「顔」を使った慣用句は多くあります。その中でもビジネスでよく用いられるのが、「顔を立てる」という言い方です。
もしもあなたが社会人であれば、知っておいて損はない表現だと言えます。本記事では、そんな「顔を立てる」の意味や使い方、例文、類義語などを詳しく解説しました。
顔を立てるの意味・読み方
まず、この言葉の意味を辞書で引いてみます。
【顔を立てる(かおをたてる)】
⇒面目が保たれるようにする。体面が傷つかないようにする。「先輩の―・てる」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「顔を立てる」は「かおをたてる」と読みます。
意味は「面目が保たれるようにする・体面が傷つかないようにする」といったことです。「面目(めんぼく)」とは「立場や名誉」、「体面」とは「誇りや世間体」のことを意味します。
つまり、周囲からの立場を保ち、その人の誇りを傷つけないようにすることを「顔を立てる」と言うわけです。
例えば、あなたが会社で働いていて、上司のミスに気づいてしまったとしましょう。しかし、直接ミスを指摘してしまえば、上司の立場があったものではありません。
周囲に他の人間がいる環境であればなおさらでしょう。このような時に、「上司の顔を立てるために、黙っておこう」などと言うわけです。
その他、ビジネス以外の用途でも構いません。相手の立場を守るような言動、相手のプライドを傷つけないような言動であれば、それは顔を立てることだと言えます。
顔を立てるの語源・由来
「顔を立てる」の「顔」とは文字通りその人の顔を表しています。ただ、ここでの「顔」は何か具体的な形があるものを指しているわけではありません。
「顔」は、「体面」や「名誉」といった社会的な信用のことを意味しています。同じような慣用句としては「顔に泥を塗る」といったものがあります。
そして、「立てる」とは「人を望ましい立場や状況に置く・地位につかせる」という意味です。
私たちが普段から使うモノでも、しっかりと立たせることで、本来のモノとしての機能を保つことができます。それと同様に、「立てる」には「ふさわしい状況・立場にする」という意味があるのです。
以上の事をまとめますと、「顔を立てる」とは「その人の面目のためにふさわしい地位につかせる」というのが原義となります。転じて、現在の「面目を保つ・名誉を保つ」などの意味になるわけです。
顔を立てるの類義語
続いて、「顔を立てる」の「類義語・言い換え」をご紹介します。
全体的なイメージとしては、「相手の立場を尊重すること」と考えれば分かりやすいでしょう。その人の誇りや面目を保つ言葉が類義語となります。さらに、そこから派生して自分が脇役になるような言葉も類義語に含まれます。
顔を立てるの対義語
逆に、「顔を立てる」の対義語としては以下の言葉が挙げられます。
反対語の場合は相手に恥をかかせたりプライドを傷つけたりする行為、あるいはひどく扱ったりする行為を指します。多くは、否定的な意味として使われます。
顔を立てるの英語訳
「顔を立てる」は、英語だと次のような言い方があります。
①「to save one’s face(人の顔を立てる)」
②「to save one’s honor(人の名誉を保つ)」
「save」は「~を救う」、「face」は「面目」という意味なので、①を直訳すると「面目を救う」という意味になります。また、②の「honor」は「名誉」という意味です。同じく、「名誉を救うこと」から「名誉を保つ」と訳すことができます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
I was silent to save his face.(彼の顔を立てるために黙っていた。)
It is important to save her honor.(彼女の顔を立てることが重要である。)
なお、別の言い方だと「lose face(面目を失う)」を否定した表現を使うことも可能です。
I can’t let him lose his face.(彼の面目を失わせるわけにはいかない。)
I don’t want to make my boss lose face.(上司の顔に泥を塗りたくないです。)
顔を立てるの使い方・例文
最後に、「顔を立てる」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 今回のところは先輩の顔を立てて、大人しく従うことにしました。
- 後から考えれば、部長の顔を立てるべきだったと反省しています。
- 夫の顔を立てるために、仕事についての口出しはしないつもりです。
- 師匠の顔を立てるために、弟子である彼はわざと試合に負けたようだ。
- 私の意見は反対だったが、上司の顔を立てるためにここは引いておこう。
- 彼は今回の劇の主役なので、周りは脇役に回り顔を立てるようにしよう。
「顔を立てる」という慣用句は、目上の人を対象とすることが多いと言えます。例えば、会社であれば部長や課長などの上司、学校であれば先生や先輩といった人たちです。
これらの人たちに対して、「立場を守る・プライドを傷つけない」といった意味合いを込めて使われます。
基本的には、相手の立場を尊重する目的で使うので、良い意味として使われる慣用句だと考えて問題ありません。その他、最後の例文のように、自分は一歩引いて相手を主役として引き立てるような場面で使うことも可能です。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「顔を立てる」=面目が保たれるようにする・体面が傷つかないようにする。
「語源・由来」=相手の面目のためにふさわしい地位につかせることから。
「類義語」=「面子を立てる・花を持たせる・功を譲る・引き立て役になる・脇に回る」
「対義語」=「顔に泥を塗る・顔を潰す・足蹴にする・鼻を折る・名誉棄損」
「英語訳」=「to save one’s face」「to save one’s honor」
「顔を立てる」とは相手のことを第一に考え、面目や体面が保たれるように配慮することです。自分のことを第一に考えている人にはできる行為ではありません。意味を覚えたからには、ぜひ顔を立てられるような大人を目指したいものです。