「糧にする」という慣用句をご存知でしょうか?
ビジネスでよく見かける表現ですが、日常生活で使われることも少なくありません。私たちの普段の会話でもよく用いられています。
ただ、この言葉の具体的な使い方をイメージしにくいという人も多いようです。そこで本記事では、「糧にする」の意味や例文、語源、類語などを詳しく解説しました。
糧にするの意味・読み方
「糧にする」の読み方は「かてにする」です。後に詳しく解説しますが、「糧」とは「活力の元」を指すと考えて下さい。
「糧にする」とは「経験や出来事などを今後の人生の成長のために用いること」を意味します。
例えば、あなたが会社勤めをしていて仕事で何か大きなミスをしてしまったとします。通常であれば気分が落ち込むのが当然です。
しかし、後から考えれば自分の今後のためには必要な経験だったと強く感じることができました。そして、あのミスがあったからこそ、今の自分があると改めて感じることが何度もありました。
このような時に、「失敗を糧にすることができた」などのように言うわけです。
あるいは、仕事のミスでなくても構いません。人生で行き詰まり悩んでしまった時に、親しい友人から心に刺さるアドバイス、励ましの言葉などをもらったとします。言葉一つでその後の人生が変わるということも珍しくないです。
こういった場面でも、「励ましの言葉を糧にすることができた。」などのように言うことができます。
つまり、「糧にする」とは「何かしらの経験や体験を今後の自分の力に変える事」を表す言葉ということです。
糧にするの語源・由来
「糧にする」の「糧」は、「食糧(しょくりょう)」や「兵糧(ひょうりょう)」の「糧」と同じ漢字です。すなわち、「糧」という漢字は「食べ物全般のこと」を表しています。
食べ物は人間にとって全てのエネルギーの元であり、生きていく上で欠かすことができません。食べ物を食べることにより、私たちは肉体的にも精神的にも活力を得ることができます。
この事から、「糧」=「活力の元」「エネルギー源」「心の栄養」などの意味として使われるようになったということです。
つまり、「糧にする」を直訳すると、「(何かを)活力の元にする」と言うことができます。
この何かというのは、人によって対象が異なります。ある人にとっては失敗や逆境などの経験かもしれませんし、ある人にとっては言葉や知識などの教養かもしれません。
ただ、共通しているのは「その人に力を与えるもの」ということです。糧にするものがどんなにネガティブなものであろうと、その対象は人の人生を豊かにし、活力を与えてくれるものなのです。
糧にするの類義語
続いて、「糧にする」の「類義語・言い換え」をご紹介します。
- 肥やしにする
- 血肉とする
- 教訓にする
- 踏み台にする
- バネにする
- 拠り所にする
- 支えにする
- 足しとする
- 頼りとする
- 後ろ盾とする
- 後押しにする
- 追い風とする
「糧にする」の類義語はいくつかありますが、いずれも「物事や経験を成長するために用いる」という意味は共通しています。この中でも「教訓にする」や「足しとする」などは比較的意味も近く、使われる頻度も高いものです。
その他、ことわざだと「災い転じて福となす」も類義語だと言えます。「災い転じて福となす」とは「身にふりかかった災難をうまいこと活用し、役立たせること」という意味です。
ネガティブな体験を逆に次回へと役立たせることから、同じような意味を表していると言えます。なお、「糧にする」の「同義語(全く同じ意味の言葉)」はありません。
糧にするの対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
- 学習しない
- 反省しない
- 改めない
- 懲りない
- 繰り返す
- 改心しない
- 再犯する
「糧にする」の反対語は、遠回しで言うと「今までの経験を生かさない」といった意味を持ちます。したがって、「(ミスを)反省しない」「(同じ過ちを)繰り返す」といった否定的な意味を持つものとなります。
他には、ことわざと「二の舞を演じる(にのまいをえんじる)」 「同じ轍を踏む(おなじてつをふむ)」なども対義語です。前者は「同じ失敗を二度繰り返すこと」、後者は「前の失敗を知っていながら同じ過ちを繰り返すこと」を意味します。
糧にするの英語訳
「糧にする」は、英語だと次のような言い方があります。
「use~as food(~を糧として使う)」
「use~to grow(~を成長のために使う)」
「food」は「食べ物・食糧・エサ」などの訳がありますが、「(精神的な)糧」という意味もあります。
「as」は「~として」という意味の前置詞です。「use」と合わせることで、「糧として使う」⇒「糧にする」と訳すことができます。
また、後者の方は直訳すると「成長のために~を使う」です。「grow」には「育つ・成長する」などの意味があるため、このような訳となります。
例文だと、それぞれ次のような言い方です、
I will use this experience as a source of food.(私は今回の経験を糧にするつもりです。)
I want to use this failure to grow.(私は今回の失敗を糧にしたいです。)
糧にするの使い方・例文
最後に、「糧にする」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 本校で先生方から学んだことを将来の糧にするつもりです。
- 上司からは失敗を糧にするつもりで頑張ってほしいと言われた。
- 今まで培った経験を今後の糧にするかどうかはあなた次第である。
- 一流の起業家は自らの失敗を単なる失敗とするのではなく、成長の糧にする。
- 決勝で負けたことは確かに悔しかったが、逆に悔しさを糧にして今後は努力してもらいたい。
- 彼女にとっては辛い失恋だったと思うが、「自分の糧にする」と言っていたので安心した。
「糧にする」は、例文のように様々な使い方ができる慣用句です。主に過去の出来事や経験を対象とすることが基本ですが、その中でも特に失敗を対象とすることが多いです。
「糧にする」は、通常、成功した時の喜びや楽しみなどに対しては使いません。これは、人が成功した時よりも失敗した時の方が得られる経験値が多いからだと言えます。
「成功者は失敗談を語る」とも言うように、失敗はその後の人生において役に立つことが多いです。そういう意味では、「糧にする」という表現は、人生で過ちを犯してしまったときこそ使える慣用句だと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「糧にする」=経験や出来事などを今後の人生の成長のために用いること。
「語源・由来」=「糧」は「食べ物」を指し、食べ物を得ることは活力の元になるため。
「類義語」=「教訓にする・足しとする・肥やしとする・血肉とする・頼りとする」など。
「対義語」=「学習しない・反省しない・懲りない・改めない・繰り返す・」など。
「英語訳」=「use~as food」「use~to grow」
「糧にする」は、ビジネスで特によく使われる便利な表現です。あなたの語彙力を豊かにするためにも、今後の文章でぜひ使ってみてはいかがでしょうか?