「一義的」という言葉をご存知でしょうか?主に「一義的な解釈」「一義的な責任」などのように用います。
ただ、似たような言葉で「一次的」や「第一義的」などもあるため違いが分かりにくいと感じる人も多いです。
そこで今回は、「一義的」の意味や使い方、類語・反対語などをなるべく簡単に分かりやすく解説しました。
一義的の意味
まず、「一義的」の意味を調べると次のように書かれています。
【一義的(いちぎてき)】
①それ以外に意味や解釈が考えられないさま。
②いちばん大切な意味をもっているさま。根本的。第一義的。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「一義的」には、2つ意味があります。
1つ目は、「それ以外に意味や解釈が考えられないさま」という意味です。
言い換えれば、「意味が一つに確定している」ということです。この場合は、以下のように使います。
議論の結果、一義的な結論を導いた。
議論というのは色々な意見が飛び交いますので、すぐに結論が出るということはなかなかありません。
しかし、最終的にはまとまった結論が出ることがほとんどです。
そんな時に「一つに確定した結論を出す」という意味で「一義的な結論を出せた」などと言うわけです。
2つ目は、「一番大切な意味をもっているさま」という意味です。一言で、「根本的・第一義的」と言いかえても構いません。
この場合は、以下のように使います。
「教育の一義的な目的は人格形成にある」
つまり、「教育をする一番大切な目的」ということです。
「一義的」にはこのように2つの意味があると考えて下さい。
両方とも似たようなイメージですが、実際には意味は異なります。どちらで使われているかは、文脈によって判断する必要があると言えます。
一義的の類義語
「一義的」は、次のような類義語で言い換えることが可能です。
- 一意的
- 唯一の
- 一種類の
- 明確な
- 明白な
- 誤解の余地がない
- 主な
- 基本的
- 基礎的
- 本質的
- 根源的
- 大元から
- 第一義的
「一義的」は意味が2つあるため、どちらを使うかによって類義語も変わってきます。
赤字の箇所は、「意味が一つに確定しているさま」という意味の類義語です。一方で、青字の箇所は「根本的・第一義的」という意味の類義語です。
なお、最初の「一意的」とは「意味や値などが一つに確定しているさま」を表した言葉です。「一意的な解」のように使い、数字や具体的な値に対しても使う点が「一義的」と異なります。
一義的と第一義的の違い
「一義的」とよく似た言葉で、「第一義的」があります。
【第一義的(だいいちぎてき)】
①最も大切な根本的な意義、または価値。
②仏語。最高の道理。究極の真理。勝義。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「第一義的」とは「根本的である」という意味の言葉です。主に「第一義的な責任がある」などのように用います。
「一義的」と「第一義的」はどちらも「根本的であるさま」を表す際に使うことができます。したがって、この意味で使う際はどちらを使っても特に問題ありません。
ただ、「第一義的」は「一義的」のように「一つに確定した」という意味は含んでいません。この点が両者の違いだと言えます。
一義的と一次的の違い
「一義的」と同じ読み方の語で「一次的」があります。
【一次(いちじ)】
①第1回。1番目。最初。「―募集」「第―越冬隊」
②いちばん大切であること。根本的な事柄。「―史料」
③数学で、式・関数などの未知数の最高次数が1であること。「―方程式」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「一次的」とは「第一回目の・一番目の・最初の」「一番大切な・根本的な」などの意味です。
主に、「一次的調査を行う」「一次的データを参照する」などのように用います。
「一義的」と「一次的」はどちらも「根本的な」という意味を含んでいます。したがって、この意味で使う際は同じく違いを意識する必要はありません。
両者の違いとしては、「一次的」には「第一回目の・一番目の・最初の」などの意味があり、「一義的」には「一つに確定した」という意味がある点だと言えます。
一義的の対義語
「一義的」の「対義語」は意味によって2つに分かれます。
1つ目は、「多義的」です。「多義的」とは「一つの言葉が多くの意味をもっているさま」のことです。
これは「意味が一つに確定しているさま」という意味の対義語となります。
例えば、「先生」という単語があります。
一般的に「先生」=「学校の教師」という意味のみだと思われがちですが、「先生」には「指導者」「医師」「政治家」「先に生まれたもの」など多くの意味があります。
このように、一つの単語に対して複数の意味を持っていることを「多義的」と言うわけです。
そして2つ目は、「二義的(にぎてき)」です。
「二義的」とは「本質的・根本的ではない様子」のことを表します。
言いかえれば、「それほど重要ではない様子」という意味です。こちらは「根本的である」という意味の対義語となります。
使い方としては、「二義的な問題なため、後回しにされた」などのように使います。
一義的の英語訳
「一義的」は、英語だと次のように言います。
①「unambiguous(明白な・明確な)」
②「principal(主な・主要な)」
①は「はっきりしている様子」を表す単語なため、「他に解釈が考えられない様子」という意味で使うことができます。
また、②は「主要な」という訳なので、「大切な・重要な」という意味で使うことが可能です。
例文だと、それぞれ次のように言います。
He found unambiguous evidence.(彼は明白な証拠を見つけた。)
一義的の使い方・例文
最後に、「一義的」の使い方を対義語と合わせて例文で紹介しておきます。
【一義的の使い方】
- 会議を長時間する以上、一義的な結論を出さなければならない。
- 法律というのは、必ずしも一義的な解釈があるわけではない。
- 質問に対して、回答が一義的に決まるようにしてください。
- 子育ての失敗は、親に一義的な責任があると言えるだろう。
- 原子力発電所の事故対応は、一義的に事業者の責任にある。
【多義的の使い方】
- 数学や法律の用語は、多義的でない方が分かりやすい。
- 言葉の意味を多義的に考えると、誤解が生じる可能性がある。
- 「芸術」は多義的な概念であり、一義的に定義することは困難だ。
【二義的の使い方】
- 彼らにとっては、給料は二義的な条件だった。
- そういう二義的な問題は後回しにした方が効率が良い。
- 結局人間は自分が一番大事で、他人は二義的なものと考えている。
補足すると、数学や法律の言葉は、「一義的(意味が一つ)」であることが望ましいと言われています。なぜなら、ルールを記述するからです。
ルールが多義的であっては、議論や推論は成立しなくなってしまいます。逆に、芸術作品や小説、日常用語などはさまざまな解釈を許すので、多義的でも問題ないことになります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「一義的」=①意味が一つに確定しているさま。②根本的・第一義的。
「類義語」=①「一意的・唯一の・明白な」②「主な・基本的・本質的」など。
「対義語」=①「多義的」②「二義的」
「英語訳」=「unambiguous(明白な・明確な)」「principal(主な・主要な)」
「一義的」という言葉は意味が2つあります。どちらで使われているかは、文脈によって判断するようにしましょう。