「名詞」という言葉は、中学国語の文法を学ぶときに習うものです。
この「名詞」ですが、複数の種類があるため覚えにくいと感じる人も多いと思われます。「普通名詞」「固有名詞」「形式名詞」など、とにかく種類が多くて複雑です。
そこで本記事では、「名詞」の意味や使い方をなるべく簡単にわかりやすく解説しました。
名詞の意味を簡単に
まず、「名詞」とは簡単に言うと「物事の名称を表す単語」のことを表します。
例えば、世の中には名称が付いている言葉は多くあります。
「犬・生徒・りんご・富士山・車・学校・テニス・彼」
このように、名称がついていて、「〇〇」「××」のように特定の呼び名が付けられている言葉を「名詞」と呼ぶのです。
「名詞」は「名前の付いた品詞」と考えると分かりやすいです。
「品詞(ひんし)」とは全部で10種類あり、「単語をそれぞれの種類に分けたもの」だと考えて下さい。
以下の図は、すべての品詞を表したものです。
一番右下にあるのが「名詞」です。
「名詞」は「自立語で活用がない品詞」だと言えます。
「自立語(じりつご)」とは「それだけで意味が分かる単語」を表し、「活用(かつよう)」とは「言葉の語尾が変化すること」を表します。
つまり、「それだけで意味が分かり、後ろの形も変わらない品詞」が「名詞」ということです。
「名詞」のその他の特徴としては、次の2つが挙げられます。
- 助詞「が」や「は」を伴って主語になる。
- 単独で主語や独立語になることができる。
名詞の種類とは
「名詞」にはいくつかの種類があります。ここからはぞれぞれの種類について見ていきましょう。
普通名詞
「普通名詞」とは「物事の一般的な名称を表す単語」のことです。
【例】⇒「犬・川・りんご・机・スポーツ・本・歌手・パソコン」など。
例えば、「犬」を見て「これは猫だ」なんて言う人はいないですよね。
「犬」は「犬」であり他の動物ではありません。同じ犬であればどんな犬種だろうと私たちはまとめて「犬」と呼びます。
また、「川」という言葉も「利根川」「信濃川」「ナイル川」など数多くの名前がありますが、それらはすべて「川」と呼びます。
さらに、「りんご」に関しても「赤いりんご」「緑のりんご」など多くの品種がありますが、それらを一様に「りんご」と呼びます。
このように、同じ種類に属するものを広く一般に差す言葉を「普通名詞」と言うのです。
「普通名詞」は、文字通り「普通の一般的な名前が付いた品詞」と考えれば分かりやすいでしょう。
固有名詞
「固有名詞」とは「他と区別するためにそれのみに与えられた単語」のことを表します。
「固有名詞」は、人の名前・地名・国名・書名・建造物・年号などただ1つしかないものを指します。
【例】⇒「織田信長・仙台市・フランス・桃太郎・東京タワー・令和」など。
いずれの言葉も他の言葉と区別するために用いられています。
例えば、一言で「人」と言っても、一体誰のことを指しているのかよく分かりません。
「歴史上の人物」などのヒントを出されても、徳川家康や豊臣秀吉と間違えてしまうかもしれません。
そこで、「織田信長」と言うことで、他とは区別されたはっきりとした人物象が浮かび上がります。
「仙台市」に関しても同様です。日本には数えきれないほど多くの「市」があります。
その中でも「仙台市」という固有名詞を使うことで、「横浜市」や「千葉市」などの他の市と区別することができます。
同じ種類に属する言葉の中から、それだけの固有の意味を表すような名詞であればそれは「固有名詞」と呼べるのです。
「固有」とは「それ以外にはない・他に同じものはない」という意味です。
数詞
「数詞(すうし)」とは「物の数量や順序などを表す単語」のことです。
「数詞」は、「①基数詞(きすうし)」と「②序数詞(じょすうし)」の2つに分かれます。
それぞれの使い方は以下の通りです。
①「基数詞の例」=「一つ・二個・三枚・四本・五匹・六m」など。
②「序数詞の例」=「第一番・第二番・三つ目・四番目・五等」など。
「基数詞」は「物の数量」を表し、「序数詞」の方は「物事の順序」を表しています。
後者の方は「序数詞」ではなく「順序数詞」などと呼ぶこともあります。
いずれにせよ、物の数量や順序を表す名詞をまとめて「数詞」と呼ぶということです。
その他には、「何回・何本・いくつ・何番目」など、不特定多数の順序や順番を指し示すような言葉も「数詞」に含まれます。
なお、「数詞」の後ろの部分である「匹」や「個」のことを「助数詞(じょすうし)」と言います。
