、相手に不快感を与えたり失礼な印象を与えたりしないようにといった場面です。
両者とも似たような表現ですが、実際は異なる言葉同士なので注意してください。なお、「目を配る」の同義語と呼べる言葉はありません。
目を配るの対義語
「目を配る」の対義語は以下の通りです。
- 油断する
- 見落とす
- 見過ごす
- 見逃す
- 気を抜く
- 気を緩める
- 注意を怠る
- 不覚を取る
- 抜かりがある
「目を配る」は「あちこちを注意して見て、大事な点を見逃さない」という意味を持つ言葉でした。したがって、「大事な点や必要な注意点を見逃す様子」を表す言葉が反対語となります。対義語の場合は何かをうっかりミスしてしまった時に使われる表現なので、良い意味として使われません。
目を配るの英語訳
「目を配る」は、英語だと次のように言います。
①「keep an eye on~」(~を注視する・~から目を離さない)
②「pay attention to~」(~に注意を払う・~に注意を向ける)
①の「keep」は「保つ」という意味の動詞、「eye」は「目」を表す名詞、「on」は「接触」を意味する前置詞です。直訳すると、「~に目を保ち続ける」という意味になります。転じて、「注視する・目を離さない」などの意味を持つ熟語となります。
また、②の「pay」は「払う」、「attention」は「注意」、「to」は「~に」という意味の前置詞です。こちらも熟語で「~に注意を払う」という意味を持つ表現です。
例文だと、次のような言い方となります。
Please keep an eye on a child.(子供から目を離さないようにして下さい。)
You should keep an eye on him.(あの男は注視するべきである。)
We pay attention to this problem.(私たちはこの問題に注意を向けています。)
He should pay more attention to his students.(彼はもっと生徒に注意を払うべきだ。)
目を配るの使い方・例文
最後に、「目を配る」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 優秀な先生は、クラスの生徒一人一人に対して目を配る。
- 子供がいたずらをしないように、親は目を配ることが重要だ。
- この仕事は、失敗しないように細部にまで目を配る必要がある。
- 警備員は、不審者がいないかどうか常に目を配るようにしている。
- 彼女は自分の部下に対して、目を配ることができる上司である。
- 彼らは「国はもっと社会的弱者に目を配るべきだ」と主張した。
- 世界全体に目を配ると、億万長者と呼ばれる人は多数存在する。
「目を配る」は、例文のように「あちこちと注意して見る行為」を表す時に使われます。
この時の「見る行為」というのは、立場が上の者から下の者へと向けられる場合が多いです。例えば、「先生から生徒へ」「上司から部下へ」「親から子へ」といった関係性です。
逆に、自分の先輩や上司など目上の人に対して「目を配る」とは通常言いません。「目を配る」は、自分と同格もしくは自分より下の者に対して使われる慣用句となります。
もしもビジネスなどで目上の人に「目を配る」を使いたい時は、丁寧語を使った敬語表現に言い換えるのが適切です。例えば、「ご配慮下さいまして、ありがとうございます」などのような言い方です。
「目を配る」を敬語にしたい時は、このように別の表現方法をとります。「目を配って頂き、ありがとうございます」などとは言いません。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「目を配る」=注意してあちこちを見ること。
「類義語」=「目を向ける・意識する・気にする・気を配る・注意する」など。
「対義語」=「油断する・見落とす・見逃す・気を抜く・注意を怠る」など。
「英語訳」=「keep an eye on~」「pay attention to~」
「目」を使った慣用句は多く存在します。「目を配る」とはその中でも、見落としや見逃しがないように、注意深く見る行為を表すということです。ぜひこれを機に正しい使い方を覚えて頂ければと思います。