日々のニュースを聞いていると、「円高」「円安」という言葉がよく登場します。
「今日は円高です」「きのうよりも円安です」。
ただ、この二つの違いが分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、「円高」や「円安」の意味を小学生でも分かるようになるべく簡単に解説しました。
円高と円安の意味
まずは基本的な意味からです。
「円高」とは「外国のお金と比べて円の価値が高いこと」を意味します。一方で、「円安」とは「外国のお金と比べて円の価値が安いこと」を意味します。
当たり前のことかもしれませんが、世の中に出回っているお金は「円」だけではありません。日本では「円」というお金が使われていますが、世界ではもっと様々なお金が使われているのです。
例えば、以下のようなお金です。
- アメリカ⇒ドル
- ヨーロッパ⇒ユーロ
- 中国⇒元(げん)
- 韓国⇒ウォン
話す言葉や食ベものなどが違うように、国によってお金の種類も違うということです。
ここで大事なのは、価値が高いとか低いというのは「外国のお金に対して」ということです。
日本国内のお金(円)に対して、「高い・低い」などの話をしているわけではありません。
外国のお金に対して円の価値が高ければ「円高」、円の価値が低ければ「円安」と呼んでいるのです。
では、価値が高いとか低いというのは何を基準に決めているのでしょうか?くわしく見ていきましょう。
円高と円安の仕組み
円の価値は、毎日数秒ごとに高くなったり低くなったりしています。その理由は、世界中の投資家(お金をもうけようとする人)がお金を売ったり買ったりしているからです。
彼らは、「外国為替市場(がいこくかわせしじょう)」と呼ばれるところで毎日お金を売り買いしています。
「外国為替市場」とは「国のお金同士を自由に売り買いできる場所のこと」を表します。別の言い方をするなら、「お金同士を両替えするところ」です。
具体的には、1ドルを持っている人と100円を持っている人がお金を交換したりしているのです。そして、円を買いたい人が多くなったり少なくなったりすることにより、毎日の日本円の価格は上下しているのです。
ここで、実際の「円高」と「円安」のケースを見てみましょう。
今現在、1ドル=100円であったとします。しかし、その後、1ドル=90円に変わりました。
この場合「円高」でしょうか?それとも「円安」でしょうか?
答えは、「円高」です。
「100円から90円になったから円安じゃないの?」と思った人も多いはずです。
確かに100円よりも10円安くなったので、90円です。しかし、よく考えてみてください。
今までは、1ドルを買うのに100円を出せば交換することができました。
ところが、1ドル=90円の場合、今までよりも10円少なく払っても同じ1ドルを購入できるのです。
これは円を持っている側としては、とても有利な取引と言えるでしょう。何しろ、1ドルをもらえた上に、手元に10円が残るわけですからね。
したがって、この場合は円の価値が上がっているので「円高」と言うのです。
逆に、1ドル=100円が1ドル=110円になったとしましょう。この場合は「円安」になったと言います。
なぜなら、今までよりも10円多く払わないと、同じ1ドルを購入できないからです。
つまり、円を余計に多く払わなければいけないほど、円の価値が下がったということです。
大事なのは、値段が高いとか安いで考えるのではなく、「お金の価値が高いか低いかで考える」ということです。
お金というのは、多ければ多いほど価値が下がり、少なければ少ないほど価値が上がります。
分かりやすい例だと、1億円を持っているAさんの1万円と、2万円しか持っていないBさんの1万円では価値が違います。
Aさんにとっての1万円はなくなってもいいほど価値は低いですが、Bさんにとっての1万円は命と同じくらい価値が高いものです。
つまり、お金というのは持っている量によって価値が上下するものなのです。
話を戻しますと、日本国内でも「円」の量が増えたり減ったりします。「円」の量は、日本銀行(国の中央銀行)の政策や海外の事件など、色々な要因によって増えたり減ったりするからです。
したがって、もしも「円」の量がとても少なくなった場合、「1ドル=50円」などの超円高になる可能性もありえます。この場合、1ドルをたった50円出せば買えるほど「円」の価値がものすごく高くなったということです。
このように、円の量とお金の価値に注目することが、円安と円高を覚える上で大事なポイントとなります。
円高と円安はどっちがいい?
ところで、円高と円安は日本にとってどっちがいいのでしょうか?
これは、会社によって異なります。まず、輸出をメインにしている会社は、「円安」の方が良いです。
例えば、日本から海外に自動車を輸出しているような会社です。
日本の自動車を海外の人へ売った場合、円ではなくドルで支払いを受けます。
そのドルを日本の社員に給料として支払う場合、当然、その前に円と交換する必要が出てきます。
この場合、1ドル=100円よりも1ドル=110円のほうが社員に多くの給料を払うことができます。これは会社にとって大きなメリットです。
厳密に言うと、多く手に入れた円(利益)によって、その分、自動車を売る価格を下げたりします。
すると、車が売れやすくなるので、さらに利益が出やすくなるというメリットもあります。
このように、「円安」というのは輸出がメインの会社には追い風となるわけです。
逆に、輸入をメインにしている会社は、「円高」の方が良いと言えます。
例えば、海外から日本に食料を輸入している会社などです。日本の飲食店は、海外から様々な食料を購入しています。
この場合、1ドル=100円よりも1ドル=90円のほうが多くの食料を安く購入することができます。
また、これらの会社は電気代や運送代をまかなうために、大量の原油を輸入しています。原油は海外からしか買えません。
そのため、値段が安いというのは輸入企業にとって大きなコスト削減になるのです。
その他には同じような理由で、海外旅行に行く人にとっても円高は大きなメリットだと言えます。なぜなら、海外の商品を安く買うことができるからです。
円高と円安の基準
「円高」と「円安」には、何か基準があるのでしょうか?
例えば、「〇〇円以上になれば、円安」のようにはっきりした基準があれば分かりやすいですよね?
結論から言いますと、円高と円安に明確な基準はありません。
すでに説明した通り、「外国為替(がいこくかわせ)」というのは毎日変動しています。
したがって、ニュースなどでは
- 昨日に比べて〇〇円だけ円安になりました。
- 去年と比べて円高になりました。
- 7日ぶりに円安で取引を終えました。
のように様々な言い方をするのです。
きのうに比べれば「円安」だけど、おとといに比べれば「円高」などのケースはしょっちゅうあります。そのため、比較するものが何なのかによっても変わってくるのです。
一般的には、1ドル=110円くらいが日本経済にとっては望ましいと言われています。
しかし、この数値もあくまで経済学者が出した数字であり、明確な基準と定めているわけではありません。
経済はその時の国の情勢によって大きく変わるため、この数値が良いという物差しはないのです。
なお、1960年代までは「固定相場制」といって「1ドル=360円」とレートが固定されていた時期もありました。
しかし、現在は「変動相場制」となり、自由に価格が決められるようになっています。
その結果、売りたい人と買いたい人が自由に売買する市場となっています。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「円高」=円の価値が外国のお金に対して高くなること。例(1ドル100円⇒1ドル90円)
「円安」=円の価値が外国のお金に対して低くなること。例(1ドル100円⇒1ドル110円)
「値動きの仕組み」⇒世界中の投資家が常にお金を売ったり買ったりしているため。
「どっちがいいか?」⇒「円安」は輸出中心の会社にとってはメリット。逆に輸入中心の会社にとってはデメリット。「円高」の場合はその逆。
なるべく分かりやすい解説を心がけましたが、いかがでしたでしょうか?これを機に正しい意味を理解して頂ければ幸いです。