「下手の横好き」ということわざは、普段の会話やビジネスシーンなどで用いられています。
ただ、実際の使い方が分かりにくいと感じる人も多いようです。また、そもそもなぜ「横」なのかといった由来が気になることわざでもあります。
そこで今回は、「下手の横好き」の意味や語源、類語、対義語などを詳しく解説しました。
下手の横好きの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【下手の横好き(へたのよこずき)】
⇒下手なくせに、その物事をむやみに好み、熱心なこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「下手の横好き」は「へたのよこずき」と読みます。意味は、「下手なくせに、その物事を好きで熱心なこと」です。
例えば、あなたの趣味がピアノだったとしましょう。ピアノを弾くこと自体は、好きでたまらないような状態です。
ところが、実際のピアノの技術はどうかというと、とても人には見せられないほど下手なレベルでした。このような時に、「ピアノは下手の横好きですが、よく弾いています。」などのように言うわけです。
「下手の横好き」は、多くの場合、自分の趣味を謙遜するような時に使います。別の言い方をするなら、自分の本業(仕事)以外のことを謙遜する時に使うということです。
このことわざは、自分の本業に対して使うようなことはありません。例えば、歌が下手なアイドルや手先の不器用なマジシャンが「下手の横好きですが、~」とは言いません。なぜなら、それが自分の本業だからです。
下手の横好きの語源・由来
「下手の横好き」の「横」は「縦・横・高さ」などの「横」を指しているわけではありません。
「横」には「本来の枠から外れている・わき道にそれている」などの意味があります。これは「話を横にそらす」「横から口を出す」などと言う時の「横」と同じ意味です。
熟語の一部としても「横」は、「本来の枠を外れている」という意味で使われています。
- 「横行(おうこう)」=悪事がしきりに行われていること。
- 「横道(おうどう)」=人間としての正しい道を外れていること。
- 「横流(よこなが)し」=正しい手続きを経ずに、モノを販売すること。
つまり、「横好き」には「本来の枠からそれているものが好き」という意味が含まれていることになります。
本来の枠からずれていれば、一般的にはその人の専門外で苦手な物事のはずです。転じて、現在の「下手なのに、その物事が好き」という意味になることになります。
下手の横好きの類義語
続いて、「下手の横好き」の類義語をご紹介します。
以上、7つの類義語を紹介しました。前半3つは同義語となります。
その他の類義語は対象となる人が異なったり、下手でない場合があったりと少々意味が異なります。
下手の横好きの反対語
逆に、「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
反対の意味のことわざは3つありますが、この中でも「好きこそものの上手なれ」はよく使われます。
「好きこそものの上手なれ」とは、「まず好きであることが物事を上達させることに重要である」という意味のことわざです。
このことわざの論理が正しければ、「下手の横好き」であっても最終的には物事が上手になるとも言えます。
下手の横好きの英語訳
「下手の横好き」は、英語だと次のような言い方をします。
①「always~but~be bad at it」
②「be not good at~but~like it」
①は直訳すると、「いつも~をするが、下手である」という意味です。②は「~は得意ではないが、~は好きだ」という意味です。
「下手」というのは英語だと「be bad at(苦手だ)」、「be not good at(得意でない)」などの熟語を使います。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
She always plays tennis but she is bad at it.(彼女はいつもテニスをしているが下手だ。)
I am not good at golf but I like it very much.(私はゴルフが下手だがとても好きです。)
その他、次のような言い方をすることも可能です。
Being crazy about something but being very bad at it.(そのことに夢中なのに、下手である。)
「be crazy about~」は「~に夢中である」という意味の熟語なので、「夢中なのに下手」⇒「下手の横好き」と同じ内容として使うことができます。
下手の横好きの使い方・例文
最後に、「下手の横好き」の使い方を実際の例文で確認しておきましょう。
- 将棋は下手の横好きですが、小学生の頃から10年以上続けています。
- 釣りが趣味といっても下手の横好きなので、大した魚は釣っていないですよ。
- 下手の横好きで料理を趣味としていますが、何か一品おかずを作りましょうか?
- 漫画を描いていると言っても下手の横好きなので、本業の漫画家には到底かないません。
- あいつの腕前はしょせん「下手の横好き」だ。プロの演奏家と比べたら大したことないよ。
- 彼の絵は下手の横好きで、何年も教室に通いながら未だに何を描いたものか分からない。
- 「下手の横好き」とおっしゃっていますが、部長のゴルフの腕前は社内でも有名ですよ。
「下手の横好き」は、自分に対して使う場合と他人に対して使う場合に分かれます。自分に対して使う場合は、すでに説明したように自分の趣味や特技を謙遜するような場合に使われます。
要するに、表向きでは下手だと言うことで、相手に自慢めいた印象を与えないようにする配慮ということです。多くの用例がこのパターンだと考えて問題ありません。
対して、自分ではなく他人に対して使う際は注意が必要です。この場合は、相手をバカにしたり見下したりするような時に使われます。
したがって、もしも他人に使う場合は相手を慎重に選んで使う必要があると言えます。もしも他人に対して使うような場合は、最後の例文のように相手に悪いイメージを与えないことが理想です。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「下手の横好き」=下手なくせに、その物事を好きで熱心なこと。
「語源・由来」=「横好き」は本来の枠からそれているものが好きなため。
「類義語」=「下手の物好き・下手の馬鹿好き・下手の悪好き」など。
「対義語」=「好きこそものの上手なれ・道は好む所によって安し・下手が却えって上手」
「英語訳」=「always~but~be bad at it」「be not good at~but~like it」
「下手の横好き」の「横」は本来の正しい枠から外れているという意味です。その横を好きなのは専門外なことなので、「下手でも熱心な様子を表す」と覚えておきましょう。