「助数詞」とは接尾語(せつびご)の一種で、「接尾語」=「語の下について一語を形成するもの」です。
「助数詞」は文字通り「数を助ける」と書くので、「匹」「羽」「個」「枚」など数を数える際に使われる語となります。
代名詞
「代名詞」とは「直接表すのではなく、代わりに表す単語」のことです。
【例】⇒「私・あなた・彼・彼女・これ・それ・あれ」など。
上記の語は、いずれも人や物事を直接的には表していません。
例えば、「私」であれば「太郎」のような名前がありますし、彼女であっても「弓子」のような名前が必ずあります。
「これ」「それ」なども、元となる物や場所、方向などが存在するでしょう。
人や物事などを間接的に表す語であれば、それらはすべて「代名詞」だと言えます。
「代名詞」は「名詞の代わりになる品詞」と考えると分かりやすいです。
英語だと、「I(私)」「he(彼)」「she(彼女)」「they(彼ら)」「This(これ)」「That(あれ)」などが代名詞となります。
形式名詞
「形式名詞」とは「それ自身では実質的な意味を持たず、常に連体修飾語を受けて使われる単語」のことです。
「連体修飾語(れんたいしゅうしょくご)」とは、簡単に言うと「名詞を詳しく説明する語」だと考えて下さい。
「形式名詞」の主な例としては、「こと」「もの」「とき」などが挙げられます。
- 文章を書くことが苦手だ。
- 私たちの行動は、彼の判断によるものだ。
- 映画館に行くときは、財布を持っていく。
上記の例文はいずれも「名詞を詳しく説明する語」+「名詞」によって成り立っています。
例えば、1は「文章を書く」+「こと」とあります。
仮に、「こと」だけだと、どんな意味内容を伝えているかが理解できません。
また、2も「判断による」+「もの」とあり、3も「行く」+「とき」とあります。
このように、それ単体では実質的な意味を持たないけども、文全体としては形を整えるような名詞を「形式名詞」と言うのです。
通常の「名詞」は、「川」「家」などのように意味が通じるものが基本です。
しかし、「形式名詞」の場合は例外として、単体では意味が通じないという特徴があります。
「形式名詞」は「形だけの名詞」と書くことからも分かるように、それ自体では意味を持たないのです。
その他には、次のような語も「形式名詞」に含まれます。
- 犬を助けるために、救出に向かった。
- やらされているうちはだめだ。
- 怒られてうれしいわけがないだろう。
- お忙しいところ、大変申し訳ありません。
- おそらくですが、合格しているはずです。
- 思いついたままに、自分の言葉を発する。
- あいつより彼のほうがいいと思います。
- 合格するつもりで努力してください。
- 文句を言っているあいだは無理だろう。
「形式名詞」は、通常「ひらがな」で表記されるのが基本です。
転成名詞
「転成名詞」とは「他の品詞が名詞に変化した単語」のことです。
【例】
①お手本となる走りをする陸上選手だ。
②美しさを感じるすばらしい衣装である。
①の「走り」は、「走る」という動詞が変化したものです。元々、「走り」という単語があったわけではありません。
また、②の「美しさ」も「美しい」という形容詞が変化した語です。同じく「美しさ」という単語が最初からあったわけではありません。
このように、元々は別の品詞だったものが、後から名詞に変わった語を「転成名詞」と呼ぶのです。
「転成」とは「転んで成り立つ」、すなわち「変化して成立する」という意味で考えれば分かりやすいでしょう。
「転成名詞」は先ほどの例文①と②のように、「動詞の連用形が変わる場合」と「形容詞の連用形が変わる場合」に分かれます。
【動詞の連用形が名詞になるパターン】
「悩む⇒悩み」「守る⇒守り」「輝く⇒輝き」「行う⇒行い」「喜ぶ⇒喜び」「頼む⇒頼み」など。
【形容詞の連用形が名詞になるパターン】
「近い⇒近く」「遠い⇒遠く」「多い⇒多く」「早い⇒早く」「古い⇒古く」「重い⇒重み」など。
その他、「光」など動詞の連用形である「光り」から転成したものなどもあります。
この場合、「光」は名詞になると「光り」のような送り仮名はつけません。
「帯(帯びます)」「煙(煙ります)」「組(組みます)」「舞(舞います)」なども同様に名詞では送り仮名をつけません。
名詞を問う問題
では、今までの内容を理解できたか確認してみましょう。以下に、練習問題を用意しました。
