「運用」と「運営」は、どちらもビジネスでよく使われている言葉です。主な使い方としては「システムの運用」「サイトの運営」などがあります。
ただ、両者とも似たような使い方がされているため、使い分けの際に迷うという人も多いと思われます。そこで本記事では、「運用」と「運営」に違いについてなるべく分かりやすく解説しました。
運用と運営の意味
最初に、それぞれの意味を簡潔に述べておきます。
「運用」=モノの機能を生かして、うまく用いること。
「運営」=モノの機能を生かして、うまく動かしていくこと。
「運用」は「モノの機能を生かして、うまく用いること」です。「運用」は「用いる」の「用」と書くように、「用いること・使うこと」に焦点が当てられた言葉となります。
対して、「運営」は「モノの機能を生かして、うまく動かしていくこと」です。「営」は「営利」「営業」などのように、「利益を追求する」という意味に考えられがちですが、ここでの「営」は利益を表しているわけではありません。
「営」という字には「行う・営む」などの意味もあります。したがって、「運営」の方は、「行っていくこと・営んでいくこと」などを表した言葉となります。
では、大まかな意味が分かった所でそれぞれの使い方を詳しく見ていきましょう。
運用の意味を詳しく
「運用」は、辞書だと次のように記述されています。
【運用(うんよう)】
⇒そのもののもつ機能を生かして用いること。活用。「法規の運用を検討する」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「運用」とは「そのもののもつ機能を生かして用いること」です。
主に、モノが持つ機能や能力を生かして、効果的に利用するような際に使われます。
例えば、「資産運用」という言葉があります。「資産運用」とは、自分の持っている資産を株や不動産に投資したり定期預金を組んだりして、うまくお金を増やしていくことです。
「持っている資産を上手く利用する」という意味で、「資産を運用する」などと言ったりもします。これと同じ用例としては、「資金運用」などが挙げられます。
他には「システム運用」などの言葉もあります。
「システム運用」とは「システムが持つ機能を発揮して、上手く用いること」です。
具体的に言いますと、サーバーやネットワークなどに異常がないかチェックしたり、トラブル発生時の原因の追究を行ったりといったことです。
主に社内システムのインフラ環境を整備する際に、「システム運用」という言葉が使われます。
基本、「システム」は「運用する」と言いますが、社内ではなく社外のシステムへ営業行為などをする場合は、「運営」を用いることもあります。
【運用の類義語】
「活用」=物や人の機能・能力を十分に生かして用いること。
「利用」=物やシステム、施設等が持つ機能を十分に使うこと。
「施用」=目的に当てはめて使用すること。
「運用」の類義語はいくつかありますが、この中では「活用」が最も意味としては近いです。
ただ、「活用」は文法用語で「語が体系的に変化すること」という意味もあるので、この点で「運用」とは異なる言葉だと言えます。
運営の意味を詳しく
次に、「運営」の意味です。
【運営(うんえい)】
⇒団体などの機能を発揮させることができるように、組織をまとめて動かしていくこと。「大会を運営する」「運営委員会」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「運営」とは「機能を発揮できるように、組織などを動かしていくこと」です。
主に、「組織や団体、制度、モノなどが持つ機能を十分に発揮できるように動かしていく」という意味で使われます。
例えば、「大会の運営」という言い方がよくされます。
これは、大会本来が持つ機能を上手く発揮できるように、主催者である会長がうまく組織を動かしていくという意味です。
具体的に言いますと、大会の日時や場所、参加者の人数、賞品の有無などを組織内で決めてそれをうまくまとめ上げていくといったことです。
これと同じ用例としては、「協会の運営」「組織の運営」などが当てはまります。
他には、「ホームページの運営」といった言い方もよくされます。「ホームページの運営」とは、ホームページがうまく機能するように稼働させていくことです。
記事の更新やデザインの変更などのメンテナンス、あるいはユーザーからの問い合わせに対応したりといった業務も含まれます。同じ用例としては、「サイトの運営」なども当てはまります。
「運営」は基本的に組織や団体に対して使われますが、このように「モノ」に対して使われることもあります。
【運営の類義語】
「管理」=全体をうまく統制してまとめること。
「統括」=多くの人や機関を一つに統制してまとめること。
「指導」=ある目的や方向に向かって教え導くこと。
「運営」と似た言葉で「経営」がありますが、厳密に言いますと「経営」は類義語には含まれません。
「経営」とは「組織の中で収益が上がるように動かしていくこと」です。
つまり、「経営」はあくまで経済的にうまくいくように営利目的・利益目的で行われるということです。
一方で、「運営」の方は営利目的・利益目的かどうかは関係ありません。
「運営」は、営利や利益などではなく組織をまとめ上げていくことに重点が置かれた言葉となります。
運用と運営の違い
以上の解説を踏まえますと、両者は次のように定義できます。
「運用」=機能を生かしてうまく用いること・使うこと。
「運営」=機能を発揮できるようにうまく動かしていくこと・まとめ上げていくこと。
簡単に言えば、「使うのか?それとも動かすのか?」ということです。
「運用」は「使うこと」、「運営」は「動かすこと」を意味します。
例えば「資産」や「資金」など対象が使うものであれば、それは「運用」を用いることになります。
対して、組織や団体など対象が動かすものであれば、それは「運営」を用いることになります。
したがって、以下のような使い方は誤りということになります。
「資産を運営する」「大会を運用する」
なお、サイトやホームページなどに関してはすでに説明したり原則として「運営」を用います。
ただ場合によっては「運用」を用いることもあります。これは両者共にサイトという機能は「使うもの」であり、なおかつ「動かすもの」でもあるためです。
「サイトの運用」となると、「サイトという機能を生かして使う」という意味になり、なんら間違ったことは言っていません。
とはいえ、一般に考えれば「サイト」というのは、管理人が上手く機能を使って動かし続けることによって稼動しています。
したがって、どちらを使えばよいか?と言われたらやはり「運営」を使うのが妥当ということになります。
運用と運営の例文
最後に、「運用」と「運営」の使い方を例文で紹介しておきます。
【運用の使い方】
- この不景気の時代において、資産運用の重要性は増すばかりである。
- システム運用の仕事が増えたことにより、IT業界は大きく発展してきた。
- 今回作られた機械の運用期間は、約10年という長期を想定している。
- 昨年作られた法令は、現在適切に運用されている状況だと言える。
- 年金の運用実績が発表され、今年度の収益率・収益額などが判明した。
【運営の使い方】
- 店舗を運営するには、家賃や人件費などの固定費がかかる。
- 人手が足りないので、イベントの運営スタッフを募集します。
- サッカー協会の運営は、すべてあの会長が一手に引き受けている。
- Webページの運営をアウトソーシングして他社に任せることにした。
- 運営がしっかり行われていれば、このようなミスは起こらなかっただろう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「運用」=モノの機能を生かして、うまく用いること・使うこと。
「運営」=組織や団体、制度、モノなどの機能を生かせるよう動かしていくこと。
「運用の類語」⇒「活用・利用・施用」「運営の類語」⇒「管理・統括・指導」
「運用」は「用いる」と書くように「使うこと」です。対して、「運営」は「営む」と書くように「動かしていくこと」です。このように漢字本来の意味を覚えておけば、違いを忘れにくいと言えるでしょう。