「公募」と「入札」は、どちらもビジネスにおいてよく使われています。また、両者が組み合わさった「公募型競争入札」などの言葉も目にします。
ニュースなどでもよく使われるこれらの言葉ですが、違いはどこにあるのでしょうか?今回は、「公募」と「入札」の違いについて解説しました。
公募の意味を詳しく
まず、「公募」の方の意味を辞書で引いてみます。
【公募(こうぼ)】
①広く一般から募集すること。「広告作品を公募する」「社員の公募」
②広く不特定多数の投資家を対象に、新株または公社債を募集すること。⇔私募。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「公募」とは、「広く一般から募集すること」です。
「公募」は「公(おおやけ)に募(つの)る」と書きます。つまり、条件などを絞らずに不特定多数の人から応募を受け付けることを「公募」と言うのです。
公募する対象は多くあり、例えば短歌や詩などの俳句、絵画、小説などがあります。その他、辞書の説明にもあるように株式用語としての意味もあります。
株式用語としての「公募」は、「不特定多数の投資家を対象に新株を募集すること」です。
最もよく行われるのが「公募増資」で、新しい株と引き換えに投資家から資金を集めることが行われます。
いずれにせよ、広く様々な人から何かを募集する行為を「公募」と呼ぶことになります。
入札の意味を詳しく
次に、「入札」の意味です。
【入札(にゅうさつ)】
⇒物品の売買、工事の請負などに際して契約希望者が複数ある場合、金額などを文書で表示させ、その内容によって契約の相手を決めること。また、契約希望者が、その文書を提出すること。競争入札。いれふだ。「業務の委託先を入札で決める」「護岸工事に四社が入札する」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「入札」とは簡単に言うと、「金額を出して契約するという意思表示を出すこと」です。
例えば、ネットオークションで何か買いたいものがあったとします。そこで、落札者の方が「500円なら購入する」という意思表示を出しました。
この事を、「入札」と言うのです。
「入札」は一般に国や自治体などの官公庁が、民間の業者に対して仕事を発注する際に使われます。
発注する仕事の種類としては、物流、工事、清掃、人材派遣など多岐に渡りますが、いずれも公的機関が仕事をどこの業者に任せるかを選別します。
そして、実際に業者が入札して条件が満たされれば、「落札」という形になりお互いの契約が成立します。最終的に、その業者は自治体から任された仕事を行っていくということです。
以上が、「公募」と「入札」の違いですが、比較しても分かるように全く意味の異なる言葉です。
ではなぜ両者の違いが注目されるのかと言いますと、それは「公募型競争入札」という言葉があるためです。
これは入札方式の一つで、自治体が民間の業者に仕事を発注する際の方式の一つです。
次章ではこの入札方式の種類をそれぞれ解説していきます。
公募型競争入札とは
一般競争入札
「一般競争入札」とは「希望者同士で競争することで、契約者を決める入札方式」のことです。
入札方式の中で最も多いもので、参加資格があれば基本的にどの企業でも参加することができます。
「一般競争入札」は、誰もが同じ条件で参加できるため、中小や零細などの小規模な企業にも落札のチャンスがある方式です。
一方で、価格のみの勝負となるので、受注者側とすると利益が薄くなってしまう場合もあります。
ただ、受注者側としては、「一般競争入札」で実績を作れば、その後の取引の可能性が広がるためメリットが多い方式だと言えます。
公募型競争入札
「公募型競争入札」とは「公募と指名競争の要素を組み合わせた入札方式」のことです。
名前の通り、まず公募によって申込のあった入札参加者の中から一定の資格を有する業者を募ります。
そして、その業者の中から複数の業者を選定し、選定した業者同士で競争入札させるという仕組みです。
「公募型競争入札」は、一定の選定基準に達していないと参加自体をすることができません。
しかし、特定の資格を持っているなど、一定の選定基準を満たすことができれば参加をすることができます。
入札に参加することができれば、他に参加する企業自体は少ないため、自社が落札される確率は必然的に高くなります。
指名競争入札
「指名競争入札」とは「発注者側が指名した特定の企業だけが入札できる入札方式」のことです。
「指名競争入札」は、発注者側からの指名があって初めてスタートします。
したがって、業者側から参加を希望したとしても、指名がない場合は参加自体をすることができません。
ただ、仮に発注者から指名されることがあれば、参加する企業が限定されているので同じく落札される確率は上がります。
指名競争入札の欠点は、指名されなかった企業の理由などが公に公開されない点です。
企画競争入札
「企画競争入札」とは「受注者側に企画書の提出を求め、その企画書を元に契約する入札方式」のことです。
仕事の内容によっては、自治体側も事前に大まかな企画を把握しておきたい場合があります。
そこで行うのが、発注者側が受注者側に対して企画書の提出を求めるということです。
まず不特定多数の企業に対して、企画書の提出を行わせます。そして、提出された企画書を確認して、最も適した提案をした企業と契約をするという流れです。
受注者側としては、金額よりも企画内容が重視されるため、うまく契約を結べれば大きな収益を獲得することができます。
ただ、企画書などの用意に手間がかかるため、仮に未契約になった場合はそれまでのコストが無駄になってしまうというデメリットがあります。
本記事のまとめ
以上、今回は「公募」と「入札」の違いについて解説しました。
「公募」=広く一般から募集すること。
「入札」=金額を出して契約するという意思表示を出すこと。
「一般競争入札」=希望者同士で競争することで、契約者を決める入札方式。
「公募型競争入札」=公募と指名競争の要素を組み合わせた入札方式。
「指名競争入札」=発注者側が指名した特定の企業だけが入札できる方式。
「企画競争入札」=受注者側に企画書の提出を求め、その企画書を元に契約する入札方式。
「公募」と「入札」は、本来別の意味を表す言葉です。ただ、国や自治体などの官公庁の入札においては、一つの言葉の一部として登場することがあります。その場合は、「公募」して選定した後に「入札」させる方式のことだと覚えておきましょう。