次の文中から名詞をすべて抜き出し、その種類を(ア)~(カ)の記号で答えなさい。
①富士山は日本で最も高い山である。
②自宅で犬を3匹飼っています。
③大阪へ行くときは、彼は車で行く。
(ア)普通名詞(イ)固有名詞(ウ)数詞(エ)代名詞(オ)形式名詞(カ)転成名詞
①「富士山」⇒(イ)「日本」⇒(イ)「山」⇒(ア)
②「自宅」⇒(ア)「犬」⇒(ア)「3匹」⇒(ウ)
③「大阪」⇒(イ)「とき」⇒(オ)「彼」⇒(エ)「車」⇒(ア)
「山」や「自宅」「犬」「車」など、一般的な物事の名称を表す言葉は「普通名詞」です。
対して、「富士山」や「日本」「大阪」のような世の中に一つしかないものは「固有名詞」となります。
「3匹」など前に数字が来るものは「数詞」、「彼」など間接的な呼び名は「代名詞」です。
「とき」は実質的な意味を持たないので、「形式名詞」となります。
次の「名詞」を(A)普通名詞(B)固有名詞(C)数詞(D)代名詞のいずれかに分けなさい。
①海 ②信濃川 ③君 ④自由 ⑤十人 ⑥ナポレオン ⑦昨日 ⑧土地 ⑨どこ ⑩百円 ⑪京都 ⑫あれ ⑬1m ⑭福沢諭吉 ⑮何度
(A)普通名詞=「①・④・⑦・⑧」
(B)固有名詞=「②・⑥・⑪・⑭」
(C)数詞 =「⑤・⑩・⑬・⑮」
(D)代名詞 =「③・⑨・⑫」
⑮の「何度」は「代名詞」です。「何回・何本・いくつ・何番目」など、不特定多数の順序や順番を指し示す言葉は「数詞」に含まれます。
次の文中から「形式名詞」をすべて抜き出して答えなさい。
① 彼は話をすることがうまい。
② 聞くところによると、彼は出世したらしい。
③ 君もずいぶんと偉くなったものだ。
④ 料理は人のために作るものである。
⑤ 思いついたままに、彼は動くはずです。
①「こと」②「ところ」③「もの」④「ため」「もの」⑤「まま」「はず」
「形式名詞」の特徴は、それ自体では実質的な意味を持たず、形式的・補助的に用いられる点にあります。また、直前にそれを修飾(詳しく説明)する語が付くことも特徴の一つです。
①は「話をする」-「こと」。②は「聞く」-「こと」。③は「偉くなった」-「もの」。④は「人の」-「ため」「作る」-「もの」。⑤は「思いついた」-「まま」「動く」-「はず」がセットです。
次の文中から「転成名詞」を抜き出し、元の品詞も答えなさい。
①自分の考えをはっきりさせなさい。
②古くは江戸時代まで遡る品物である。
③私の家の近くには大きな犬が2匹いる。
④妹は思いをこめて、父に手紙を書いた。
⑤寺への行きはよいが、帰りが怖い。
①考え(動詞)②古く(形容詞)③近く(形容詞)④思い(動詞)⑤行き(動詞)帰り(動詞)
①は「考える」という動詞、②は「古い」という形容詞、③は「近い」という形容詞、④は「思う」という動詞、⑤は「帰る」という動詞が元の品詞となります。
次の文中から名詞をすべて抜き出し、その種類も答えなさい。
①人間は誰でも頑張ることが重要だ。
②三人の子供は、初めて東京にたどり着いた。
③おそらく彼は、2番目のほうが緊張しているはずです。
④アメリカは遠くの国だが、行くつもりです。
⑤彼女の一番の喜びは、人と話すことです。
①「人間」⇒「普通名詞」「誰」⇒「代名詞」「こと」⇒「形式名詞」
②「三人」⇒「数詞」「子供」⇒「普通名詞」「東京」⇒「固有名詞」
③「彼」⇒「代名詞」「2番目」⇒「数詞」「ほう」⇒「形式名詞」「はず」⇒「形式名詞」
④「アメリカ」⇒「固有名詞」「遠く」⇒「転成名詞」「国」⇒「普通名詞」「つもり」⇒「形式名詞」
⑤「彼女」⇒「代名詞」「一番」⇒「数詞」「喜び」⇒「転成名詞」「人」⇒「普通名詞」「こと」⇒「形式名詞」
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「名詞」=主に人や物などの名称を表した単語。(自立語で活用しない)
「普通名詞」=物事の一般的な名称を表す単語。
「固有名詞」=他と区別するためにそれのみに与えられた単語。
「数詞」=物の数量や順序などを表す単語。
「代名詞」=直接表すのではなく、代わりに表す単語。
「形式名詞」=実質的な意味を持たず、連体修飾語を受けて使われる単語。
「転成名詞」=他の品詞が名詞に変化した単語。
「名詞」の種類は全部で6種類です。この中でも「普通名詞」と「固有名詞」の違いはよく出題されます。
また、「形式名詞」や「転成名詞」を使った例文は多くの人が間違えやすい部分でもあります。ぜひ今回の内容を参考にし、今後の学習に生かしてみて下さい。